IT法務・AI・暗号資産ブロックチェーンNFT・web3の法律に詳しい弁護士|中野秀俊
グローウィル国際法律事務所
03-6263-0447
10:00~18:00(月~金)

IT弁護士が紹介!仮想通貨やブロックーチェーン技術が実装された6つのビジネスモデル

仮想通貨・デジタル通貨に関する法律

仮想通貨やブロックチェーンビジネスを紹介します

投機的な意味で注目される仮想通貨ですが、ビジネス面でも、様々な場面に応用されています。

弊社(グローウィル国際法律事務所)にも、多くの仮想通貨・ブロックチェーン系のサービス事業者が、ご相談きています。

そこで、今回は、仮想通貨・ブロックチェーンビジネスについて、紹介します。

送金分野と仮想通貨・ブロックチェーン

国際送金では、ブロックチェーンの実用化に向けた取組みが世界中でなされています。

例えば、日本にいる送金者からアメリカにいる受取人に100万円を送ることを想定してみましょう。

  1. 日本の銀行での送金手数料(約4,000円)
  2. 日本円を米ドルに変更する際の為替マージン(約9,000円)
  3. 異なる銀行間を仲介するコルレス銀行の仲介手数料(約2,000円)
  4. アメリカの銀行での手数料(約3,000円)

このように、合計2万円弱の送金手数料がかかってしまうことになります。

送金されるのも、決済には早くとも2~5営業日がかかってしまうなど、非常に使い勝手の悪いものです。

ブロックチェーンを利用した国際送金

従来の国際送金のコストや決済時間を大幅に削減したのがアメリカのRipple社です。

2018年5月には、Ripple社が、国際送金システムをxRapidのパイロット成功を報告しました。

xRapidのパイロット成功を報告

xRapidによる国際送金の仕組みは、送金に携わる金融機関が、発信地と目的地双方の仮想通貨取引所に直接連携し、発信地の通貨はブリッジ通貨XRPに交換され、目的地の仮想通貨取引所に移転、さらに目的地の通貨に交換、最後に特定の送金先アカウントに送金されるというものです。

日本での取り組み

日本企業にも、Ripple社と提携することにより、ビジネスに活用する企業が出てきています。

例えば、2018年5月14日、株式会社三菱UFJフィナンシャル’グループと三菱商事株式会社は、タイやイギリスの金融機関と提携し、Ripple社のxCurrentシステムを使った国際送金の実証実験を開始したことを発表しました。

新送金技術を活用した国際送金の実証実験の開始について

SBIリップルアジアが主導する内外為替一元化コンソーシアムが発足し、りそな銀行、スルガ銀行、住信SBIネット銀行をはじめとする多くの国内金融機関が参画している。銀行間の国内送金にもブロックチェーンを導入する動きが見られています。

内外為替一元化コンソーシアムにおけるスマートフォン向け送金アプリ 「Money Tap(マネータップ)」提供に関するお知らせ

銀行独自のトークン

国際送金と並んで注目されているのは国内のメガバンクが実用化を狙う独自トークンです。

以下では、代表的なMUFGコインとJコインについて紹介します。

MUFGコイン(coin)

MUFGコインとは、現在三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下「MUFG」という)が発行を検討しているの仮想通貨です。

現在では「coin」という名称に変更されています。

参考記事:「MUFGコイン」の名称から「MUFG」が消えた? その真相は

MUFGコインを用いると、加盟店での買い物や、P2P通信を利用した高速度で低コストの送金を実現することができます。

MUFGコイン発行による利便性は、消費者に対するものよりも、発行側である銀行に対するものが大きいのが実情です。

銀行では全ての取引データを行内の大型コンピューターで管理しているため、システム投資やその管理に多額の費用がかかってしまいます。

そこで、ブロックチェーンの技術を用いて、複数の小型コンピューターのネットワークを行内に構築すれば、コストを大幅に削減した形で改ざん困難なシステムを実現することができます。

また、MUFGコインが浸透することで現金の使用割合が減少すれば、ATMの設置管理コストを大幅に削減することができます。

Jコイン

Jコインとは、みずほフィナンシャルグループ、ゆうちよ銀行、その他70の地銀が発行を検討している電子トークンです。

みずほフィナンシャルグループがこれまで実証実験を行ってきた独自の仮想通貨であるJ-Coin(Jコイン)を2019年3月に発行することを決定しました。

みずほが3月に仮想通貨Jコインを発行することを決定!概要やメリットを解説!

その機能としてはMUFGコインとほぽ同じです。Jコインは1コインの価格が1円に固定されています。

ビットコインをはじめとする、法定通貨と連動しない仮想通貨は、その独自の値動きとボラリティの高さから、決済目的ではなく投機目的で用いられるとの見方が多いです。

他方で、現在実証実験が進められている銀行独自通貨の一部にはJコインのように円の価値に固定されたものもあり、発行されれば電子マネーと同じように多くの場面で使用されることが考えられます。

ステーブルコインは仮想通貨にあたるのか?発行者が注意すべき法律とは

シェアリングエコノミーと仮想通貨・ブロックチェーン

シェアリングエコノミーとは、乗り物・空間・モノ・カネ・ヒトをはじめ、世の中に存在するあらゆる資産をコミュニティ内で売買・貸借・共有できる社会的仕組みです。

多くの遊休資産が活用されないまま眠っているとされており、これら資産を用いたシェアリングサービスの市場は、2025年までに3,350億ドル(約37兆円)にもなるとの推計もあります。

Airbnbなどが、その代表例です。Airbnbは、便利なサービスですが、住居を貸したい人、借りたい人は、常にAirbnb社を経由しなければサービスを受けられません。

