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近年、AIの発達には目覚ましいものがあります。
特に、最近のAIは、自ら作曲をしたり、自ら動画の編集をしたり、
写真を加工するなど、クリエイティブな分野でも、その存在を発揮し始めています。
ここで、問題となるのが、AIが生み出したコンテンツ(創作物)は、著作権法上の「著作物」に当たるのかという問題です。
日本の著作権法上、「著作物」とは以下のように定義(著作権法2条1号)されています。
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
AI(人工知能)が生み出したコンテンツは、どれも特徴的で、「創作性」(オリジナリティ)はあるものばかり。ということは「著作物」といってもいいのではないかとも思えます。
仮に、「著作物」に該当すると、そのコンテンツには、著作権が発生し、無断で利用することはできなくなります。類似のコンテンツを作ったら、著作権侵害になります。
しかし、日本の著作権法では、著作物の定義として、単に「創作性」があるだけでなく、「思想又は感情を創作的に表現したもの」という定義になっています。よって、AI(人工知能)に、「思想や感情」はあるのかということが問題となるのです。
コンピュータを使った創作物が著作物に当たるかというテーマは、従来からなされていました。
文化庁・著作権審議会で1993年に、『著作権審議会第9小委員会(コンピュータ創作物関係)報告書では、「人がコンピュータを道具として使えば著作物たり得る」「創作過程において人の創作的寄与が必要だ」とされました。
つまり、創作物と認められるためには、あくまで人間の関与が必要で、人間が創作しているコンテンツのみが著作物になる、という理解なのです。
上記のような考え方は、日本だけでなく、世界の主流の考え方になっています。
米国でも1978年CONTU報告で、同じような議論(CONTUの最終報告にみる複写複製と著作権問題)がなされていますし、1982年に、ユネスコ・WIPOの勧告でも、上記と方向性の見解が示されています。
もっとも、英国では、1988年には著作権法を改正し、コンピュータ創作物を著作物と認めるという規定を設けました。そして、実際の著作権は、誰が持つのかというと、システムの開発者・運用者となっています。
いずれにしても、上記の見解は、20年前以上のものです。当然、AI(人工知能)が現在のように、発展していない当時の考え方です。
AI(人工知能)が、クリエイティブな「創作物」を量産する時代は、目の前まで来ています。AI(人工知能)の著作権の考え方を、改めて議論する時期に来ているのかもしれません。