SaaS(Software as a service)とは、「ユーザーが開発者などからソフトウェア提供を受ける に当たり、必要な機能のみを選択して利用できるようにしたソフトウェア」のことです。
CRM(Customer Relationship Management )やSFA (Sales Force Automation)、人事情報管理・給与計算サービスなど、様々なサービスが用いられています。
SaaSは、インターネット上で、やり取りがされます。形がないものだけに通常の契約にはない配慮が必要です。
ユーザーにとっては、どのようなサービスの提供を受けることができるのか知りたいところです。そこで、SaaSを提供するに当たり、事業者はあらかじめサービスの品質(レベル)をSLAという形で表示することが多いです。
これは、経済産業省が出している「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」でも、事業者はユーザーに対して、SLAを明示することが、ユーザーとの間でのトラブルを回避することが望ましいとされています。
では、事業者が定めるSLAには、どのような法的効力があるのでしょうか?
これには、SLAの規定を、義務規定の形にするのか、努力目標で定めるのかにより、全く違ってきます。
義務規定として設けた場合には、事業者が、SLAのサービスレベルを達成できなかった場合には、債務不履行責任(民法第415条)を負うことになります。
これに対して、努力目標として規定した場合には、サービスレベルの達しなかった場合でも、直ちに事業者の債務不履行とはなりません。
よって、事業者としては、義務規定、努力規定を使い分けることが必要です。
サービス事業者としては、自己の提供するサービスの内容について、どの条項を義務条項とするか、努力目標とするかを決定する必要があります。
また、リスクがある条項で、義務条項にしたい場合には、免責条項や損害賠償額の上限を設けておくなども検討すると良いでしょう。
ただし、企業ではなく、一般消費者がユーザーになるようなサービスを提供するような場合には、消費者契約法に注意が必要です。消費者契約法では、事業者側に、一方的に有利な免責や責任制限は無効とされています。
事業者として、SLAで定めておくことが望ましい項目は、以下の通りです。
ユーザーの通信環境やハードのスペック等のソフトウェアを利用するに当たっての前提条件を定めることが、不可欠です。
ソフトウェアでは、ユーザーにとっては、サービス提供時間や稼働率など、どの程度スムーズに利用できるかは極めて重要です。定期的なメンテナンスのために、利用が停止される場合には、予め明示しておく必要があります。
もっとも、サービス提供時間や稼働率は、予期せぬ出来事などがあり、守れない場合も出てきます。
そこで、これらは、努力目標として定めることも考えましょう。
SaaSでは、システムの不具合や障害により、サービスが利用できない状態(障害) が発生することは起こり得ます。そこで、障害が発生した場合の復旧時間や対応について定めておくことが必要になります。
復旧時間を義務規定として定めた場合には、時間内に復旧できなかった場合には、事業者は契約を解除される恐れがあります。義務規定とする場合には、注意しましょう。