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アプリマーケットのプラットフォーム事業者が責任を負うか

IT企業のための法律

プラットフォーム事業者に関する責任

アプリマーケットのプラットフォーム事業について、アプリケーション・マーケットで販売等されているアプリの利用に関する契約は、あくまでもアプリ提供事業者とマーケット利用者との間で締結されており、プラットフォーム事業者は、アプリケーション・マーケット を運営してアプリを販売する場を提供しているに過ぎません。

またプラットフォーム事業者とアプリ提供事業者・マーケット利用者との間の契約においても、アプリケーション・マーケット上で販売されているアプリにエラー等があったとしてもプラットフォーム事業者は責任を負わない旨明記されている例もあります。

そのためアプリの不具合に関する責任は、アプリ提供事業者が負い、プラットフォーム事業者は原則として責任を負わないと考えられます。

もっとも、(1)名板貸し責任が生じる場合や、(2)プラットフォーム事業者に不法行為責任が生じる場合、(3)プラットフォーム事業者にマーケット利用者に対するアプリケーションマーケットの利用契約に付随する義務違反が生じる場合には、マーケット利用者は、プラットフォーム事業者に対して、アプリの対価として支払った金員の返還または損害賠償を求めることができる場合もあります。

上記(3)の付随義務違反が生じる場合については、インターネット・オークションサイトに関する裁判例ではあるものの、インターネット・オークションサイト運営事業者の義務につき、「本件利用契約は本件サービスのシステム利用を当然の前提としていることから、本件利用契約における信義則上、被告は原告らを含む利用者に対して、欠陥のないシステムを構築して本件サービスを提供すべき義務を負っているというべきである」と判示した裁判例があります。

利用者に対する責任を負う可能性がある具体例として、アプリ提供事業者によるアプリの説明に虚偽・誇大広告等が多数存在する状態において、プラットフォーム事業者がこれを知りつつ、合理的期間を経過した後もなんら対応せずに放置する場合が挙げられています。

プラットフォーム事業者による任意の返金

上記のとおり、プラットフォーム事業者は、アプリの不具合について責任を負わないというのが原則ですが、プラットフォーム事業者が自主的に返金等を行う場合があります。

たとえば2014年に、いわゆるガチャ(中身がランダムで決まるソーシャルゲームのアイテム課金方式を指す。)において、 高確率で良いアイテムが入手できるようなイラストが描かれていたが、実際には高確率では入手できない仕様となっていたため、ユーザーがプラットフォーム事業者に返金を求め、プラットフォーム事業者がこれに対応したところ、かかる返金の情報がインターネットで広まり、多くのユーザー が返金を求めるに至ったことがあります。

このようなケースでは、プラットフォーム事業者は返金する場合、返金対象のアプリ等の販売について売上が上がっていないという整理をし、アプリ提供事業者に対して売上から手数料を控除した額を支払わないことに なると考えられます。

もっとも、現在の市場において、多くの消費者が利用するアプリケーションマーケットは限られているうえ、アプリケーションマーケットを介さずに消費者に対してアプリの提供を行うことは事実上不可能であることから、プラットフォーム事業者が、返金の負担をアプリ提供事業者に負わせることが独占禁止法上の優越的地位の濫用にあたりうるような場面も生じる可能性があります。

公正取引委員会の実態調査報告書にお いて、優越的地位の濫用に該当するかの判断にあたっては、以下のようにされています。

  1. 返品・返金の受入れによりアプリ提供事業者が負担する損失の内容
  2. アプリ提供事業者に瑕疵がないにもかかわらず、プラットフォーム事業者が返品・返金を受け入れ、それに伴う損失を利用事業者に一方的に負担させていないか 等、返品・返金の受入れに係る基準の合理性の有無
  3. プラットフォーム の利用を継続するために返品・返金に伴う損失を受け入れざるをえないア プリ提供事業者の数等を考慮すること

また、報告書において、取引の公正性・透明性を高め、公正な競争環境を確保するためには、プラットフォーム事業者はどのような場合にどのような条件で返品・返金を行うのかについて書面にて定めておくことが必要であるとされています。