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ポイントサービスの導入方法ごとに注意すべき法律【解説】(2022年11月加筆)

課金サービスに必要な法律

ポイントサービスについての法律

企業にとっては、ポイントサービスは、非常に有用なものです。弊社にも、ポイントサービスについての法律相談がたくさん頂いております。

そこで、ポイントサービスの導入方法を4つピックアップをして、法律面で、どのようなことに注意する必要があるかを解説していきたいと思います。

今回は、最新事例も交えて、解説していきます。

ポイントサービスで資金決済法に基づく登録等を行う必要がある場合とは

ポイントサービスを行う場合には、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当すると、登録等をする必要があります。

これに対し、「前払式支払手段」とは、以下の要件をすべて備えているものをいいます。

  1. 金額等の財産的価値が記載または記録されていること(価値情報の保存)
  2. 金額または数量等に応ずる対価を得て発行される証票等、番号、記号その他の符号であること(対価発行)
  3. 対価の弁済等に使用されること(権利行使)

無償発行ポイント

例えば、消費者が商品を買ったおまけとして無償で付与される無償ポイントは、上記の「対価発行」の要件を満たさないため、資金決済法上の許可は必要ありません

無償発行ポイントについては、法律上の規制はありませんが、ポイント発行の注意点などについては、以下のガイドラインが定められていますので、参照してください。

日本インターネットポイント協議会・ガイドライン

1)共通ポイントサービスの法律

共通ポイントサービスとは、特定の事業者が発行するポイントについて、他の事業者が提供する商品やサービスに利用することのできるサービスです。例えば、ガソリンスタンドの利用で付与されたポイントAを飲食店の食事代に利用できるようなサービスです。

共通ポイントサービスは、ポイント発行者が、各事業者に対して、業務提携契約を締結することによって、成立します。

具体的には、ポイント発行者と提携する事業者は、ポイントを付与された場合には、ポイント原資をポイント発行者に負担し、ポイントが利用された場合には利用されたポイント相当額をポイント発行者から受け取る契約が締結されることが一般的です。

共通ポイントの場合、自社のみで発行するポイントと異なり、ポイント提携企業との関係を踏まえたポイントの管理が必要となります。

そのため、ポイント発行者として重要なことは、以下の点を検討することです。

  • ポイント原資やポイント精算金の支払いを含めた対応の検討
  • ポイントが利用された売買契約などが何らかの理由で取り消された場合などの対応

ポイント提携企業としては、ポイント発行者との契約内容を踏まえ、金銭のやり取りの精算タイミングはどのようなものか、トラブルがあった場合の処理はどのようなものか等について確認する必要があります。

2)ポイント交換サービスの法律

現在、多くの企業がポイントを発行しており、また、①ポイントとポイントの交換、②前払式支払手段とポイントの交換、③電子マネーとポイントの交換などポイント同士の交換なども多く行われています。

このようなポイント交換サービスについては、法律的に、どのようなことに注意する必要があるのでしょうか。

ポイントとポイントの交換

景品やおまけとして発行されたポイント同士を交換する場合について、法律的な規制はかかるのでしょうか。無償ポイントを交換することが、対価発行といえるのかが問題になります。

ポイントにも、対価性があるとする見方もありますが、現状では、行政も規制しているところはありません。現状では、無償ポイント同士の交換は、問題ないとされています。

前払式支払手段とポイントの交換

利用者がA社から無償で付与を受けたポイントを用いて、B社が発行する電子マネー(前払式支払手段)の発行を受ける場合は、A社のポイントは、「前払式支払手段」になるのでしょうか?

この場合には、新たに発行を受けるB社の電子マネーが「前払式支払手段」であっても、A社がポイントを付与するにあたって利用者から対価を得ていなければ、A社が付与するポイントに対価性はないといえます。

したがって、A社が付与するポイントは、前払式支払手段に該当しないと考えられます。

3)B社が発行する電子マネーを用いてA社からポイントの付与を受ける場合の法律

この場合、A社は、利用者に対し、B社が発行する電子マネーという対価を得て、ポイントを付与していますので、A社が付与するポイントは、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当することになります。

4)ポイントの利用履歴を利用するサービスの法律

ポイント履歴は、利用者の行動履歴としては、非常に有用です。このようなポイント履歴を活用する場合に、何か注意点はあるのでしょうか。

匿名加工情報

個人情報を第三者に提供する場合には、一定の例外に該当する場合を除き、利用者本人の同意を取得することが求められます。

この点に関し、個人情報保護法が改正され、個人情報を匿名化することに関するルール(「匿名加工情報」ルール)が整備されています。

このルールは、いわゆるビッグデータの利活用を目的として導入されたものであり、Fintech関連のビジネスにおいても活用できる可能性があります。

「匿名加工情報」とは、個人情報に対して一定の措置を講じて特定の個人を分からないように個人情報を加工した情報です。この匿名加工情報については、本人の同意なしに進めることができるのです。

そのため、個人情報を活用した広告サービスなどを実施するに際しては、かかる個人情報保護法上の制約を考慮した上で検討を進めることが必要です。

匿名加工情報を扱う事業者は、以下のことを定める必要があります。

適正加工義務

匿名加工情報を第三者に提供しようとするときに、事業者が遵守しなければならないことがあります。

「匿名加工情報」を作成するときは、個人情報保護員会の定める基準に従い、当該個人情報を加工しなければならないとされています。この「個人情報保護員会の定める基準」というのは、ガイドライン等が以下のように定められています。

  • 特定の個人を識別することとなる項目を削除すること
  • 詳細な項目を一定のまとまりや区分に置き換えること
  • 作成の元となる個人情報と個別に関連付けられるID等の識別子を削除すること
  • 匿名加工情報データベース等に含まれる複数者間のデータの値を入れ替えること
  • 分析対象のデータに一定の誤差(ノイズ)を付加すること
  • 分析対象のデータの平均から大きく乖離するデータ群をまとめること

まだまだあるのですが、要するに、個人情報から、個人が特定できる情報を抜いたり、ぼかしたりしてくださいということです。

この「匿名加工」が、公表されている規定に沿っておらず、個人を特定できる情報が残ってしまうとなると、個人情報の漏えいと認定されかねないので、ガイドラインの情報を参考に、慎重に加工するようにしましょう。

公表義務

事業者は、匿名加工情報を作成した後、遅滞なく、インターネットの利用その他の適切な方法により、当該匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目を公表をしなければならないと規定されました。

よって「匿名加工情報」を作成した後は、自社のホームページなどに、もともと含まれていた個人情報の項目(「氏名」、「住所」など)を記載して公表する必要があるのです。

第三者提供時の公表・明示義務

事業者は、匿名加工情報を第三者に提供するときは、以下の条件を満たすことが義務付けられています。

  • インターネットの利用その他の適切な方法により、あらかじめ、第三者に提供される匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目及びその提供の方法について公表
  • その第三者に対して、電子メールを送信する方法又は書面を交付する方法その他の適切な方法により、当該提供に係る情報が匿名加工情報である旨を明示

後から、個人情報保護委員会から検査されたときに、きちんと守っていることを証明するためにも、メールなどのデータは、保存しておくようにしましょう。