IT法務・AI・暗号資産ブロックチェーンNFT・web3の法律に詳しい弁護士|中野秀俊
グローウィル国際法律事務所
03-6263-0447
10:00~18:00(月~金)

ライブ配信での投げ銭サービスは資金決済法の資金移動業に該当する可能性あり!回避法は?【2021年12月加筆】

課金サービスに必要な法律

投げ銭サービスが、流行している

最近、ライブ配信サービスが流行っています。代表的なものが、SHOWROOM17 Live (イチナナ)などがあります。

このライブ配信の特徴は、投げ銭サービスです。
視聴者は、あらかじめ、事業者からアイテムを購入し、配信者にプレゼントすることができるという仕組みです。

しかし、この投げ銭サービスは、法律上、問題が起こる可能性があります。

【資金移動業の改正案が国会に提出されています】
資金移動業の法律が変わる!資金決済法の改正案を弁護士が解説!

この法律案が、2020年6月5日に成立しています。

資金移動業の問題

投げ銭サービスを行う場合には、資金決済法上の「資金移動業」に該当する可能性があります。

今年の2月には、Web上で他のユーザーに100円単位で寄付金を送れる“投げ銭サービス”「Osushi」について、7時間後にサービスを停止しました。

投げ銭サービス「Osushi」、不備で炎上 公開7時間後に一時休止

これは、投げ銭サービスの仕組みが、資金決済法の資金移動業に該当するのではないかという指摘を受けてのものでした。では、どういった場合に、資金移動業に該当するのでしょうか。

資金移動業に該当するかどうかは、「為替取引」に該当するかどうかで決まります。

判例上、為替取引とは「隔地者間で直接現金を輸送せず に資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行すること」とされています。

つまり、AさんとBさんがいて、両者間で、現金をやり取りするサービスを提供している事業者がいたとすると、その事業者は「為替取引」に該当し、資金移動業の登録が必要になるのです。

いわゆる投げ銭サービスとは、まさに、この「為替取引」に当たる可能性があります。「為替取引」に該当すると、資金移動業の登録が必要になるのです。

資金移動業に該当すると、どうなるのか

このような為替取引に該当する場合には、資金決済法上の資金移動業の登録を行う必要があります。

資金移動業の登録ですが、申請書類も多く、審査のハードルは非常に高いです。

また、資金移動業者として運営していくためには、以下の点を遵守する必要があります。

  1. 送金サービスで受領した金額の100%以上の額の供託義務
  2. 本人確認義務

①については、それなりの資本力が必要になりますし、②については、サービスのユーザからすると、非常に面倒な手続きになるので、サービス自体が成り立たなくなる可能性があります。

そこで、特にスタートアップ・ベンチャー企業にとっては、投げ銭サービスをする際に、いかに資金移動業に該当しないようにするかがポイントになるのです。

資金移動業に該当しないサービス

このように、資金移動業を回避するために、既存のサービスはどうしているのでしょうか。

これに関しては、「Osushi」騒動にみる個人間送金・割り勘・投げ銭サービスの法律【paymo・Kyashとの比較】で、解説していますが、改めてみていきましょう。

paymoについて

割り勘アプリとして有名なpaymoですが、決済(収納)代行という形を取っています。

決済(収納)代行とは、お金を渡したい人からお金を預かり、お金を渡したい人の代わりに、お金を受け取りたい人にお金を渡すことを言います。

お金の流れは「資金移動業」と変わらないのですが、ポイントとしては、事業者は、単に資金を移動しているのではなく「お金を渡したい人の代わりに」という点です。

コンビニで公共料金を支払えますが、これが決済代行です。

この決済代行は、事業者は、あくまで支払うことを代行という形なので、何かしらの「支払い」が必要になります。

そのため、paymoでは、お金を渡したい人、お金を受け取りたい人の両者間で「支払」が発生しているのを証明してもらうために、レシートの添付を必要としているのです。

割り勘アプリの法律については「個人間送金・割り勘アプリで注意するべき法律をIT専門の弁護士が解説」の記事も参考にしてください。

Kyashについて

Kyashは「ポイントのやり取り」というスキームです。ユーザは、事業者にお金を払い「Kyashカード」にその金額が入金されます。

その「Kyashカード」に入金された金額で、ユーザは、お金のやり取りができるというものです。

分かりやすくいうと、ユーザは、Kyashサービス内で使えるポイントを購入し、そのポイントで、やり取りするという形を取っているのです。

これは、サービス内のポイントが移動しているだけなので、資金移動業には該当しません。ただし、ユーザにポイントを購入してもらうため、資金決済法上の「前払式支払手段」には該当します

