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私的メールをしていると思われる従業員のパソコンをモニタリングしてもいいのか?【2024年2月加筆】
会社は、従業員のパソコンをモニタリングできるのか?
自社の従業員が、私用メールをしているようで仕事に集中していない!会社で、従業員のパソコンをチェックしてみよう!このようなときに、会社が従業員への社内メールなどのモニタリングをすることはできるのでしょうか?
社内メールは、会社のネットワークを使用するものなので、モニタリング自体は可能ではないかとも思われます。しかし、送受信するメールは、第三者が閲覧することを想定しておらず、そこにはプライバシーの問題が生じます。
そこで、どのような場合に、従業員のメールをモニタリングをすることができるのでしょうか?
メールのモニタリングは認められる
この点で、裁判例(平成13年12月3日 東京地裁判決)では、以下のようなものがあります。
従業員が社内ネットワークシステムを用いて電子メールを私的に利用する場合に期待し得るプライバシー保護の範囲は、通常の電話装置における場合よりも相当程度低減されることを甘受すべきであり…
監視の目的、手段及びその態様等を総合考慮し、監視される側に生じた不利益とを比較考量の上、社会通念上相当な範囲を逸脱した監視がなされた場合に限り、プライバシー権の侵害となる
会社貸与のパソコンでは、「社会通念上相当な範囲であれば」メールのモニタリングを認める傾向にあるといえます。
また、個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドラインでも、会社が私用メールのモニタリングをすることを認めています。
このように、会社が社内メールをモニタリングすることは適法ですが、従業員のプライバシーの問題もあり、どのような方法でも認められるわけではありません。
メールのモニタリングが違法になる場合とは
会社によるメールのモニタリングが違法になる場合として、前述の裁判例(平成13年12月3日 東京地裁判決)は、以下の場合を示しています。
- 従業員の電子メールの私的利用を監視するような立場にはない(経営者層ではない)者が監視した場合
- 仮に、責任ある立場にある者の監視でも、監視する合理的理由がない場合(個人的好奇心からモニタリングして場合)
- モニタリングの事実を隠したまま、監視した場合
個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドラインでは、メールをモニタリングする際に、次の点に留意するべきとしています。
- モニタリングの目的,すなわち取得する個人情報の利用目的をあらかじめ特定し,社内規程に定めるとともに,従業者に明示すること
- モニタリングの実施に関する責任者とその権限を定めること
- モニタリングを実施する場合には,あらかじめモニタリングの実施について定めた社内規程案を策定するものとし,事前に社内に徹底すること
- モニタリングの実施状況については,適正に行われているか監査又は確認を行うこと
メールモニタリングする場合には、その実施方法について、ルールを定めるとともに、それを従業員に周知しておくことが必要だということが分かります。
私的メールが見つかった場合に、従業員を処分することができますか?
従業員が私的メールをすることについては、従業員の職務専念義務及び会社の施設利用権との関係で問題になります。
前述の裁判例(平成13年12月3日 東京地裁判決)では「会社における職務の遂行の妨げとならず、会社の経済的負担も極めて軽微なものである場合には、これらの外部からの連絡に適宜即応するために必要かつ合理的な限度の範囲内において」は私的メールについても許されるとしています。
一方で、日経クイック情報(電子メール)事件(東京地裁平成14年 2月26日判決)では、勤務時間中の私用メールについて「文書を考え作成し、送信することにより、送信者がその間職務専念義務に違反し、かつ、私用で会社の施設を利用するという企業秩序違反行為を行うことになる」と判示しました。
上記からいえることは、一定程度の私的メールは許されるが、限度を超えたものであると、懲戒処分の対象になるということです。
限度を超えた私的メールで、どの程度の懲戒処分が可能か
では、限度を超えた私的メールで、どの程度の懲戒処分が可能なのでしょうか?
福岡高裁平成17年 9月14日判決の事案が参考になります。この事件では、専門学校に教師として雇用されていた従業員が,勤務中に職場のパソコンを利用して,いわゆる出会い系サイトに登録し、大量の私用メールのやり取りを続けていたなどとして懲戒解雇され、その懲戒解雇の有効性が問題になった事案です。
この事件では、受信記録は1650件、送信記録1330件のうち、出会い系サイトへの受送信分が各800件以上であり、その半数が就業時間内に行われていたというもので、私用メールは,学校の服務規則に定める職責の遂行に専念すべき義務等に著しく反し,その程度も相当に重いものというほかない。として、懲戒解雇を有効としました。
一方、東京地裁平成19年6月22日判決では、6か月間、就業時間中に1700通の私的メールを行っていた事案で、会社が行った解雇を無効としました。
裁判所としては「通常の限度をはるかに超える」としながら、訴訟に至るまで、従業員に会社が指摘したことがなく、問題視されてこなかったことが、その理由とされました。
さらに、東京地裁平成19年9月18日判決では、1が月に2~3通の私的メールを送った事案で、解雇を無効としました。
以上の裁判例によると、私的メールで懲戒処分をする場合には、
- 会社として、私的メールの禁止を徹底してたか
- 私的メールの内容、回数が限度を超えたものか
などを考慮する必要があります。
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