システム開発の特徴として、開始の時点において全体が決定していないことが多く、新たな問題が発生したり、ユーザーの状況が変化することにより、仕様変更が発生することが多々あります。
裁判所でも、東京地裁平成15年5月8日判決では,「追加の費用が発生することはいわば常識であって,追加費用が発生しないソフトウェア開発などは稀有である」と判示しているほどです。
では、システム開発で、仕様変更に対して、追加費用を請求できるのでしょうか?
トラブルになるパターンとしては、納期優先をさせるあまり、ベンダの担当者は細かいことを気にしないまま仕様変更に応じ、後にユーザーに対し、追加報酬の請求をするパターン。
このような場合には、ユーザからしてみれば、仕様変更という認識すらなく、追加報酬を請求されて、紛争に発展するというケースが多いのです。
本来、報酬代金額を変更するということは、契約の変更または新規契約の締結ということになります。
つまり、契約成立・変更と認められる場合でないと、報酬を請求することが難しいのです。
例えば、ベンダ側の見積の誤りがあり、想定以上に工数がかかってしまったというような場合には、追加請求できる余地はありません。
一方、報酬算定の根拠が明確であり,その根拠が変更になったことが明らかな場合には追加請求が認められる可能性があります。
裁判例で実際にあった事例として、機能数などに基づいて報酬額が算定されていて、その根拠となる機能数に変動が生じ、そのことをユーザも認識していた場合には、追加請求が認められた事例があります(東京地裁平成17年4月22日判決)。
また、もともとの開発範囲が明確になっていて,その範囲を超えた作業であることが明らかである場合にも認められる可能性が高いといえます。
このようなトラブルを避けるためには、契約書において、仕様変更の場合の手続き、契約変更のプロセスを定めておく必要があります。
また、当初の仕様、開発範囲などは契約書の別紙等に添付して,両者の合意として明記しておきましょう。
契約締結段階で確定できない場合でも、適宜合意ができた段階で開発対象をアップデートして契約書と紐づけておくという対策が必要になります。