このスキームの弱点は、「Kyashカード」の残高を現金化できないことです。資金決済法上、ポイントの払い戻しは禁止されています。

【資金決済法】仮想通貨・ポイントは、原則払戻しが禁止~払戻しができる場合とは~

Kyash利用規約でも、次のように規定されています。

弊社は、資金決済法に基づき、Kyash残高を払戻しいたしません。そのため、ユーザーは、弊社によるカード廃止の場合又は法令に基づき払戻しが行われる場合を除き、Kyash残高の払戻しを受けることはできません。

では、Kyashカードのポイントについて、ユーザは、どうするのでしょうか。

Kyashでは、Kyashカードの残高を、amazonや楽天での買い物に使用できたり、モバイルSuicaやStarbucks Cardなどのプリペイドカードにチャージをできたりという対応をしています。

つまり、kyashは、以下の項目で資金決済法を回避しています。

  • ポイント(バーチャルコンテンツ)を有償で購入すること
  • 現金ではなく、あくまでポイント(バーチャルコンテンツ)を送っていること
  • ポイント(バーチャルコンテンツ)の現金化はできないこと(購入者も受領者もできないことが必要です)

SHOWROOMの投げ銭サービス

動画サービスのSHOWROOMも、投げ銭システムを採用しています。ユーザが、アイテムを購入し、これを動画を上げている人に贈るというシステムです。

しかし、SHOWROOMは、資金移動業の登録をしていません。では、どうやって、このシステムを実現しているのでしょうか。

SHOWROOMのシステム

SHOWROOMでは、投げ銭をしようとするユーザが、「ShowGold」を購入します。

「ShowGold」は、SHOWROOM内でライブ配信者に投げ銭する際に必要となるアイテムを購入する際に利用できるものです。

このShowGoldは、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当しするため、SHOWROOMは、前払式支払手段の届出をしています。

SHOWROOM 会員規約「第11条 Show Gold」でも、以下のように記載されています。

SHOWROOM 会員は、当社が特に認めた場合を除き、Show Gold 及びコンテンツの使用権を他の SHOWROOM 会員その他第三者に使用させ、または貸与、譲渡、売買、質入等をすることはできないものとします

HOWROOM 会員は、当社が特に認めた場合を除き、Show Gold の払戻し、または Show Gold と当社の指定するコンテンツ以外のコンテンツとの交換を求めることはできないものとします

SHOWROOMの分配金システム

では、ライブ配信者に対しては、どのようにお金が分配されているのでしょうか。法律上は「ShowGold」を換金することはできません。

SHOWROOMは、会員規約などで、以下の点を定めています。

  • 視聴者数、コメント投稿、デジタルコンテンツの使用実績等に基づいて、SHOWROOMが独自に定める方法によって各ライブストリーミング配信を評価し、配信者に評価ポイントを付与すること
  • 評価ポイント1ポイントにつき1円を配信者に分配金として支払うことができること

そして、評価ポイントの算定方法、分配方法の支払方法はSHOWROOMが自由に定められる旨も規定されています。

つまり、SHOWROOMは、ポイントやアイテムを換金するのではなく、SHOWROOMが独自に算定して評価ポイントを付与し、会社自身が投稿者に対して、分配金を支払うというシステムになります。

ユーザが買ったポイントなどが移動し、それを換金できるシステムではないので、資金移動業には該当しないということになるのです。

投げ銭サービスは、資金移動業に気をつけましょう

上記のように、投げ銭サービスは、資金移動業などの法律に気を付ける必要があります。

どうやって法律に抵触しないようにするのかを気を付けて、事業者は運営する必要があるのです。