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セミナー集客・販売における法律上の注意点とリスク

日本国内でセミナー(オンライン・オフライン問わず)を活用して商品・サービスを集客・販売する際には、特定商取引法や景品表示法、金融商品取引法、個人情報保護法、著作権法など様々な法律が関係します​。経営者や事業責任者は、これらの法律を正しく理解し遵守しなければ、行政処分や刑事罰といった重大なリスクを負う可能性があります​。

目次

セミナー販売に適用される主な法律

セミナーで商品・サービスを販売・契約する場合、以下のような主要な法律が適用されます。それぞれ概要とセミナー実施時に押さえるべきポイントを確認しましょう(**「特商法 セミナー」や「オンラインセミナー 個人情報」**なども関連キーワードです)。

特定商取引法(特商法)

特定商取引法は、BtoC取引に関して適用される法律で、訪問販売や通信販売など消費者トラブルが生じやすい取引を規制する法律です​。セミナー会場で商品を契約させる行為は、店舗外での勧誘という点で訪問販売に該当します。

特商法では以下のようなルールが定められています。

①事前の勧誘目的の明示

セミナーに勧誘する段階で、販売目的を隠して誘う(目的隠匿勧誘)ことは違法です​。例えば「無料セミナー」と称して集めておいて実は高額商品を売り込むような手法は禁止されています。

②契約内容の書面交付義務:

セミナー会場で契約に至った場合、事業者は契約内容やクーリングオフの方法を記載した書面(契約書面)をその場で交付しなければなりません​。この書面が正しく交付されないと、永遠にユーザーはクーリングオフができるようになってしまいます。

③クーリングオフ制度

訪問販売に該当する取引では、契約後でも8日以内であれば無条件で契約解除(クーリングオフ)が可能です​。セミナー販売も参加者(消費者)は契約書面を受け取った日から8日間は理由を問わず解約できます​。

特商法に基づく表示義務

通信販売(オンラインセミナーでウェブ上から申込・契約をさせる場合等)に該当する場合は、Webサイトに「特定商取引法に基づく表記」を掲載することが義務となります​。事業者名や住所・電話番号、責任者名、価格や支払い方法、返品・解約条件などを漏れなく明示しましょう​

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景品表示法(景表法)

景品表示法は、商品やサービスの広告表示について消費者を誤認させる表示(優良誤認・有利誤認)や過大な景品提供を禁止する法律です​。

セミナー集客や商品販売の広告を出す際、例えば「絶対に成果が出るセミナー!」「今だけ他社の半額!」といった宣伝をすると、この景表法に抵触する恐れがあります。根拠のない効果保証や過度に有利な条件の強調は優良誤認表示・有利誤認表示と判断される可能性があるため注意してください

また、セミナー参加者への特典(景品)提供にも上限があります。例えば無料セミナーに参加した人に高額な商品券を配るような行為は、景品の額が過大だと景表法で禁止される可能性があります(取引額が0円の場合でも、誘引目的の景品には一定の金額制限があります)。 景表法に違反すると、後述するように消費者庁から措置命令や課徴金が科され、社名公表・信用失墜に繋がるリスクがあります​。

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金融商品取引法(金商法)

セミナーで、金融商品(投資商品)の勧誘や販売を行う場合、金融商品取引法(金商法)の規制も強く関わってきます。
具体的には、株式や債券、投資信託、FX、仮想通貨などへの投資を募るセミナーや、投資スクール・投資顧問サービスの契約を結ぶ場合です。

まず無登録営業の禁止ということあります。金融商品を取り扱う業務(例:有価証券の募集・販売、投資助言、ファンド出資の勧誘など)を行うには内閣総理大臣(金融庁)への登録が必要であり、登録せずに行えば金商法違反(無登録営業)となります。違反すると5年以下の懲役または500万円以下の罰金(法人の場合は5億円以下の罰金)という重い刑事罰が科される可能性があります​。

また、金融商品の勧誘時には不公正な勧誘行為の禁止(金商法第38条)が適用されます​具体的には以下のような行為が禁止されています​。

①顧客に対し虚偽の内容を告げること​(例:「絶対に損しない投資です」と嘘を言う)。
②不確実な事項を断定的に伝えること​(例:「半年で必ず利益が出ます」といった保証表現)。
③顧客が求めていないのに自宅訪問や電話をして勧誘すること(不招請勧誘の禁止)​
④勧誘前に相手の意思確認をせずに投資勧誘を開始すること​
⑤顧客が勧誘を断ったのに継続すること​
⑥元本や損失の補填を約束する行為(「損失補填の禁止」)​

