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歴代総理が「美少女」に!?「政剣マニフェスティア」は法律上問題ないの?

歴代総理が「美少女」として活躍するゲーム 「政剣マニフェスティア」

総理となって個性豊かな「政霊」たちを指揮し、「戦挙」で「ヤトー」を倒すのだ。こんなゲームが、「政剣マニフェスティア」(http://www.dmm.com/netgame_s/seiken/)(DMM)です。

このゲームの冒頭には、

「このゲームはフィクションです。実在の人物、団体とは関係ありません。ホントに一切関係ありません。ただの美少女が戦うファンタジーです」

と書かれています。

ただ、「政霊」の中には、ヒラリー・イトウ(伊藤博文)、ティアラ・イヌカイ(犬養毅)など、歴代総理の名前をもとにしたと、みられる美少女キャラが多数登場します。このような、過去の総理大臣をもじったキャラクターを登場させても、問題ないのでしょうか?

歴代総理に対する名誉棄損にはならないの?

名誉棄損が成立するためには、一般人からみて、相手の「社会的評価を低下させるもの」である必要があります。

政剣マニフェスティア」は、キャラクターの名前や設定こそ歴代総理をイメージさせるものですが、そのキャラクターは、『美少女』ですし、『政霊』という設定にもなっていて、ストーリーが架空のものであることは、誰の目にも明らかです。

よって、ゲーム内の「政霊」の行動が、実際の歴代総理の行動だと誤解する人はいないので、歴代総理の社会的評価は下がらず、名誉毀損にはあたらないでしょう。

勝手に名前を使われても、何もいえなの?

今回のゲームの「政霊」は、大日本帝国憲法下での歴代総理をモチーフにしています。勝手に名前を使われていることに対して、何も言えないのでしょうか?

考えられるものとしては、パブリシティ権です。

有名人などは、その存在だけで、人を引き付ける力…つまり顧客誘引力があるといわれています。その顧客誘引力は、その有名人が独占するという権利が、パブリシティ権です。

パブリシティ権は最高裁判例でも認められた権利

パブリシティ権は、最高裁判例でも認められた権利です(最高裁平成24年2月2日判決)

パブリシティ権を侵害となれば、損害賠償請求や差止請求をすることができます。実際に、このパブリシティ権に基づいて、著名な詩人の遺族が、詩人の名前を付けた標識はパブリシティ権侵害に当たるとして、使用の差止めを求めた訴訟もあります。

「実在の人物、団体とは関係ありません」と書いてあれば、何でもあり?

今回のゲームでは、「実在の人物、団体とは関係ありません」と記載されています。このような記載をしておけば、存命中の人をモデルにしても大丈夫なのかというと、そうとは限りません。

判例では、フィクション小説であっても、

「不特定多数の読者が小説中の登場人物とモデルとを同定することができ、小説中の登場人物についての記述において、モデルが現実に体験したのと同じ事実が摘示されており、かつ、読者にとって、右の記述が、モデルに関わる現実の事実であるか、作者が創作した虚構の事実であるかを截然と区別することができない場合」

には、名誉毀損に該当するとしています。

よって、存命中の実在の人物をモデルにして、サービスをするには注意が必要です。