SES事業主にとって、労働局の偽装請負に関する調査というのは怖いものです。
正しくやっているつもりなのに、なぜ?と思うかもしれませんが、調査は大きく分けて、定期の調査と申告(いわゆる、通報、タレコミ)による調査によって行われます。
必ずしも、違反があることが前提で行われる訳ではないので、どんな事業者でも調査の対象になる可能性はあります。
では、SES事業を行う会社に調査の通知が来た場合、会社は実際に何をすればよいのでしょうか?
調査が行われる場合の多くは、調査についての詳細を書面で通知する旨の事前の電話連絡があります。
電話連絡後の通知書面には、一般的に以下のような内容が記載されています。
日程については、概ね書面の通知から1ヶ月後くらいが一般的です。
調査当日は、事前に提出した作業者一覧から2、3人分をピックアップし、ピックアップした作業者分の書類をその場で精査します。
ピックアップは、作業者一覧を提出した後に連絡があります。「当日は、○○さんと、××さんと、△△さんの分の書類をご用意ください。」といった形で指定されます。当日資料については後述します。
まず初めに行うことは、全案件の情報の集約です。
普段は、それぞれ担当者が処理しているかと思いますが、上記でも述べたとおり、まず全作業者についてあらかじめ報告しなければなりません。
作業者が多い企業は、一覧を作るだけでも一苦労ですので、対策本部などを立ち上げ、優先的に対応する必要があります。
期限の変更は、特段の事情がない限り認めらないことが一般的です。
期限内に書類の準備ができなかったり、予定日の変更を何度も依頼するなどすると、担当官への心証が悪くなるので、期限は遵守するよう心がけましょう。
一覧の作り方は、通知書に記載がありますので、それを参考に作成します。おもに以下のことを記載します。
クライアント単位ではなく、作業者単位で記載しますので、一つのクライアントに対して複数人従事している場合は、全ての作業者を記載します。
事前書類を提出後、労働局から対象者のピックアップがされます。
ピックアップされた対象者について、事案により変わることもありますが、主に次のような書類を準備しておく様、通知がされます
稀に次のような書類も用意するよう依頼されることもあります。
書類だけではなく、実際に現場はどの様になっていたかの把握も必要です。
実態として偽装請負の状態となってしまっていた場合、書類はしっかりと整備されていたとしても、偽装請負があったと判断されます。
現場の状況を知らなければ、管理の不行き届きを、現場状態を把握しながら違反があった場合には、解決を図らなかったことを指摘されます。
書類の準備をし、実際の状況を確認する中で、絶対にやってはいけないことがあります。
それは、書類を改竄など事実の隠蔽を図ることです。
例えば、調査自体が、通報(いわゆる、タレコミ)により行われていた場合、労働局側があらかじめ関係書類や社内文書などを持っていることがあります。当然、通報であることは明かされないため、改竄や隠蔽をすれば労働局はわかります。
また、調査を行う際には、「反面調査」といって調査対象のクライアントにも同時に調査が入ります。
それぞれに同一の書類を用意させ、事情を聴きとるため、片方に改竄や質問に対する事実の隠蔽などを行えば、もちろん労働局はわかります。
通常、初めての調査では、違反があったとしても、指導書や是正勧告など正しい運用に修正すればお咎めなしといった処分に留まることがほとんどですが、こういった隠蔽工作などを図ると、その悪質性を問われ、初めての調査でも罰金や社名公表などの重い処分が下されることがあります。
また、調査当日は提出書類や実態について質問をされます。その回答に関しても、偽りのないよう誠実に対応することをお勧めします。偽って後に発覚した場合には、より重い処分が下される可能性があります。
自社で対応することはできなくもないですが、隠蔽工作とならないような対策や、実際に是正勧告などを受けて、将来に向かって改善を図っていくためには、やはり、SES事業に詳しい弁護士や社労士への相談、協力を依頼することをお勧めします。
偽装請負の判断には明確な基準はなく、是正の有無や処分の重さは労働局の調査担当官の裁量で決められます。そのため、印象というものも、非常に重要な要素となってきます。
穏便に調査を済ませるためにも、誠実な対応を心掛けるようにしましょう。