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仮想通貨をめぐる法律は抜け穴だらけ?ビットコインなどの仮想通貨に関する法整備について解説!

仮想通貨・デジタル通貨に関する法律

仮想通貨法はもうすぐ施行されるけれども…

2017年は日本における「仮想通貨元年」とも言われ、もうすぐ仮想通貨法(資金決済法の改正)が施行されます。

仮想通貨法の内閣府令及びガイドラインを弁護士が解説!仮想通貨交換業への登録のためにすることとは?

ビットコインをはじめとする仮想通貨に関する取引量も増えてきており、仮想通貨の存在も認識されてきました。

しかし!まだまだ、仮想通貨に関して、特に法整備は、全然追いついていない状況です。先日も、以下のような記事が出されていました。

アングル:広がる仮想通貨に法的な穴、世界的な対応の遅れも

ビットコインなどの仮想通貨という新しい技術に対して、法律が全く追いついていない状況ですが、現状、仮想通貨をめぐる法制度はどうなっているのでしょうか。

ビットコインなどの仮想通貨については、差押えができない

上記参考記事にも記載されていますが、個人が「保有」するビットコインなどに関して差押えができないという問題があります。

例えば、お金を貸した人が、借りてから、お金が返ってこない場合に、貸した人は、借りた人に対して、裁判をし、判決をもらい、その後に借りた人の財産を差し押さえするということが必要になります。

しかし、現行法上、この差押えの対象になるのは「その人が所有している物や権利」です。
そして、所有権の対象は「有体物」に限定をされています。

そうすると、そもそもビットコインなどの仮想通貨は「モノ」なのか、所有権の対象となるのかといったことが問題になります。
この点に関しては、東京地裁平成27年8月5日の判決で、ビットコインについては「その仕組みや技術は専らインターネット上のネットワークを利用したものであること」を理由に、ビットコインは、「有体性」がなく、所有権の対象外とされています。

仮想通貨法でも、「仮想通貨」の定義については、「財産的価値」とされているので、「モノ」ではないことが明確になっています。

金融庁のガイドラインにみる仮想通貨の範囲・仮想通貨交換業者の該当性のポイント

ビットコインなどの仮想通貨を用いた取引は、保護される?

ビットコインなどの仮想通貨を用いた取引(ビットコインと法定通貨との両替、ビットコインによる貸し付け、ビットコインによる商品・サービスの購入など)については、現在の法律上の契約で、法的に拘束力がある形で行うことができます

よって契約の相手方が、商品・サービスによる対価として、仮想通貨を交付しない場合には、契約違反により、相手方に損害賠償請求をすることができます。

ただ「ビットコインを送付せよ」という請求をして、判決で認められても、先ほどの例のように、差し押さえができないという状態になりますので、法定通貨による損害賠償請求(例:100万円を支払え)をすることが考えられます。

もっとも、ビットコインの価値は変動するため、いつのレートで法定通貨に換算するのか(契約時なのか、裁判時なのか)は、検討する必要があります。

仮想通貨を預けていた先が破産したら、自分の仮想通貨はどうなるの?

仮想通貨の取引所では、法定通貨と仮想通貨の売買をするために、利用者のために仮想通貨のウォレット(財布)を用意しています。この場合、利用者は取引所に対して、仮想通貨を預けていることになります。

では、このような取引所が倒産(破産)した場合には、預けていた仮想通貨はどうなるのでしょうか?

通常、お金を貸していた(預けていた)相手会社が破産してしまった場合には、貸主は自らの債権を破産債権として届け出することにより、会社が余っている資産から債権額の割合に応じて配当を受け取ることになります。

ただ、倒産する会社なので、めぼしい資産はなく、債務超過の状態となっているケースがほとんどです。よって、通常は、債権者は債権額全額を回収することは期待できません。

この点、仮想通貨については、上記の通り「モノ」ではなく、所有権の対象にはなりません。

そうすると、仮想通貨を預けている人は、取引所に対して「預けている仮想通貨を返還してもらう権利」を有しているに過ぎないことになります。

よって、通常の債権者と同じように、保有しているビットコインを法定通貨に金銭評価して、余っている財産があれば、配当を受ける(実際は、上記のように、全額の返還は期待できない)ことになります。

従来の法律の枠組みから考えると無理があるけど…

ビットコインをはじめとする仮想通貨は、従来の法律が想定していない新しい概念です。

「早急な法整備が必要ですね」というのは、その通りなのですが、従来のお金のあり方(中央政府が管理する)を根本から変えるものなので、法整備と言っても、すぐにはできないだろうと思います。

それまでは、従来の法律の枠内で、何とか解釈して運用していくしかありません。

法律家の腕の見せ所だなぁと感じている今日この頃です。