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システム運用・保守契約において注意すべき法律を弁護士が解説【2020年1月加筆】

システム開発のための法律

システム保守契約の問題点と対策

システム開発が終了し、その次には、システムの運用・保守の段階に入ります。

そのシステムの運用・保守契約を締結する際には、どのような点に注意すべきなのでしょうか。
ベンダ側が負う責任にについては、以下の記事を参照してください。

システム運用・保守契約においてベンダ側が負う責任とは何か【2023年3月加筆】

保守業務の範囲を明確に

保守契約を結ぶ際に、よくあるのが、以下の項目のみが規定されている契約書しか交わされていない場合です。

  • ベンダが保守・運用を行う
  • 1カ月あたりの保守費用

ここで、トラブルになるのが、保守業務の範囲がどこまでなのかということです。

ユーザ側としては、トラブルになったときには、ベンダがなんでも保守してくれると思っていたけど、実際は、やってくれずに、トラブルになるというケースが多いです。

ベンダ側としても、「この料金で、そこまでの保守はできない」という本音もあるでしょう。

よって、まずは、以下のなどを、しっかり規定した方がよいです。

  1. 保守業務の対象となるシステム
  2. 保守業務は、どこまでか
  3. 対応可能時間

保守業務の対象となるシステム

以下の項目などをきちっと、整理しておきましょう。

  • ソフトウェアのみorハードウェアも対象
  • 複数のベンダが関与して開発されたシステムについて、他者が開発したシステムについて、保守業務をするのか

保守業務は、どこまでか

保守業務がどこまでかを明確にするのも非常に重要です。

  • 対象システムの稼働状況の監視
  • システムのバックアップ
  • ユーザからの問い合わせ対応
  • トラブル発生時の応急対応
  • ソフトウェアのアップデート版を提供

などの保守業務のうち、どこまでやってくれるのかを、ユーザ側としても、確認しておく必要があります。

さらに、システムの機能改善や機能追加も対象となるのか?なども確認しておく必要があります。

契約書のほかに、SLAを作成する場合も

運用・保守業務の条件について,詳細にわたる内容がある場合には,契約書本文のほかに、SLA(Service Level Agreement)別途作成する場合があります。

その際には、上記のことを詳細に定める必要があります。

保守契約・保守業務でトラブルになった場合には

保守業務で、トラブルになった場合には、まず、保守業務について、規定された資料がないかを確認しましょう。

契約書やSLAがない場合でも、議事録やメールなどで、保守業務について、やり取りしているものがあれば、そちらも証拠になります。

また、ベンダ側が、保守業務を怠ったとして、損害を被ったとして、損害賠償を請求するには、どのような損害が生じたのかを、立証できるかが問題になります。

  1. ベンダに支払った保守費用
  2. 人件費
  3. 外注費
  4. 回線費用
  5. 出張旅費
  6. 社員研修費用

などが、損害項目として考えられます。

システム開発・アプリ開発トラブルでの損害賠償はどの範囲までできる?

保守契約は、トラブルの宝庫、だから対策が必要

運用・保守契約は,開発業務の終わりの多忙な時期に締結されることが多く,慎重な検討がなされないまま締結されることも多いです。

しかし,運用・保守契約は,5年,10年以上続く長期継続的契約となることも多く,支払総額も膨大になることが多いです。

運用・保守契約はシステムの稼働中の対応に関するもので、トラブルになると、業務に及ぼす影響が大きくなります。

トラブルになる事前または事後の対策をしっかりとっておきましょう。