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Al(人工知能)を使って「人事評価」や「従業員の管理をする」場合の法律とは

ロボット・AI・ドローンの法律

人事評価をAIで行ってもいいの?

会社にとっても、従業員にとっても大事な人事評価。

ですが、人事評価は、その評価が非常に曖昧になりがちであり、評価する人の主観によってしまうことが大きいのが難点です。

この点、採用時および採用後に蓄積されたデータを利用して、従業員の人事評価にAIを活用することも期待されています。

人事評価にAIを活用するメリットとしては、採用の場面と同様、上司の属人的な評価ではなく、客観的・公正な評価が可能となることや、膨大なデータを分析・解析できるため、評価項目を拡大し、多面的な評価が可能となる点が挙げられます。

人事評価は、会社に裁量権がある

この点、人事評価については、労働者の労働能力や成績等の多種の要素を総合判断し、その評価も一義的に定量判断が可能なわけではないため、会社に広範な裁量権があると認められています

よって、社会通念上著しく不合理である等の人事権の濫用と認められる場合でなければ違法にはならないとされています。

人事権の濫用となる場面としては、以下のようなものです。

  • 人事考課制度自体が法規定や公序良俗に違反する
  • 人事考課が所定の制度を利用せずにされた、制度に反する場合や、事実に基づかないか
  • 評価の基礎となった事実に誤認がある場合
  • 考慮すべき事項を考慮しない、または考慮すべきでない事項を考慮した場合
  • 不当な目的・動機に基づいた評価を行う場合

しかし、人事権の濫用とされる場合には、かなり限定的とされており、原則会社の自由です。

したがって、従業員の人事評価にAIを活用することは、原則として、会社の人事権の範囲内の行為であると評価できます。

もっとも、事実誤認や考慮すべき事項の優先付けが間違っている等、AIによる分析が間違っていた場合には、人事権の濫用となる可能性もあります。

実際に、AIによる人事評価を採用する場合には、会社にAIによる人事評価を採用していることや、その評価方法を開示・説明する義務はないですが、従業員の納得のためには、従業員に対しその人事評価制度の仕組みを説明するのが望ましいです。

従業員のモニタリングとAl

HRテクノロジーのなかには、ウェアラブルデバイス・ウェアラブルセンサーを活用して、従業員の位置情報、移動・行動情報、脈拍・血圧等のなどのさまざまなデータを計測してデータ化し、あるいはウェアラブルデバイスにカメラを搭載して従業員の視点から見るさまざまな画像・動画を入手しデータ化するものがあります。

これらのデータを組み合わせてAIに解析させることで、各従業員の行動状況や仕事への集中度・関心度・満足度・ストレスの有無等の把握や、各従業員・部署・組織単位でのパフォーマンス分析を行い、人事評価や配属・人材活用、組織活性等に役立てる技術が開発・実施化され、あるいは将来の活用が期待されています。

また、従業員のメンタルヘルスや健康管理の目的で、会社がウェアラブルデバイス等で従業員の健康情報をモニタリングすることも考えられます。

AIを用いたモニタリングと従業員のプライバシー

上記のサービスを活用することは、個人の行動や内心と密接に結びつくため、他人にはみだりに知られたくはないプライバシーに関する情報となり、こうした情報を企業がモニタリングすることがプライバシー権の侵害とならないかが問題となります。

判例では、従業員のプライバシー権は無制約に保障されるものではなく、雇用主が従業員の情報を把握する合理的な必要があり、また、手段が相当であれば、従業員の情報を把握することは許容され、雇用主による監視が、従業員のプライバシー権の侵害とされるのは、監視の目的、手段およびその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較衡量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合であるとされています。

そして、GPS電波を受信することにより、電話会社の提供するナビシステムに接続した携帯電話(子機)の位置を確認することで、子機を携帯する従業員の居場所を会社が常時確認していた事例において、次のような裁判例があります。

  1. 外回りの多い従業員について、その勤務状況を把握し、緊急連絡や事故時の対応のために当該従業員の居場所を確認することを目的
  2. 特定の従業員だけでなく複数の従業員についても、ナビシステムが使用されていることから、当該目的には相応の合理性があり
  3. ナビシステムを使用して従業員の勤務状況を確認していたのが勤務時間帯およびその前後の時間帯であったことも考慮して、ナビシステムによる従業員の位置情報の確認は違法ではないと判断した

一方で、早朝、深夜、休日、退職後のように、従業員に労働時間において、ナビシステムを利用して従業員の居場所を確認することは、特段の必要性のない限り、許されないとし、かかる形態でのナビシステムの利用につき、会社の不法行為を認めています

これらの判例によれば、GPSによる従業員の位置情報の把握は、勤務時間中に実施する限りは基本的にはプライバシー権の侵害には当たらないが、勤務時間外にも監視することは、従業員の私的領域に踏み込むことになり、プライバシー権の侵害となり許されないと考えられます。

AIにより勤怠管理は、従業員の納得感が必要

以上、AIによる従業員の評価、管理などについて解説しましたが、大事なのは、従業員の納得感であると思います。

法律上は、問題なくても、従業員が反発してしまえば、士気の低下、退職など、事業に悪影響が及ぼしかねません。

会社としては、従業員によく説明し、理解を得ることが必要です。