メタバース内において、自分の容貌と酷似したアバターが他人により使われていた場合に法的な責任は追及できますか。
まず問題になるのは肖像権です。
肖像権とは、人が容貌・姿態を本人の意に反して、撮影されたり、公表されない権利をいいます。判例でも自己の容貌等を撮影されないことや、自己の容貌等を公表されないことが権利として認められています。
メタバース内において、仮に自分に無断で、自分と瓜二つのアバターが作成され、使用された場合などに、当該行為を肖像権侵害として法的責任を追及できるかが問題となります。
肖像権侵害になるかは、「当該個人の社会的地位、活動内容肖像利用の目的、態様、必要性等を総合考慮して、当該個人の人格的利益の侵害の程度が社会通念上受忍の限度を超える場合には、当該個人の肖像の利用は、肖像権を侵害するものとして不法行為法上違法となる」と判断しています。
具体的には、その人がネット上に挙げていないにも関わらず、勝手に、特に必要もなく、他人の顔や身体を、ネット上に公開するなどすれば、肖像権の侵害になります。
メタバース空間における他人の肖像の利用についても、当該他人の社会的地位、他人の肖像をメタバース内で利用する目的や必要性の程度、肖像利用の具体的態様、当該他人がSNS等で肖像を公開しているかどうかといった利用される側の事情等様々な要素が考慮され、受忍限度を超えるか否かが判断されます。
メタバース空間において他人の肖像を利用する正当な目的や必要性が認められる場合は限られてくると思われます。なので基本的には、肖像権侵害になります。
また他人の容貌とそっくりのアバターについても、肖像権侵害になる可能性が高いです。他方、一定程度デフォルメされた場合には肖像権侵害ではない可能性もありますが、デフォルメの仕方によっては、名誉毀損などの他の違法行為に発展する場合があります。
メタバースの運営会社や利用者は、無用な紛争を避けるため、他者の肖像をメタバース内で利用することを原則禁止とするということも考えられます。
肖像権侵害があった場合、被害者は、肖像権を侵害した者に対する損害賠償(慰謝料)の請求をすることができます。また、肖像権侵害行為の差止請求も可能です。
芸能人や有名人には、人を惹きつける力があります。
これを顧客誘引力といい、これはその芸能人や有名人が独占すべきだという考え方があります。
これをパブリシティ権といい、判例上もこの権利が認められています。
その上で、パブリシティ権が侵害される場合、以下のような場合には、パブリシティ権侵害になるとしました。
例えば、①の例として、芸能人の写真がNFTとしてメタバース上で販売される場合、②の例として、芸能人のアバターが登場することを他のメタバースと比較して優位性があることを示してユーザーを勧誘する目的で使われている場合、又は③の例として、NFTやゲーム内アイテム等のメタバース内で販売される商品の広告としてXの肖像等が使われる場合などは、パブリシティ権に侵害になる可能性が高いです。
パブリシティ権侵害があった場合には、その被害者はパブリシティ権を侵害した者に対する損害賠償(慰謝料)の請求に加え、侵害行為の差止請求も可能になります。
メタバース事業者及び利用者は、パブリシティ権を侵害しないように、注意しましょう!