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IOTビジネスにおけるネットワーク設備に関する法律とは【電機通信】

ロボット・AI・ドローンの法律

IOTとネットワーク

IOTは、インターネットとモノをつなぐ事業・サービスです。その中でも、有線や無線による電機通信は、不可欠の構成要素です。

主な電気通信に関する法律には、次のようなものがあります。

  • 有線・無線を問わず電気通信事業を対象とする電気通信事業法
  • 無線通信の設備や使用に関する電波法
  • 有線電気通信の設備や使用に関する有線電気通信法

lOT技術の開発・導入する際には、これらの法律によって、免許や登録、届出等が必要となる場合や、通信設備が一定の技術的水準に適合していることが求められる場合があります。

今回は、IOT開発・導入における「有線や無線による電機通信」に関する法律について、解説していきます。

電気通信事業法による規制

電気通信事業法は、電気通信事業を行うためには、電気通信事業法により、参入時に登録や届出などの手続が必要とされる場合があります。

「電気通信事業」に該当するかは、「電気通信事業参入マニュアル」に詳細が規定されていますが、以下の規定になっています。

電子通信事業とは

法律上、「電気通信事業」は、電気通信役務を他人の需要に応じるために提供する事業とされています。

「電気通信役務」とは、他人の依頼を受けて、情報をその内容を変更することなく伝送・交換し、隔地者間にある他人と他人との間の通信を取次・仲介して通信の完成に寄与することをいうとされています。

これが、「事業」といえるためには、他人の依頼に応じるために電気通信設備を提供する事業である必要があり、自身の業務の遂行に必要なため、利用する場合には、自己の需要に応じて利用するものであって、他人の需要に応じるために電気通信役務を提供する場合には、該当しません。

また、「事業」いえるためには、同種の行為が反復継続的に行われる必要があるから、1回限りの行為などはこれに当たりません。

「届出を要する電気通信事業」と「登録を要する電気通信事業」

電気通信事業を営もうとする場合、その電気通信回線設備の規模等に応じて、登録または届出が必要になります。

大規模な電気通信回線設備を設置する者については、総務大臣の登録を受ける必要があります。

大規模な電気通信回線設備とは、次の2つの場合があります。

  1. 端末系伝送路設備の設置区域が1つの市町村・特別区の区域を超える場合
  2. 中継系伝送路設備の設置区域が1つの都道府県の区域を超える場合

小規模な電気通信回線設備の設置にとどまる者や電気通信回線設備を設置しない者については、総務大臣(実際には総合通信局等)への届出を行う必要があります。

電子通信事業の具体例

実際に行おうとするlOTサービスが電気通信事業法の適用対象となるかについては、個別の判断が必要になるが、ここでは、lOTサービスにおいて想定され得る通信形態について、「電気通信事業参入マニュアル」に挙げられている具体例を解説します。

(1)ネット通販

小売業者などが顧客からの注文を受けて、電気通信設備を用いてインタ-ネット経由で顧客からの要求に対応するネット通販は、電気通信役務に該当します。

しかし、小売業者は本来物を売るという事業を行っており、物を売るための手段として電気通信役務を提供しているものである。このように別の自らの本来業務の遂行の手段として電気通信役務を提供することは、自己の需要に応ずるためのものであって、他人の需要に応じたものではないから、電気通信事業には該当しません。

(2)メールマガジンの発行・配信等

自社製品の宣伝やイベント開催案内等としての顧客等に対するメールマガジンの発行は、自らの本来業務に関する情報を顧客に対して広報するに当たっての電気通信役務の提供となるので「(1)ネット通販」と同様の理由により、電気通信事業には該当しません。

これに対し、他社から提供された製品PRやイベント開催案内等に関する情報の加工・編集等を行い、あらかじめ登録した購読者等に対して電子メールによる広報を行うメールマガジンの配信は、次の「(3)各種情報のオンライン提供」と同様の理由により、電気通信事業に該当します。

また、企業等から提供された情報の加工・編集等を行った上で購読者に送信することから、自己と購読者(他人)との間の通信であり、他人の通信を媒介していないことから、登録および届出が不要な電気通信事業に該当します。

他方で、企業等から提供された情報の内容の変更を行うことなく電子メールによる広報を行うメールマガジンの媒介は、登録または届出を要する電気通信事業に当たります。

(3)各種情報のオンライン提供

電気通信設備を用いて、情報データベースを構築し、インターネットを経由してその情報を利用者にオンライン提供する場合は、利用者(他人)の通信の用にその設備を利用しているので、電気通信役務に該当します。