さらに、金融商品を販売・契約する際には契約前交付書面・契約時交付書面による重要事項の説明義務があります。リスクや手数料等を詳しく記載した書面を事前・契約時に渡さなければならず、怠ると金商法違反となり6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります​

以上のように金融商品のセミナー販売は特に規制が厳格です。金融商品取引業の登録要否を事前に確認し、必要なら金融庁への登録を済ませておくこと、不公正な勧誘にならないよう脚色なしの説明とリスク開示を徹底することが求められます。

個人情報保護法

セミナーを開催すれば参加者の氏名や連絡先、アンケート回答など様々な個人情報を取得します。個人情報保護法に基づき、これら参加者情報の適切な取り扱いも事業者の責務です。特にオンラインセミナーでは事前申込でメールアドレス等を収集するケースが多く、対策が欠かせません。 個人情報保護法上は、利用目的の明示、同意取得(必要な場合)、安全管理措置、第三者提供時のルール遵守などが求められます。

①プライバシーポリシーの整備・周知

セミナー申込フォームや会場受付時に、個人情報の利用目的(例:「セミナー運営及び関連サービスの案内のため」など)を明示し、同意を得るようにします。ウェブではプライバシーポリシーページへのリンク表示が一般的です

利用目的の範囲内で利用

取得した個人情報は、明示した目的の範囲内でのみ利用します。例えばセミナー後に無関係な営業メールを送りつけることは避け、送る場合でも事前にその旨同意を取った人に限るべきです。

安全管理措置

参加者リストの保管にはパスワード保護を施す、アクセス権限を限定する、通信には暗号化を用いる(オンラインならSSL導入やウェビナーツールのセキュリティ設定)など情報漏えいを防ぐ対策が必要です。

第三者提供の制限

参加者の個人情報を外部の販売業者に渡して営業電話をかけさせる、といった第三者提供は原則禁止です。もちろん、第三者に渡すことに本人の同意があれば別ですが、現実には同意を得ることは難しいでしょう。

万一個人情報を違法・不適切に扱うと、個人情報保護委員会から是正指導や改善命令が下され、命令に従わない場合は刑事罰の対象となります。2022年の法改正で罰則は強化されており、命令違反等に対して個人には「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」、法人には「1億円以下の罰金」という非常に重い刑罰が科され得ます​

また情報漏えいが起きれば、ユーザーから損害賠償請求を受ける可能性もあります​。セミナー参加者リストの管理は信頼に関わる問題ですので、最新の個人情報保護法制に則り万全の対応を取りましょう。

著作権法

セミナーの内容・資料にも著作権法の視点が必要です。
他者が著作権を持つ文章や画像、動画などを無断で使用すると著作権侵害となります。例えば、集客用のチラシやスライド資料にインターネットで見つけた画像や有名人の写真を勝手に使ったり、他社の教材を一部改変して配布したりするのは違法です。

著作権を侵害した場合、権利者から差止請求や損害賠償請求を受けるリスクがあります。また悪質な場合には刑事告訴され、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(場合によっては両方)が科される可能性もあります。

実務上は、セミナー資料に用いるコンテンツは自社オリジナルか、フリー素材(商用利用可のもの)を使う、引用の範囲に留めるなどの工夫が必要です。参加者がセミナー内容を録音・録画してネット投稿するようなケースにも注意を払い、必要に応じて禁止を周知しておくと良いでしょう。

オンラインセミナーとオフラインセミナーの違い

近年はオンラインセミナー(ウェビナー)も普及しています。法律上、オンラインとオフラインのセミナーでは適用場面や注意点にいくつか違いがあります。

特定商取引法の扱いの違い

オフラインのセミナー会場で契約を結ぶ場合は前述のように訪問販売に該当し、クーリングオフや書面交付義務があります。
一方、オンラインセミナーでは参加者が自宅等からインターネット経由で申し込むため、販売形態は通信販売とみなされることがあります​。通信販売にはクーリングオフ制度は適用されません​が、その代わりに特定商取引法に基づく表示義務(販売者の表示)が適用されます​。

