医療機関のホームページも法律的規制の対象に
これまで、医療機関のホームページは、医療法上の広告規制の対象外とされてきました。
しかし、2017年の医療法の改正で、医療機関のホームページも、医療法上の「広告」とされ、広告規制が課されることになりました。
医療機関のホームページはこれまで、患者自身が検索して初めて閲覧できるものなので、医療法の「広告」には該当しないとされてきました。
しかし、美容医療系のホームページをめぐって、消費者との間で、トラブルが絶えないことから、医療法を改正し、医療機関のホームページを広告に含めることになったのです。
それでは、医療機関としては、ホームページの表記として、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか。
医療機関ホームページで注意するべきポイントとは
医療機関のホームページで記載できる広告の範囲としては、2017年11月29日「第7回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」が行われました。
その中で、医療法改正に伴うホームページの記載として、新ガイドライン案が了承されました。
新ガイドライン(案)
医療機関のホームページとして広告可能な表現とは
医療機関のホームページとして、広告可能な表現は、医療法6条の5に記載されている表現に限定されています。
また、その具体的な広告可能な表現は、ガイドライン「医業、歯科医業若しくは助産師の業務又は病院、診療所若しくは助産所に関して広告することができる事項」に記載されています。
このガイドラインの中では、以下のような客観的な評価が可能であり、かつ事後の検証が可能な事項に限定されています。
- 医師の経歴・専門性の認定
- 診療報酬点数等の算定方法
- 病院の手術数・患者数
医療機関のホームページとして広告禁止されている表現とは
内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)
当然といえば、当然ですが、ホームページ上で虚偽の情報を掲載してはいけません。また、意図的でなくても、結果的に虚偽になってしまうような表現も禁止されています。
- 「どんなに難しい症例でも必ず成功します」
→絶対安全な手術等は、あり得ないので、このような表現は、虚偽広告として扱うとされています。
- 「一日で全ての治療が終了します(治療後も定期的なメンテナンスが必要にも関わらず)」
→治療後の定期的なメンテナンスが必要であるにもかかわらず、全ての治療が一日で終了するといった表現は、内容が虚偽広告として取り扱うとされています。
- 「○%の満足度」(調査方法の提示がないもの)
→具体的な調査の方法等を明確にせずに、データの結果のみを示す場合には、虚偽広告として取り扱うべきであると明示しました。
- 加工・修正した術前術後の写真等の掲載
→加工・修正した術前術後の写真については、虚偽広告として取り扱うべきであるとされています。
他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(比較優良広告)
他の病院と自らの病院を比較して、自らの病院が優れているような広告をすることは禁止されています。また、「日本一」「No.1」「最高」などの表現も、禁止とされています。
何かで日本一になったなどの客観的な事実を記載すること自体は禁止されていませんが、その場合には、出典、調査の実施主体、調査の範囲、実施時期等を併記する必要があります。
誇大な広告(誇大広告)
事実よりもおおげさに言ったり、いわゆる「盛った」表現は、アウトになります。
- 知事の許可を取得した病院です!
→病院が都道府県知事の許可を得て開設することは、法における義務であり、当たり前の条件に過ぎないにも関わらず、ことさらに強調する場合
- 顔面の○○術1カ所○○円(表示された値段は5カ所以上の同時に実施したときの費用であり、1カ所のみの場合等には、その横のみ、小さな文字で注釈が付されていた場合)
→消費者が、見落とす可能性があるので、誇大広告に当たるとされています。
- 顔面の○○術1カ所○○円(表示された値段は5カ所以上の同時に実施したときの費用であり、1カ所のみの場合等には、その横のみ、小さな文字で注釈が付されていた場合)
→これは、消費者が、見落とす可能性があるので、誇大広告に当たるとされています。
- 「○○センター」(医療機関の名称又は医療機関の名称と併記して掲載される名称)
→医療機関の広告に、「○○センター」と掲載することは、法令の規定又は都道府県等が認める場合に限られ、それ以外で記載する場合には、誇大広告となるとししています。
- 撮影条件や被写体の状態を変えるなどして撮影した術前術後の写真等をウェブサイトに掲載
品位を損ねる内容の広告
費用を強調した広告
他の業種では当たり前に行われている「費用を強調した広告」ですが、医療機関の広告ではNGとされています。
- 期間限定で○○療法を50%オフで提供しています
- ○○100,000円のところを50,000円
- ○○治療し放題プラン
景品プレゼントなどを強調した広告
- 「無料相談をされた方全員に○○をプレゼント」
→物品を贈呈する旨等を誇張することは、提供される医療の内容とは直接関係のない事項として扱われます。
広告可能な範囲を広げるための要件
前述のように、医療機関の広告については、広告可能な表現の範囲が決まっています。
しかし、以下の要件を全て満たす場合には、広告可能な表現の範囲を超えて、記載することができます。
- 医療に関する適切な選択に資する情報であって、患者が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告である場合
- ウェブサイト等に、問い合わせ先が記載されていること
- 自由診療について情報を提供する場合には、次に掲げる事項を記載していること
- 通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項
- 治療等のリスク、副作用等に関する事項
もっとも、例外要件に該当したとしても、上記の「医療機関のホームページとして広告禁止されている表現」は、記載することができません。
医療機関の広告は、法律上の注意が必要
以上のように、医療機関の広告・ホームページは、非常に詳細な規制があります。
厚生労働省の新ガイドライン(案)は、33頁にも及んでいます。医療機関は、きちんとルールを把握し、運用するようにしましょう。