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人材マッチングビジネスが「職業紹介」に該当するのか【解説】【2022年12月加筆】

IT企業のための法律

人材マッチングビジネスとは

人材マッチングビジネスは、まず、マッチングの場を主催する企業が、仕事の依頼のために人材を求めている企業と労働者やフリーランスを集め、インターネット上に、マッチングサイトを構築することが一般的です。

主催企業の収益のしくみはまちまちですが、依頼企業のみから報酬を得 て、求職者からは報酬を得ないケースが多いです。

また、依頼企業から報酬を得る場合に、登録費等の一定の費用の支払いを求めるケースもありますが、この場合、 依頼者が優秀な人材を獲得できないにもかかわらず、一定の費用だけ支払うことになるという事態が生じえます。

そこで、主催企業としては、マッチングが成約した場合に成功報酬として一定額の支払いを求めるケースも多いです。

情報提供が職業紹介に該当するのか?

この人材マッチングビジネスでは、法律上の「職業紹介」に該当するのかが問題になります。

有料で「職業紹介」事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければなりません。

ここで、職業紹介とは「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすること」をいいます。

マッチングサイトによる情報提供が「職業紹介」に該当するか否かの判断については、厚生労働省が公表する「民間企業が行うインターネットに よる求人情報・求職者情報提供と職業紹介との区分に関する基準について」 というガイドラインが基準となります。

上記のマッチングガイドラインでは、「インターネットによる求人情報・求職者情報提供」について、情報提供事業者がホームページ上で求人背報または 求職情報を求職者または求人者の閲覧に供することであると定義づけたうえで、以下のいずれかに該当する場合には「職業紹介」に該当するとしています。

  1. 提供される情報の内容または提供相手について、あらかじめ明示的に設定された客観的な検索条件に基づくことなく、主催企業の判断により選別・加工を行うこと
  2. 主催企業から求職者に対する求人情報に係る連絡または求人者に対する求職者情報に係る連絡を行うこと
  3. 求職者と求人者との間の意思疎通を主催企業のホームページを 介して中継する場合に、主催企業が、その内容に加工を行う こと

なお、上記1~3に該当する場合のほか、主催企業による宣伝広告の内容、主催企業と求職者または求人者との間の契約内容等から判断して、主催企業が求職者に求人者を、また、求人者に求職者をあっせんするものであり、インターネットによる求人情報・求職者情報提供がその一部として行われているものである場合には、全体として「職業紹介」に該当するとしています。

職業紹介に該当する場合と該当しない場合

次に、マッチングガイドライン上、マッチングサイトによる情報提供が 職業紹介に該当しない場合として、以下の具体例があげられています。

マッチングサイト上にある求人の求人者または求職者に対し、求職者 または求人者がそのホームページを経由してメールを送ることにより面接できるなど、オンライン上で応募または勧誘できるしくみを設けるだけで、主維企業がその当事者間の通信内容に加工を行わない場合

上記のように、主催企業としては、依頼企業と求職者とのやり取りについて、加工するなどの行為をしなければ、法律上の「職業紹介」にはならないのです。