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インダストリー4.0時代のデータの取り扱い注意点【IOTと法律】

ロボット・AI・ドローンの法律

インダストリー4.0時代がやってきた

インダストリー4.0とは、2011年にドイツが提唱した製造業の第四次産業革命のこと。
その本質は、製造業のデジタル化です。

考える機械、倉庫、製造設備が自動的に情報交換しながら、自律的に作動するといった考える工場とも言うべきものです。

インダストリー4.0では、サプライチェーンを構成する複数企業が部品原材料の状況や製造状況をリアルタイムに把握することが想定されています。

そうすると必要になってくるのが、複数の企業間でのデータの共有についての取り決めです。

企業が自分で集めたデータを自分のものと考えるのは当然のことです。

しかし、現行の法律制度では、データという形のないものについては所有権は認められていません。

そうするとインダストリー4.0で、生み出されるデータの帰属を決める場合には企業間でデータの取り扱いについての契約で決めることになるのです。

経済産業省の契約書ガイドライン

当社間の契約である以上データの取り扱いについてどのように決めるかについては基本的に自由です。

企業としてはデータ関する契約書についてどのような項目を検討すべきかを検討し、抜けがない注意しなければなりません。この点、経済産業省の2015年10月に発表された「データに関する取引の推進を目的とした契約書ガイドライン(PDF)」が参考になります。

インダストリー4.0との関係で検討すべきなのは以下の通りです。

データの内容、提供方法、仕様

契約の対象となるデータの内容を明確することが望ましい事は言うまでもありません。

しかし、インダストリー4.0では多種多様なデータが扱われることになります。対象の仕方についてはまた後々トラブルにならないようにしっかりと特定することが必要です。

検討項目

  • 提供、許諾の対象となるデータの内容、量、項目は網羅されているか
  • データの粒度、更新頻度等は適切に定められているか
  • 紙、電子ファイル(ファイル形式の指定を含む)等、データの適切な提供形式は 特定されているか
  • 電子メールや API 等、データの適切な提供方法は特定されているか
  • データ提供者によるデータの提供形式や仕様の変更は随時可能か(可能な場合 は、データ受領者への事前通知を必須にする等その条件は定められているか)

利用範囲、取り扱い条件

利用範囲についても明確にすることが望ましい事は間違いありませんが、インダストリー4.0については、想定外のイノベーションが起こることも考えられます。

利用範囲の取り決めについては柔軟な対応が必要でしょう。

例えば想定外のことについては当事者で協議するなどの条項を入れる、具体的な取り決めの仕方を決めておくことが必要になります。

検討項目

  • データの提供形態が、データの使用許諾か、データの売買か、共同利用(相互の 使用許諾)かといった形で、明確に定められているか
  • データの使用許諾の場合、許諾対象となるデータを使用できる者は適切な範囲に 特定されているか(データにアクセスできるデータ受領者側の関係者に制限はあ るか、第三者への再許諾を認めるのか等)

データに知的財産権認められる場合の権利者の特定

あるデータに知的財産権が認められる場合、誰に権利が帰属するのかを決めておく必要があります。

データ提供者の義務

データの内容に関する保証やデータ提供時の責任範囲などを取り決めておく必要があります。

なお、個人情報や匿名加工情報については個人情報保護法で提供者に対し、各種の義務を課していることに注意が必要です。例えば記録の保存義務や個人情報の安全管理措置をとる義務です。

【匿名加工情報】改正個人情報保護法の改正における「ビッグデータ」活用のポイント

データついて共通認識を反映させた契約書の整理が必要

インダストリー4.0は、複数の事業所が絡み合って、成り立っています。

そこでは、データについて誰に帰属するかを明確にしておくことが、後々のトラブルを防ぐことになるのです。