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Webサイトのメタタグで他社商標を使用すると商標権の侵害になるのか?【判例あり】【2023年8月加筆】

インターネット法律

メタタグにおける記述は、商標権侵害になるのか

自社のウェブサイトのディスクリブションメタタグ(記述メタタグ)に競合他社の商標を記述し、検索エンジンの検索結果ページに、自社のウェブサイトを表示させることは、法律上、大丈夫なのでしょうか?

メタタグとは、HTMLファイルに記載するコード(タグ)であり、ウェブサイトの内容を検索エンジンに伝えるために使用されるものです。

このうち、ディスクリプションメタタグ(くmetaname=“description”content=“~”/〉)の場合には、ブラウザの通常の表示により、記述した内容(「~」の部分)が検索結果ページにサマリーとして表示されるが、キーワードメタタグ(〈metaname=“keywords”content=“~”/>)の場合は、ブラウザの通常の表示では、ウェブサイトが検索結果ページに表示されるだけで、記述した内容(「~」の部分)は検索結果ページに表示されません。

このように、ディスクリプションメタタグとキーワードメタタグは、記述の内容がブラウザの通常の表示によって視認することができるか否かで異なっています。

自社のウェブサイトのHTMLファイルにメタタグとして、競合他社の商標を記述することも可能であり、それによって、ユーザーが検索エンジンに当該競合他社の商標を検索キーワードとして入力した際、検索結果ページに自社ウェブサイトを表示させやすくことも可能となるのです。

このようなメタタグで、他社商標の使用した場合に、商標権の侵害になるのでしょうか?

ディスクリプションメタタグにおける他社商標の使用

ディスクリプションメタタグに競合他社の商標を記述することが商標権侵害等になるかについて判断した裁判例として、以下の裁判例があります。

クルマの110番事件 大阪地裁判決

  • Yは、Yのウェブサイト(Yサイト)のトップページを表示するためのhtmlファイルにメタタグとして「cmetaname=“description”content=“クルマの110番。輸入、排ガス、登録、車検、部品・アクセサリー販売等、クルマに関する何でも弊社にご相談下さい。”>」と記載
  • 検索サイトで「クルマの110番」と検索すると、検索結果ページにおいて、Yサイトの説明として、同記載の内容が表示されるようにしていた。これに対し、「中古車(くるま)の110番」との商標(本件商標)について商標権を有するXがYに対し、Yの行為は、Xの商標権を侵害するとして、損害賠償を請求したという事案

裁判所は、以下のように判示しました。

htmlファイルに、『<metaname=“description”content=“~”>』と記載するのは、インターネットの検索サイトにおいて、当該ページの説明として、上記『~』の部分を表示させるようにするためであると認められる。

一般に、事業者が、その役務に関してインターネット上にウェブサイトを開設した際のページの表示は、その役務に関する広告であるということができるから、インターネットの検索サイトにおいて表示される当該ページの説明についても、同様に、その役務に関する広告であるというべきであり、これが表示されるようにhtmlファイルにメタタグを記載することは、役務に関する広告を内容とする情報を電磁的方法により提供する行為にあたるというべきである。

本件において、Yは、そのトップページを表示するためのhtmlファイルに、メタタグとして、上記のとおり記載し、その結果、検索サイトにおいて、Yサイトのトップページの説明として、同記載の内容の表示がされたのであるから、Yは、その役務に関する広告を内容とする情報に、本件標章に付して、電磁的方法により提供したものと認めることができるとして、Yの商標権侵害を肯定しました。

その他にも、ディスクリプションメタタグに記述による事例で、商標権侵害であるとした裁判例があることからも、当該競合他社の商標が商標登録されている場合には、商標権侵害となる可能性が高いです。

キーワードメタタグにおける他社商標の使用

キーワードメタタグに競合他社の商標を記述することが商標権侵害等になるかについて明確に判断した裁判例は存在しません。

しかし、キーワードメタタグは、ディスクリプションメタタグと異なり、ブラウザの通常の表示によって確認することができません。

よって、他人の商標を「使用」に該当しないと判断される可能性が高いです。

検索連動型広告において競合他社の商標をキーワードとして購入し、当該検索キーワードの検索結果ページ上の広告スペースに自社の広告を表示させることが商標権侵害となるかが争われた事件において、競合他社の商標をキーワードとして購入することが「使用」に当たらないと判断されています。