何かと話題の3Dデータや、3Dプリンタ。これから、様々な分野で普及していくのが楽しみですね。楽しみな半面、弁護士としては新たな法律問題が気になります。それは知的財産権の問題です。
3Dデータ・3Dプリンタの普及により、正規品だけでなく、模倣品の流通・生産も容易になるこ とが想定されます。そのため、3Dデータ・3Dプリンタを知的財産上、どうやって保護していくかが問題になるのです。
特許権などの知的財産権で保護されている物について、権利者の許諾なくコピーする、頒布することは、当然、知的財産権の侵害行為に該当します。
キャラクターフィギアを勝手に、生産・頒布した場合には、知的財産権の侵害になるわけです。
では、キャラクターフィギアを3Dデータ化し、3Dデータ自体をコピー・頒布する場合は、どうなるのでしょうか?
現在では、3Dプリント技術が進展し、3Dデータから、簡単に生産ができるようになっています。そこで、3Dデータ自体のコピーや頒布についても知的財産権を及ぼすことが必要になっていきます。
例えば、キャラクターフィギアが著作物の場合、勝手にキャラクターフィギアを3Dデータ化し、頒布することは、著作権の一つ権利である「公衆送信権」を侵害すると考えられます。
一方、特許権で保護されている発明品を 3Dデータ化した場合については、どうでしょうか?
特許権が保護しているのは、「物・プログラム」です。3Dデータが「物・プログラム」に該当すれば、3Dデータのコピーや頒布は、特許権侵害の対象となります。
特許法上の「プログラム」は、解釈で以下のようにされています。
「コンピューターに対する直接の指令ではないが、そのデータ自身が有する構造によりコンピューターによる処理内容が規定されるようなもの」が含まれる
3Dデータも、上記に当たれば、特許法上の「プログラム」に当たり、特許法によって、保護されることになるのです。
知的財産権で保護されていない物を基に3Dデータを制作した場合には、3Dデータ自体に、何らかの権利を与える必要はあるのでしょうか?
例えば、 知的財産権で保護されていない物を単純にスキャンして3Dデータ化した場合には、それによって新たな権利が発生することはありません。
一方で、実際にある物をスキャンし、そこに一定の加工を施した3Dデータについては、その加工部分については、創作性(発明)がある可能性があります。創作性が認められるのであれば、著作権法で保護されますし、それが発明といえるものであれば、特許法で保護されることになります。
ただ、上記加工部分について、全てに知的財産権の保護をかけてしまうと、他の人の加工方法の選択肢を狭めることになり、自由なビジネスの発展を阻害するおそれがあります。
この知的財産権保護の重要性と自由なビジネスの促進のバランスをどうとるのかは、従来から問題となってきたテーマでした。
新しい技術に対して、どこまで法的保護を与えるのか。早急に議論する必要があるのです。