ChatGPTを使う際に、最初に行うのはChatGPTに対して何らかの指示を入力することです。
ここでいう指示の入力とは、「○○について調べてください」「顧客情報を整理した表を作成してください」「今後想定している取引について一緒に考えてください」といった具体的な要求をすることを指します。
これらの指示を入力する際に、同時に利用者からChatGPTに対して何らかのデータが提供される場合もあります。
例えば、「顧客情報を整理した表を作成してください」という指示を出す際には、整理に必要な顧客情報をChatGPTに提供することになるかもしれません。
このような外部への情報の開示・提供に関連して考慮すべき法律として、まず個人情報保護法が挙げられます。
この法律は、一定の形式で管理されている個人情報について第三者への提供を制限しています。ただし、全ての個人情報の利用が規制されるわけではありませんので、注意が必要です。
また、ChatGPTに既存の著作物(小説やソースコードなど)を入力することは、著作権侵害となる可能性があります。
さらに、取引相手の情報を入力する場合には、契約で秘密保持義務を負っている場合はもちろんのこと、契約がない場合でも民法上の不法行為に該当する可能性があることにも注意が必要です。
会社に所属する者が自社のビジネスに関する情報を入力する場合には、組織の規律に違反するだけでなく、組織との関係で民法上の不法行為や債務不履行に該当する可能性もあります。
また、当該組織がその情報を「営業秘密」として管理している場合には、保護を失わせることになるかもしれません。
重要な情報をChatGPTに入力する際や、取引先の秘密情報を入力した事実が取引先に知られることは考えにくいかもしれませんが、関係する法律を把握しておくことは重要です。
ChatGPTは指示を受けて何らかの回答(生成物)を出力するシステムです。
ここでは、指示を入力した利用者が出力された生成物を利用する際に考慮すべき点について整理します。
ただし、現時点ではChatGPT単体の生成物は主に文字情報や簡単な図表に限られているという前提で整理します。ただし、文字情報を利用することでこれらにとどまらない生成物が生まれる可能性もあるため、その点にも注意すべきです。
まず、ChatGPTに質問をしても正確な回答が得られるとは限らず、回答には事実と異なる内容が含まれる可能性があります。
例えば、特定の個人や法人についてChatGPTに質問をし、得られた回答を確認せずに利用すると、当該個人や法人に対する信用毀損や名誉毀損になる可能性があります。
この場合、民法や刑法が関係することがあります。また、内容虚偽の回答を広告などに使用する場合には景品表示法や消費者保護法、業種によっては薬機法なども関係してくるかもしれません。
既存の他の著作物(小説、文章、データベース、プログラム、ロゴなど)に類似する生成物が出力され、それを利用する場合には、著作権法、商標法、不正競争防止法、民法が関連してきます。
さらに、生成物を利用した後に、第三者が当該生成物をそのまま利用したり、改変して利用したりする場合も想定されます。
このような二次利用の場面では、ChatGPTを利用して最初に生成物を作成した者が何らかの請求をすることがあるかもしれません。
この点について考慮する際には、著作権法などの関連法律が重要になります。
生成物には著作権が発生する可能性がありますので、第三者の利用に対して適切な権利を保護するためにも、著作権法に基づいた適切な対応が必要です。
なお、現時点ではChatGPTが生成する情報は主に文字情報や簡単な図表に限られているため、他の知的財産権(特許、商標など)に関連する問題は少ないでしょう。しかし、AI技術の進化により、より複雑な知的財産権に影響を及ぼす可能性もあるため、その点に注意しておくべきです。
さらに、生成物を利用する際には、情報の信頼性や正確性に注意する必要があります。
生成物の回答が事実と異なる場合、誤った情報を広めることで信用毀損や名誉毀損につながる可能性があります。したがって、生成物を利用する際には慎重に確認し、必要ならば専門家の意見を聞くことが重要です。