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著作権を共同で持つってどういうこと?共同著作物を解説

著作権に関する法律

共同著作物とは

共同著作物とは、2人以上の者が共同して創作した著作物で、コンテンツを分離して個別的に利用することができないものです。例えば小学校の卒業制作として同級生全員で描いた1つの壁画作品などは、共同著作物に該当し得えます。

一方、小説と挿絵など、分離して個別に利用できるものは、独立した著作物が結合しているいわゆる結合著作物とされ、分離して個別に利用することができない1個の共同著作物とは異なるものです。

共同著作物が特殊性とは

共同著作物は、そうでない著作物に比べて、以下のとおり権利行使や処分に制限があります。

著作者人格権の行使の制限

共同著作物の著作者人格権は、著作者全員の合意がなければ行使ができません。

つまり、共同著作物について、未公表著作物を公表したり、著作者の氏名表示の変更をしたり、著作物の改変をしたりするには、著作者全員の合意が必要になります。

もっとも共同著作物の各著作者は、信義に反して合意の成立を妨げられないとされ、例えば嫌がらせ目的で公表に応じないといったことは認められません。

著作権の共有とそれに伴う制限

共同著作物の著作権は共有となります。

共同著作物の著作者が2人なら著作権の持分は50%ずつと推定されますが、最終的には共同著作者間の貢献度により決まるとされています。

とはいえ貢献度の評価が困難なケースもあり、紛争予防の観点から著作物創作前に著作者間で持分割合を合意する場合もあります。

公共有著作権の持分の譲渡には、他の共有者全員の同意が必要です(著作権法65条1項)。また共有著作権の行使(複製等、著作権の利用や利用許諾)には、共有者全員の合意が必要です(著作権法65条2項)。

もっとも、共有者は「正当な理由」がなければ譲渡の同意や権利行使の合意は拒めないことになっています(著作権法65条3項)。

一方で、著作権・著作者人格権に基づく差止請求については、各著作者・著作権者は単独で行えます(著作権法117条1項)。

共同著作物か否かが争われた事件

有名な事件として、ノンタン事件(絵本の事例)があります。

「ノンタン」という子猫を主人公とした絵本シリーズについて、原告とその元配偶者である被告が共同著作者として表示され、同絵本の制作裏話や2人のエピソードを書いた「二人でノンタン」という書籍も発行されていたところ、原告のみが同絵本シリーズの著作者であることを前提に、その著作権を有することの確認等を求めた事件です。

判決では、本件絵本の創作過程を認定したうえで、その創作的表現の核心部分は、扱うテーマやストーリーを構想し、これを具体的に表現する絵柄やその配置、配色の決定及び文字記述部分にあって、これらを創作した者が著作者たり得るとしました。

そして、単に決められた色を塗ったり輪郭線の仕上げをしたりするにとどまる場合は、単なる補助的作業であって著作物の創作行為とは評価できないとし、被告が豊富な経験を生かして絵の具の配合し、原告よりも上回る技術を駆使して仕上げの輪郭線を引いていたとしても、それは補助的作業にすぎないとして、著作者は原告だと認定しました。