システム開発やアプリ開発、AI開発などIT企業の法律・法務に強い弁護士事務所です
グローウィル国際法律事務所
03-6263-0447
10:00~18:00(月~金)

スタートアップが大企業とPoC段階の契約を注意点を解説【2024年5月加筆】

IT企業のための法律

システム開発におけるPoC段階

NDAを締結し、スタートアップから開示された情報を踏まえて検討したところ、技術検証に進むこととなった場合に締結する、技術検証契約(ProofofConcept。以下「PoC」という。)をスタートアップと締結する場合の留意点を検討します。

スタートアップがPoCで行うべき事項~準委任型の採用~

PoCを行う場合、どこまでを検証作業とするか、という点が問題となる。

そもそもPoCが共同研究開発に移行するか否かを検討する段階であり、PoCを長期にわたって行うことは双方にメリットがないことも踏まえれば、PoCにおいてスタートアップは検証作業を行う義務を負うこととして(準委任型)、一定の成果物の納入義務を負わせる形(請負型)にはすべきではない場合が多いといえます。

例えば、経済産業省・特許庁より公開されたモデル契約書(新素材分野)においては、以下のように定められている(PoC契約2条及び3条)。

※甲=スタートアップ、乙=大企業

第2条 本契約において使用される次に掲げる用語は、各々次に定義する意味を有する

1 本検証

第1条に定める甲の技術導入・適用に関する検証をいい、具体的な作業内容は別紙●●に定めるところとする。

第3条 乙は、甲に対し、本検証の実施を依頼し、甲はこれを引き受ける。

2 甲は、本契約締結後3週間以内に、乙に本報告書を提供する。

3 本報告書提供後、乙が、甲に対し、本報告書を確認した旨を通知した時、または、乙から書面で具体的な理由を明示して異議を述べることなく1週間が経過した時に乙による本報告書の確認が完了したものとする。本報告書の確認が完了した時点をもって、甲による本検証にかかる義務の履行は完了するものとする。

4 乙は、甲に対し、本報告書提出後1週間が経過するまでの間に前項の異議を述べた場合に限り、本報告書の修正を求めることができる。

5 前項に基づき、乙が本報告書の修正を請求した場合、甲は、速やかにこれを修正して提出し、乙は、提出後の本報告書につき再度確認を行う。再確認については、本条第3項および4項を準用する。

また、例えばAI分野におけるオープンイノベーションのように、情報等を委託者側から受領できなければ検証に着手できない場合があります。このような場合に、情報等が提供されないままに時間が過ぎ、検証の期限を経過してしまうということを避けるべく、情報等の受領がない限り検証に着手する義務が発生しないように定めておくことも考えられます。

例えば、経済産業省・特許庁より公開されたモデル契約書においては、以下のように定められています。

※甲=スタートアップ、乙=大企業

第3条乙は、甲に対し、本検証の実施を依頼し、甲はこれを引き受ける。

2 乙は、甲に対し、対象データを本契約締結後●日以内に提供する。甲は、受領したデータを確認した上で、乙に対しその旨を速やかに通知する。

3 甲は、前項の通知が乙に到達した後●日以内に、乙に対し、本報告書を提供する。

委託料の設定

上述のように、スタートアップは、VC等の投資家から、短期間の間に資金調達を繰り返していくが、各資金調達の合間に食いつなぐために、PoCについて、大企業に比して限られたリソースを投入し工数をかけた場合には、その分の対価を受領しなければ、資金繰りが極めて苦しくなってしまいます。

そこで、PoCについても、検証作業への対価の支払いを行うことが望ましいといえます。

経済産業省・特許庁より公開されたモデル契約書においては、以下のように定められています。

※甲=スタートアップ、乙=大企業

第4条 本検証の委託料は●万円(税別)とし、本契約締結時から10営業日以内に全額を、甲が指定する金融機関の口座に振込送金する方法により支払うものとする。振込手数料は乙の負担とする。

なお、対価の相当性と関連して、スタートアップとして共同研究開発に進む確度が高いPoCであると判断する場合には、PoCの実施を優先し、PoC段階ではあえて低額な委託料として連携事業者との交渉のスピードを確保するという方針もあり得るため、共同研究契約が締結されなかった場合に、PoC費用の追加分の支払義務を規定することを条件に、PoC段階の対価を安く設定することの合理性を肯定することも考えられます。

また検証作業がいつまでも終わらないという事態を回避するべく、終了の期限及び条件を明記することが考えられます。

成果物の取扱い

技術検証に伴い、新たな知的財産権が生じることがありえます。

この知的財産権の帰属について、その都度協議とすると、共同研究開発といういわば本番の前段階であるPoCで無駄に時間を要することになりかねません。

そのため、PoCはあくまで検証段階であり、事業にとってクリティカルな発明が生まれる可能性はさほど高くないことや、検証作業を行う主体がほとんどスタートアップ等といった事情がある場合には、検証作業の遂行に伴って新たに生じた成果物に関する知的財産権はスタートアップに単独帰属させてしまうことも検討が必要です。

※甲=スタートアップ、乙=大企業

第9条 本報告書および本検証遂行に伴い生じた知的財産権は、乙または第三者が従前から保有しているものを除き、甲に帰属するものとする。

2 甲は、乙に対し、乙が本検証の遂行の目的のために必要な範囲に限って、乙自身が本報告書を使用、複製および改変することを許諾するものとし、著作者人格権を行使しないものとする。

次段階への移行期限

NDAの場合と同様、スタートアップは、ある大企業との間で協業が(少なくとも相当期間内に)実現不可能ということになれば、早期に別の大企業との協業に進みたいという実情があります。

そこで、PoCの結果報告後、次段階に進むか否かを決定する期限を設定することが考えられます。例えば、経済産業省・特許庁より公開されたモデル契約書(新素材分野)においては、以下のように定められています。

※甲=スタートアップ、乙=大企業

第6条 甲および乙は、本検証から研究開発段階への移行および共同研究開発契約の締結に向けて最大限努力し、乙は、本契約第3条第3項に定める本報告書の確認が完了した日から2ヶ月以内に、甲に対して共同研究開発契約を締結するか否かを通知するものとする。