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インターネット上の誹謗中傷削除の代行をしていた事業者に対し、削除を依頼した方が代金返還を求めていた裁判で、東京地裁は、こうした「削除代行」は弁護士以外に認められない業務として「非弁行為」に当たるとして、代金約50万円の返還を命じました。
ネット情報の削除代行、非弁行為に該当 東京地裁が判断 日本経済新聞
この裁判のポイントは、どこにあるのでしょうか?
弁護士法第72条では、次のとおりに明記されています。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
つまり、弁護士以外の者が、報酬を得て、法律事件を扱ってはいけないのです。このような行為を「非弁行為」といいます。
これに違反すると、二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金という刑事罰もあります。
また、民事上は、非弁行為をした者との契約は、無効になり、支払った代金を返還請求をすることができます。
現在、インターネット上では、弁護士ではない多くの事業者が、「インターネット誹謗中傷削除」を行っています。
従来から、このような事業者は「弁護士法違反ではないか」と言われていましたが、この点について裁判例がなく、曖昧なまま、今に至っていました。
今回の裁判では「インターネット誹謗中傷削除」行為については「法律事件」に当たり、これは弁護士のみが取り扱うことができ、業者の行為は、弁護士法違反であるという認定がされました。
よって、報酬を受けてインターネット上の記事を削除する行為は、弁護士法違反になるのです。
今回の判決で、裁判所は、すでに削除代行費用を支払っている場合でも、報酬全額の返金を認めています。
今後は、業者に対して、削除代行を依頼した人からの返金請求が増えてくる可能性があります。
また、最近では削除代行業者は「削除」という言葉を使わずに「コンサルティング」などの表現を使い「削除」対策をしているところもありますが、実際の業務として「削除代行」をしていれば弁護士法違反になります。
削除代行業者の中には、弁護士と提携していることを全面に出している業者もあります。
また、今回の判決を受けて、業者の中には弁護士と提携してサービスを行おうとする業者も出てくるかもしれません。
しかし、弁護士以外の者が、弁護士と提携して「法律事件」を扱うことは非弁提携とされており、弁護士法27条で禁止されています。
今回、被告となっていた業者も、一部の業務を弁護士と提携して行っていたということです。
「弁護士と提携しているから安心」というわけではないので、注意が必要です。