システム開発・アプリ開発というのは、当然のことながら、ベンダ側とユーザ側の契約によって、その内容が決まります。
それでは、システム開発やアプリ開発の契約というのは、いつ成立するのでしょうか?
民法では、契約当事者による「申込み」と「承諾」によって契約が成立します。
つまり「契約書」などの書面がなくても、契約は成立します。
特に、システム開発の現場では、納期に間に合せるため、契約書による合意が確認されないまま開発作業に着手することは、日常茶飯事です。
では、具体的にいつの時点で、システム開発などの契約が成立したといえるのでしょうか?
裁判例では、①開発の対象となるシステム ②報酬額について合意ができた時点としています。
具体的には、ユーザが、ベンダから提示された仕様書及び見積書などを承認して発注した時点としています。
この点については、ベンダから提案書が出され、ユーザーからは当該ベンダを採用する旨の通知が提出されていた事案で、ベンダ側の提案書の内容が、ユーザー側の意向を汲んだ具体的ではなかったとして、契約の成立否定した裁判例(名古屋地裁平成16年1月28日判決)
また、秘密保持契約と開発基本契約は結んでいたものの、具体的な金額や作業範囲が記載された個別契約書や注文書のやり取りがなかった事案で、裁判所は、契約の成立を否定しています(東京地裁平成20年7月29日判決)。
以上の例からも分かるように、裁判所は、契約書が交わされていない場合には、契約の成立には非常に消極的です。
システム開発をこれから行おうとする人は、契約書の作成は必須といってもよいくらいです。
契約書の作成をしないまま、トラブルになった場合には、①開発の対象となるシステム ②報酬額について合意ができたといえるようなやり取りがあったかを、検討する必要があります。
契約書は締結されておらず、契約の成立が認められないような場合に、ベンダとしては、ユーザに対して、金銭請求を一切することはできないのでしょうか?
ここで使えるのが「契約締結上の過失の理論」です。
「契約締結上の過失の理論」とは、契約の準備段階(もう契約するよという段階)に入った当事者は、相手方当事者の財産等を害しない信義則上の義務を負い、この義務に違反して相手方に損害を発生させた場合には、これを賠償しなければならないとする。
つまり、契約がもうすぐ成立する段階に至った場合には、「やっぱりやーめた」ということを言う場合には、相手方に損害を賠償してねという理論です。
この理論が適用されるためには、「もうすぐ契約する状態だった」ということが重要です。
では、どういう状態であれば「もうすぐ契約する状態だった」といえるのでしょうか?
東京地裁平成17年3月24日判決を見てみましょう。
これらの点を重視し「もうすぐ契約する状態だった」と認定し、ユーザーは損害賠償義務を負うとしています。
ユーザ側としては、契約書が作成されていないからといって、安易に契約交渉を破棄してはいけません。
また、合意に至らない可能性があるのであれば、事前に、その旨を、書面又はメールなどベンダ企業に伝えておき、「契約締結上の過失の理論」が適用されないようにしておく必要があります。
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