また、ユーザー同士が直接金銭をやり取りすることはサービス利用規約上禁止され、必ず会社を通じて決済を行い、仲介料を支払うことが義務づけられています。

また、この仕組みにおいては、鍵の受渡し作業において必要以上にコミュニケーション図らねばならず不便な点が多いとの不満があります。

これに対して、ドイツを拠点とするSlock.itGmbHは、システムSlock.it(スロックイット)を開発し、ブロックチェーン技術によって第三者の仲介者を介在することなく、鍵をかけられるあらゆるもの(家・車・洗濯機・自転車等)を容易に売買、賃貸または共有することを可能にしました。

例えば、部屋を借りたい人であれば、以下のプロセスをとります。

  1. Slock.itが取り付けられた部屋を専用アプリで見つける
  2. 専用アプリから保証金を支払い、ネットワーク上で認証されると Slock.itが開錠する
  3. 返却時にSlockitを施錠すると、保証金の一部が借主に戻り、一部が 所有者に支払われる

鍵が開く仕組みとしては、鍵と連動した小さな基盤がドアに取り付けられており、②の保証金支払いとして、借主がこの基盤の中にある仮想通貨ウォレットに特定の仮想通貨を送金することで、認証、開錠されます。

借主に対象物が損壊された場合も想定し、保険との連携も構築されています。

ブロックチェーンはオンライン上での情報管理を得意とするが、データ上でのやり取りを超えて外部に物理的に干渉することが難しいとされています。

Slock.itは、ブロックチェーンと鍵との連動について、鍵を解錠・施錠するというシンプルな物理的動作だけで、モノの使用権を物理的にコントロールさせることを実現させている点が特長です。

電気取引と仮想通貨・ブロックチェーン

従来は、電力を供給する側は電力会社のみであり、電力会社で作った高圧の電力を各家庭や会社に一方的に供給していくことが当たり前でした。

従来の電気取引方法には、現在は、各家庭や企業が太陽光発電や風力発電など自然エネルギーを元にした発電設備を備えるプレイヤーとなってきており、脱化石燃料の動きからその流れはさらに加速していくことが考えられます。

そのため、電力が欲しい人は、電力会社から購入するという選択肢以外にも、周りに存在する電力供給者から電力を購入することが当たり前の時代がやってきます。

そのことは、自らが余剰電力を周囲の需要者に売却することも当たり前となることを意味するのです。

ENECTION2.0の取組み

みんな電力株式会社は、株式会社AerialLabIndustriesと協同で、ENECTION2.0を開発し、ブロックチェーンを用いた分散型電力取引管理の実現を計画しています。

ENECTION2.0では、現在、発電事業者の発電量に応じた電気トークンをリアルタイムで発行し、トークンの流れをブロックチェーンで記録することにより、電力のトレーサビリティを実現しようとしています。

今後は、個人、企業間で販売価格を相対で自由に設定して電力を直接売買できるようにし、電力のシェアリングを目指しています。

音楽著作権と仮想通貨・ブロックチェーン

音楽は、レコード会社、演奏者、歌手、作曲家、作詞家等多数の者の協力によってつくられます。

これらの作成に関わった者は全員音楽の著作権者であり、音楽が演奏されたり、オンラインで流されたりする度に著作権料を受け取る権利を得ることになり、この著作権料を確実に徴収するために、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が著作権者に代わって徴収する仕組みになっています。

MediachainLabsによる音楽管理

JASRACは、音楽の著作権を管理しているが、日本中のどこでどれだけ音楽が使用されたかをJASRACが正確に把握する術はなく、徴収方法は使用量を反映したものとはなっていません。

そのため、無名のアーティストは、仮に使用されていたとしても著作権料を得ることができないという問題があります。

また、JASRACにおける管理コストは重く、著作者としては管理料の負担から思うように著作権料が得られないという問題も生じています。

そこで、2017年4月、音楽配信サービスで有名なSpotifyは、ブロックチェーン技術を持つスタートアップMediachainLabsを買収し、ブロックチェーンを用いて公平な形で著作権料を著作権者に分配する新たな管理方法を開発しています。

その手法として、MediachainLabsが音楽コンテンツの情報データをブロックチェーンに記録し、Spotify上で楽曲が提供されるごとに、その楽曲に紐付けられた著作権者に適切な著作権料が分配される仕組みとなっています。

Spotifyは、取扱い楽曲が、4000万曲以上と圧倒的に多く、無名のアーティストでも適切な著作権料を得る機会を手にすることができます。

また、JASRACのように中央の管理者としてコストをかけて管理を行う必要はないため、著作権管理料の低減にも期待できます。

不動産登記と仮想通貨・ブロックチェーン

不動産登記にも、ブロックチェーン技術の導入がされています。例えば、ガーナでのBitlandプロジェクトがあります。

アフリカにおけるブロックチェーンの大きな可能性

ガーナには中央集権的な土地登記の仕組みがそもそもありません。地域の族長や地方政府が土地を管理していますが、78%の土地が登記されておらず、制度としてほとんど機能していません。

登記制度を一新しようという試みはガーナ政府で古くからあったが、地方の縁故主義や政治の不透明さから頓挫しています。

そのような状況のもと、BitlandGlobal,LLCはブロックチェーンを活用した登記システムを開発しました。

GPS情報や衛星写真、登記書類などのデータをブロックチェーンと結びつけることで、土地の来歴がオープンな形で記録されることになり、改ざんや不正取引を防止することができます。

登記制度が完備されることで、土地を担保に金銭を借りることができるようになり、ビジネスの発展が大いに期待できる。

土地の所有者が公式に認められることで、その所有者はその土地を担保に金銭を借りやすくなり、それを元手に多様なサービスを享受したり、ビジネスをはじめたりすることが可能です。

今後は同様の問題を抱えた他のアフリカの国やインドにも対応する予定です。