また、利用者の需要に応ずるためのインターネット経由での情報送信(電気通信役務の提供)自体を目的として行っているから、電気通信事業に該当します。

もっとも、自己と他人との間の通信であって他人の通信を媒介しておらず、電気通信回線設備を設置していない場合には、登録や届出は不要です。

(4)Webサイトのオンライン検索

広範なWebサイトのデータペースを構築し、検索語を含むWebサイトのURL等をインターネットを経由して利用者に提供するポータルサイトは、「(3)各種情報のオンライン提供」と同様に、他人の通信を媒介しておらず、かつ、電気通信回線設備も設置していない場合には、登録および届出が不要な電気通信事業に該当します。

(5)オンライン計算処理

データ処理ソフトウェアをインストールしたサーバ等を設置して、インターネット等を経由して企業等の科学技術計算や事務計算などのデータ処理を行うオンライン計算処理は、「(3)各種情報のオンライン提供」と同様に、登録および届出が不要な電気通信事業に該当します

(6)ソフトウェアのオンライン提供

労務管理や販売管理等を行うアプリをインストールしたサーバ等を設置して、インターネット等を経由して当該ソフトを企業等に利用させる場合は、「(3)各種情報のオンライン提供」と同様に、登録および届出が不要な電気通信事業に該当します

電波法による規制

電波法は、電波を利用した信号の送受信に適用されるルールです。

電波法は、電波の利用について、免許制度・登録制度を設けるとともに、使用する無線設備や無線従事者について規制を設けています。

無線局を開設して運用するためには、原則として無線局免許が必要であり、無線局に用いる無線設備が、技術基準に適合していることが免許の要件の1つとされています。

また、免許を要しない無線局については、無線設備が電波法に定める技術基準に適合していることを、あらかじめ確認し証明する技術基準適合証明または工事設計認証を受けた無線設備を使用することが条件とされています。

(1)無線設備

無線設備とは、無線電信、無線電話その他電波を送りまたは受けるための電気的設備であり、送信設備と受信設備の一切が含まれます。

よって、電波を利用してデータや音の送受信などを行うための設備が無線設備です。

(2)無線局

無線局とは、無線設備と無線設備の操作を行うものをいいます。無線局は、周波数帯などによっていくつかの局種に分かれています。

無線局の開設には、原則として総務大臣から免許を受ける必要がありますが、無線局によっては免許が不要とされているものもあり、ロボットやlOTの開発においてはこれらの免許不要局を活用することが考えられます。

免許を要する無線局

電波を利用するためには無線局の開設が必要であり、無線局を開設するには、原則として総務大臣から免許を受けなければなりません。

無線局の免許は、無線局の種類に従って、送信設備の設置場所ごとに行う必要があります。

免許を受ける必要があるにもかかわらず、免許を受けずに無線局を開設した者は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

免許を受けずに無線局を運用した者についても同様です。

免許および登録を要しない無線局

無線局であっても、電波が極めて弱い微弱無線局や、一定の条件の無線設備だけを使用しており無線局の目的・運用が特定されている小電力無線局などについては、無線局の免許および登録を受けなくてもよいものとされています。

技術基準適合証明・工事設計認証

無線局の免許を取得する際には、使用する無線設備が技術基準に適合しているかどうかの検査を受ける必要があります。

特定無線設備については、使用者の利便性の観点から、事前に電波法に基づく技術認証を受け、いわゆる「技適マーク」が表示されている場合には、免許手続時に簡易な免許手続を利用することができるとともに、無線設備の種類に応じて、包括免許を受けることができたり、免許不要の措置を受けたりすることができます。

この事前の技術認証が技術基準適合証明工事設計認証です。

技術基準適合証明は、総務大臣の登録を受けた登録証明機関が、無線設備1台ずつ技術の適合性の判定を行う制度で、登録証明機関が「技適マーク」をつけます。

工事設計認証は大量生産品の場合を想定してできた制度であり、特定無線設備が技術基準に適合しているかどうかの判定について、その設計図(工事設計)と製造等の取扱いの段階における品質管理方法(確認の方法)を対象として登録証明機関が行う制度です。

IOTのネットワークの法律は、専門的

以上のように、IOTのネットワークに関する法律は、技術的な要素も絡む専門的なものです。

そのため、しっかりとルールを守っていないと、刑事罰もありうる厳しいものになっています。

IOT事業者としては、きちっと法律を守り、活動することが必要なのです。