任天堂は、公道カートのレンタル事業を手掛ける「マリカー社」とその代表取締役に対して、著作権侵害があったとして、1000万円の損害賠償と行為の差し止めを求める訴訟を、東京地裁に提訴したと発表しました。
任天堂、公道「マリオカート」に堪忍袋切れ ついに1社を損害賠償で訴え
任天堂側は、次の点に対して、不正競争行為と著作権侵害に当たると主張しています。
マリオやルイージの格好で公道でカートを運転する姿は、日本人だけでなく外国人にも人気がありました。そんな中でのこの事件のポイントはどこにあるのでしょうか?
このブログでも、著作権については解説してきましたが、直近で著作権が話題になったのが、DeNA医療情報サイト「 ウェルク(Welq)」問題です。
IT弁護士が解説!DeNA医療情報サイト「ウェルク(Welq)」は法律的には、どこがいけなかったのか?
DeNA医療情報サイト「 ウェルク(Welq)」では、多数のコンテンツの流用が発覚しました。
そもそも、著作権とは、複数の権利の集合体です。著作権といっても様々な権利があり、この権利を著作権者は独占します。
著作者の権利の内容について 文化庁
今回のポイントの一つは、マリオなどのキャラクター衣装を貸し出して宣伝・営業に利用していることが、著作権侵害になるのかという点です。
つまり、著作権のうち、どの権利を侵害しているのかが、裁判でのポイントです。
これは、どの事実を問題にするかよっても、異なってきますが、考えられるものとしては、著作権のうちの「複製権」(コピーを広める権利)、「公衆送信権」(インターネットなどで、多くの人に広める)、「上演権」(著作物を公に上演(見せる)権利)または「貸与権」(映画の著作物を除く著作物をその複製物の貸与により公衆に提供する権利)が考えらえれます。
ただ、この貸し出している衣装が、本当にマリオなどの著作権を侵害しているのか(類似性はあるのかなど)は、問題になります。
今回、任天堂が問題としているもう一つは、任天堂のゲーム「マリオカート」の略称である「マリカー」を社名にしている点です。
まず、問題になるのが、商標権の侵害にならないのかという点です。
任天堂が「マリカー」を商標登録していれば、他の会社は「マリカー」という言葉を使用することができなくなります(商標には「区分」というものがありますが、今回は説明を割愛)。
「マリカー」で商標登録されているか調べてみると任天堂は、商標登録していない!商標登録しているのは、今回訴えられた「マリカー社」がしています。
「マリカー」検索結果一覧
よって、任天堂は、商標権侵害を主張することはできません。
しかし、不正競争防止法という法律があり、一般消費者に広く周知された商品名を、他者が勝手に使うことはNGとされてます(著名表示冒用行為)。
勝手に使う行為した者に対しては、損害賠償請求やその言葉の使用差止をすることができます。
今回「マリカー」という言葉は「マリオカート」を略語として、広く浸透していますので、不正競争防止法違反が認められる可能性はあるかと思います。
この裁判は、これから始まりますが、著作権などを侵害した場合でも、すぐに損害賠償などの裁判に発展するわけではありません。
著作権は侵害しているけれども、紛争にならないケースもあります。
例えば、著作権者にも宣伝になっているケース。
書評ブログなどで、本の表紙の画像を使うケースなどでは、著作権侵害の可能性がありますが、本の宣伝にもなっているし…ということで、黙認されているケースです。
その中で、紛争になるケースは、自分のコンテンツを使って、他人が、結構儲けている場合です。
著作権者からすると、何を自分のコンテンツ使って、金儲けしているんだよ!という気持ちになるのでしょう。
また、紛争になったとしても、通常は、最初から訴訟ではなく、「あなたのコンテンツは、著作権侵害しているので、使用をやめてください」という通知文が、著作権者から相手方に届くケースが大半です。
そこで、相手方が、本当に著作権侵害をしていたかを調査し、著作権侵害をしていた場合には、使用をやめれば、裁判にまでならないケースも多いです。
今回、任天堂が訴訟に踏み切ったのも、任天堂は「これまでも警告していたが、誠意がみられなかったので訴訟に踏み切った」(広報担当者)とコメントしています。
著作権侵害などをした場合、された場合に、どのように対処するかは、初期対応がとても大事になります。
特に、著作権侵害については、本当に権利を侵害しているか、分かりづらい部分があります。きちんと事実関係を調査し、適切な対応を取るようにしましょう。