またオンラインセミナーの申込ページには事業者名・連絡先や支払い条件などを明記し、最終確認画面で利用者が「申し込む」意思を最終確認できる仕組み(チェックボックス等)を設ける必要があります(これは最終確認画面義務と呼ばれ、違反事例が行政処分の対象となっています。

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さらに未承諾者への広告メール送信は禁止なので、セミナー集客でメールを送る際は事前に相手の同意を得ておきましょう​。

勧誘方法の違い

オンラインでは主にメールやSNS、ウェブ広告で参加者を募ります。これら媒体での宣伝は景品表示法の規制が及びますし、金融商品の場合は金融商品取引法の広告規制(誤解を招く表現禁止、リスク表示義務など)も考慮する必要があります​。

オフラインではチラシ配布や電話勧誘で集客することもありますが、電話でセミナー勧誘をする際はそれ自体が電話勧誘販売として特商法の規制(勧誘開始時の事業者名・商品名等の明示義務など)が適用されます。また、Zoom等オンライン会議で勧誘する場合も「電話勧誘販売」に準ずるとの指摘があります​。

金融・投資ジャンルのセミナーで特に気をつけるべき点

金融商品や投資系セミナーの注意点はどういうものがあるでしょうか。金融・投資ジャンルは法律リスクが極めて高い分野であり、悪質な例も多く報道されています。

無登録で投資勧誘しない

証券取引やファンド出資、FX取引などへの勧誘ビジネスは金融商品取引業の登録が必要です。たとえ「教えるだけ」の投資セミナーでも、個別銘柄の推奨や売買助言を有償で行うなら投資助言業の登録が要ります。また他人から資金を預かり運用するような行為は第一種金融商品取引業(厳格な登録制)となり、無登録のまま行えば重罪です​

近年も「カリスマ投資家」を名乗る人物が無登録で仮想通貨投資を募り数百億円を集めた事件で逮捕されています​。金融庁や警察は無登録業者の情報を積極的に収集しています​。

利益保証・断定的表現をしない

投資商品の特性上、将来の利益は不確実です。それにも関わらず「年利〇%保証」「絶対に損しない」といったセールストークをすると金商法38条の禁止行為(断定的判断の提供等)に該当します​。

顧客が誤解して契約した場合、後でトラブルになれば契約無効や損害賠償のリスクもあります。セミナー中の発言は録音されていたり、後日の証拠になり得ますので、言い過ぎないよう注意しましょう。特に金融未経験者にはリスクを強調し、「投資は自己責任であり結果が出ない可能性もある」ことを理解してもらうよう努めます。パンフレットやスライドにも「※将来の運用成果を保証するものではありません」という断り書きを入れておくと良いでしょう。

適合性の原則を意識する

金融商品の勧誘には「適合性の原則」という考え方があります。簡単に言えば、顧客の知識・経験・財産状況に照らして不適切な勧誘をしてはいけないというものです。セミナー参加者が全くの素人ばかりなのに、リスクの高い金融派生商品への投資を強く促すことは適合性を欠く可能性があります。

また高齢の参加者に対し長期にリスクを取る商品を勧めるのも問題視されます。法律上明文化された義務ではありませんが、万一裁判になれば適合性原則違反が争点となり得ます。したがって金融セミナーでは対象者の属性を考慮し、適切な範囲の商品・サービスを提案するよう心がけましょう。

広告・表示の法令遵守: 金融商品の広告には細かな規制があります。例えば投資信託の広告では過去の運用実績を表示する際に「一定の算出方法に基づく」「元本保証ではない」旨の表示が義務付けられています。また誇大な将来予想グラフ等はNGです。FXや先物取引の広告も、「お客様のご判断で」といった断りが必要だったりします​

トラブル時の備え

投資は損益が伴うため、結果によっては参加者からクレームが出ることもあります。「セミナーで聞いた通りに投資したのに損をした。話が違う」といったケースです。このような申し出があった場合、頭ごなしに拒否すると金融ADRや訴訟に発展する恐れがあります。まずは当時の説明資料や録画を確認し、本当に誤解を招く説明がなかったか検証します。もし不適切な発言があれば誠意を持って謝罪し、場合によっては受講料の返金や補償を検討します。

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