この記事の目次
ユーザーから投稿してもらうサービス投稿型サイト(CGM)を提供してる事業者は、警察から「捜査関係事項照会書」といった書類が届くことがあります。
これは、ユーザーが、違法なコンテンツを投稿した場合に「そのユーザーの情報(氏名、住所、IPアドレス)を教えてください」という警察からの要請です。
この場合、事業者としては、どのような方法を取る必要があるのでしょうか?
参考記事:警察から「捜査関係事項照会書」を受け取ったときの対処法をIT弁護士が解説【2019年12月6日加筆】
捜査関係事項照会書の書き方と回答するときの注意点【解説】
警察からの要請だし…当然応じればいいのではと思うかもしれませんが、そんな単純なものではありません。
例えば、ユーザーの個人情報を警察に開示します。そうすると、開示されたユーザーから、プライバシー権侵害の主張(損害賠償等)がなされることになります。
この場合、事業者としては、警察からの要請に応じたのであるから、問題ないだろうと思うかもしれませんが、場合によっては、この反論が通用しない可能性があります。
もちろん、警察も、事業者を守ってくれるわけではありません。そこで、事業者としては、適切な対処をする必要があるのです。
警察からの通知なので、強制力があると思われがちですが、実は、捜査関係事項照会は、あくまで任意のものであり、強制力はないのです。
仮に、回答を拒否したからといって、逮捕されるなどの罰則はないのです。しかし、回答しないことによって、事業者側が、違法行為を助長していると言われるリスクはあります。
事業者としては、ユーザーと警察の板挟みになって難しい立場に追い込まれます。
事業者としての最大のリスクは、警察に協力しないことによって、違法状態を助長しているとして「幇助犯」とされてしまうことです。
そのため明らかに、ユーザーによって刑事上の違法行為が行なわれているような場合には、事業者として警察からの照会に応じる必要があります。
例えば、以下のような場合です。
このような場合は、明らかに刑事上の犯罪ですから、警察の照会に応じるべきでしょう。
注意が必要な場合が、ユーザーによる著作権侵害や名誉棄損の場合。
これらも、刑事上の犯罪ですが「著作権を侵害している」「名誉を棄損をしている」というのは、評価が生じる問題です。事業者としては、そもそも、著作権侵害があるのか、名誉棄損的な表現であるのかを、見極める必要があります。
例えば、著作権侵害になるかどうかは、以下のような点を判断する必要があります。
名誉棄損になるかは、人の社会的評価を低下させる表現があったかということが問題になります。しかし名誉棄損的な表現があっても、以下の様な場合には刑法上罰しないとされています。
これらは警察から照会が来ても、そのまま応じるのではなく、自社でも権利侵害のある情報かを吟味する必要があります。
警察から照会が来た…なんかとんでもないことのないように思われて、慌ててしまうかもしれませんが、あくまで、警察からの任意の問い合わせです。
慌てずに、どういう情報が問題となっているのかを見極めて、対応するようにしましょう!