高級腕時計「フランク・ミュラー」のパロディ商品である「フランク三浦」を販売する会社が、「フランク三浦」の商標登録を無効とした特許庁の審決を不服として起こした裁判で、知財高裁は4月12日、特許庁の審決を取り消す判決を言い渡しました。
特許庁は2015年9月に、フランクミュラー側の請求にもとづいて、「フランク三浦」の登録を無効としてました。今回の裁判でも、フランクミュラー側は、「語感が極めて似ている」「信用や顧客吸引力への『ただ乗り』目的だ」などと主張していました。
今回の判決で、知財高裁は「呼称は似ているが、外観で明確に区別できる」と指摘。「多くが100万円を超える高級腕時計と、4千~6千円程度の低価格商品の『三浦』を混同するとは到底考えられない」として、ミュラー側の主張を退け、「フランク三浦」を販売する会社の勝訴となりました。
今回問題となった商標登録制度とはどういったものなのでしょうか?
商標登録は、特許庁の審査官が、
ときに、特許庁に登録され、権利が発生します。
ただ1回登録されたからといって、安泰というわけではなく、登録された商標について、特許庁に対して登録の無効を求める審判を申立てることができます。
そして、特許庁で登録無効が認められた場合には、商標登録は取り消されてしまうのです。
今回の裁判でのポイントは、
実際、「フランク・ミュラー」側も、
と主張していました。
この商標が類似しているかどうかは、2つの商標の外観、呼称、観念を比較し、取引の実情を考慮して判断されることになります。
今回「フランク・ミュラー」と『フランク三浦』は、「呼称」(呼び方)でいえば、非常によく似ています。しかし、問題は「取引の実情」です。
「取引の実情」とは、今回の件でいえば、時計の購入をする人が、両者を区別して購入できるのか、両社を混同してしまうのかという点にあります。
裁判所は、両者の販売価格、販売方法が異なり、購入者の評価等も明らかに異なるとして、「フランク・ミュラー」の時計と『フランク三浦』の時計は、明確に区別されていると判断し、両者の商標が類似しないとされました。
今回の知財高裁の判断は、商標については、外観や呼称だけでなく、「取引の実情」に対する検討が重要であることを示した画期的判決といえるのです。