自分が考えたビジネスがパクられた!、自分が考えたウェブサービスのアイデアがパクられている!よく聞く話です。
このようなアイデアをパクる行為は、法律上、問題ないのでしょうか?
アイデアは、著作権法上の「著作物」であるといえるのでしょうか?
著作権法上の「著作物」に該当すると、パクられた場合には、法律上の差止請求や損害賠償請求ができます。
著作権による保護を受ける「著作物」は、思想又は感情を創作的に「表現」したものであることが必要です。
「表現」されたものである必要があるため、「アイディア」自体は著作物には当たらず、アイディアがいかに独創的なものであっても、これを無断で利用することは著作権の侵害には当たりません。
「表現」とは、コンテンツとして形になっているものというイメージです。例えば、写真、ブログ、イラストなどです。
表現とアイディアは、思想、感情を個別具体的に文章やイラストなど、外部的に認識可能な形態で表現したものが「表現」であり、いまだ抽象的な思想、感情の状態にあるものが「アイディア」であるという形で区別することができますが、その境界が曖昧な場合も少なくないため、時として慎重な検討、判断が求められます。
また、「アイディア」の一つとして、「作風」「手法」といったものもそれ自体は著作権による保護の対象ではなく、これらが作品として具体的に表現されることにより、著作権による保護の対象である著作物になります。
ただし、「アイディア」を利用したにすぎない場合は、著作権侵害には当たりませんが、「パクリ」であるとして、いわゆる炎上の対象となる場合も少なくありませんので、実務上は留意が必要です。
特に、現在では、SNSの利用などで、誰でも影響力のある発信ができてしまいます。
よって、法律上問題ないからいいだろうという姿勢ですと、企業としての事業活動に支障が生じる可能性があります。
数学に関する論文に含まれる命題の解明過程やこれを説明するために使用された方程式の著作物性が争われた事案があります。
大阪高裁は、「数学に関する著作物の著作権者は、そこで提示した命題の解明過程及びこれを説明するために使用した方程式については、著作権法上の保護を受けることができないものと解するのが相当である。」と判示しました。
「このような解明過程は、その著作物の思想(アイデア)そのものであると考えられ、命題の解明過程の表現形式に創作性が認められる場合に、そこに著作権法上の権利を主張することは別としても、解明過程そのものは著作権法上の著作物に該当しないものと解される。」と述べ、命題の解明過程等はアイディアであり、著作権の保護は及ばないとしました。
NHKの大河ドラマ「武蔵MUSASHI」が映画「七人の侍」(監督:黒沢明)の翻案権等を侵害するとして争われた事件で、両作品を比較したうえで、設定やストーリにおいていくつかの共通点があるとしつつも、「共通する部分はアイデアの段階にとどまる」とし、結論として侵害を否定しています。
このように、小説やドラマ、映画の設定やストーリーについても、アイデアであるとして、著作権法上、保護されないとしました。
上記のように、ただの「アイデア」は、法律上、保護されません。保護したいなら、「表現」といえるように、形にならないと保護されません。
アイデアを盗まれた!と嘆くことのないようにしましょう!