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広告・採用・SNS運用を外注したのに成果ゼロ!?弁護士が教えるトラブル対処法

IT企業のための法律

スタートアップや中小企業の経営者の皆さん、広告運用代行や採用代行、SNS運用代行に業務を委託したのに「全く成果が出ない…お金を無駄にしただけ?」と感じていませんか?

高い費用を払ったのに期待した効果が出ないと、とても悔しいですよね。だからと言って即「お金を返せ!」と主張すれば返金してもらえるのか? 実は法律の観点から見ると、必ずしも簡単ではありません。この記事では弁護士としての専門的な視点から、成果が出なかった場合に取るべき対処法を解説します。

目次

成果が出なくても返金できるとは限らない!契約形態による違い

まず押さえておきたいのは、「成果が出なかった=代金を返してもらえる」とは限らないという点です。なぜなら、委託している契約の種類によって、業者(受託者)が成果を出す義務があるかどうかが異なるからです。

一般的に、業務を外注する際の契約形態には 「請負契約」 と 「委任(準委任)契約」 の2つがあります。それぞれ法律上の性質が大きく異なります:

請負契約: 決められた仕事の完成を業者が約束する契約です。この場合、成果物が完成しなければ報酬は支払われないこともあります。例えばウェブサイト制作契約なら、完成品を納品して初めてお金を支払うという形です。

委任契約(準委任契約): 特定の成果物の完成を約束せず、業務遂行そのものを依頼する契約です。

業者は依頼された業務を誠実に実行すれば報酬を得られ、成果が出るかどうかは問われません。コンサルティング契約など継続的な助言・サポート業務は通常こちらに当たります。

今回のような「広告運用代行」「SNS運用代行」「採用代行」といったサービスは、契約上成果の保証がないケースがほとんどです。これらは基本的に準委任契約と考えられます

例えば広告運用代行業者との契約書にも「成果を保証するものではありません」といった文言が入っていることが多いでしょう。つまり、業者がきちんと業務を遂行していた限り、たとえ結果的に売上や集客などの成果が出なくても、直ちに「契約違反だから返金しろ」とは主張できないのです。

弁護士との契約も成果を保証しない準委任契約なので、負けても返金されるわけではありません。

返金・損害賠償を求められる具体的ケース ~広告・SNS・採用ごとの事例~

成果が出なかった場合でも、すべて泣き寝入りしなければならないわけではありません。 業者側に明らかな契約違反や不法行為がある場合には、支払った費用の返金や損害賠償を請求できる余地があります。

ここでは「広告運用代行」「SNS運用代行」「採用代行」の3つの場面それぞれで、返金・賠償を求められる可能性があるケースを例示します。

広告運用代行の場合:何もしていなかった、杜撰な運用をされたケース

広告代理店や広告運用代行に月額費用を払っているのに、実はほとんど業務が行われていなかったというケースです。例えば、毎月のレポートも無く問い合わせてもはぐらかされ、後で広告アカウントのログ等を確認したら広告出稿自体が数回しか行われていなかった、というような場合です。これは明らかに契約上の義務(誠実な業務遂行義務)違反です。

法律的には、業者が全く業務を実施しなかった場合、善管注意義務違反となり、「債務不履行」(契約違反)となり、契約の解除や損害賠償請求が認められる可能性があります。

広告費の不正な扱い

また、広告費の不正な扱いも問題です。例えば「○○万円の予算で広告を運用します」と言われて前払いしたのに、その広告費を全額使わずに業者が保有したままになっている場合です。

本来、未消化の広告費は契約期間終了時にクライアントへ返金されるべきですが、契約によっては「途中解約の場合は残金は返さない」と定めているケースもあります。後述するようにそのような契約条項が常に有効とは限りませんが、少なくとも未使用の広告費部分については返還を求める交渉が可能でしょう。

さらに、業者のミスや不法行為によって損害が出た場合も賠償請求が考えられます。例えば、広告運用代行業者が誤って競合他社の名前を広告文に入れてしまいトラブルになった、意図しない高額入札設定で予算を浪費した、など明確な落ち度がある場合です。このような場合は成果が出なかった以上に「マイナスの損害」が発生していますから、その損害について賠償を請求できる可能性があります。

SNS運用代行の場合:投稿頻度・内容の契約不履行

SNS運用代行でも、「頼んだ業務をほとんど遂行していない」ケースがあります。例えば契約で「週3回投稿」と決めたのに月に1回しか投稿されなかった、約束していたフォロワー対応やコメント返信が全く行われなかった等です。こうした場合、業務内容に関する契約違反として代金の減額や返金を求める余地があります。

もう一つ、SNSアカウントの取り扱いに関するトラブルもあります。運用代行中に業者がアカウントのパスワードや権限を独占し、契約終了後にスムーズに返してもらえないといった場合です。契約でアカウントの権利帰属や引渡しについて定めていないと揉めることがあります

アカウントが返ってこない間に発信が止まり、マーケティング機会を損失するなどの損害が出れば、これも請求原因となりえます。

採用代行の場合:説明と違う料金体系や無許可の人材紹介行為

採用代行(RPO: Recruitment Process Outsourcing)の場面では、料金や成果についてのトラブルが典型的です。例えば以下のようなケースが実際によく相談されています

「成功報酬型」と聞いていたのに、実際は月額固定費も請求されたケースでは、営業時の説明と契約書の内容が食い違っており、説明義務違反や契約上の錯誤として争える可能性があります。

口頭で「成果(採用)が出なければ料金はかかりません」と言われていたのに、後から費用を請求されたケースこの場合も、事前説明との相違について証拠があれば契約の無効や取消しを主張できる可能性があります。

半年分の採用代行費を前払いしたのに一人も採用できなかったケース

成果がゼロにも関わらず返金に応じてもらえない場合、特に業者側が経営不振などでこのままでは返金が難しいとなると深刻です。こうした場合、業者の債務不履行を理由に残期間の費用の返還を求めたり、場合によっては契約そのものの有効性を問うことも検討されます。

さらに採用代行で注意すべきは、業者が無許可で人材紹介的な行為をしていないかという点です(この問題は後述します)。もし依頼した業務が、法律上許可のいる**「有料職業紹介」に該当するのに業者が無許可だった場合、その契約自体が無効になる可能性があります。その場合には支払った紹介料の返還**を求めることも考えられます。

例えば、採用代行業者が候補者を選んで企業に紹介・あっせんする行為まで行っていた場合、これは「職業紹介事業」に当たります。無許可でそのような業務を行う契約は法令違反となり、報酬請求が認められない(ひいては返金対象となり得る)可能性があります。

以上のように、「業者が契約上や法律上の義務を果たしていない場合」や「契約内容が事前説明と大きく異なる場合」などでは、返金や損害賠償を求めることが可能なケースがあります。

返金請求や契約解除の具体的手順 ~催告→解除→原状回復と必要な証拠~

「これはひどい、何とかしたい!」という場合、具体的に返金を請求したり契約を解除したりする手順は次のようになります。法律上の正式な方法を踏めば、後々の交渉や裁判でも有利になりますので、感情任せに相手に電話で詰め寄るより、ステップを踏んで冷静に対処することが大切です。 以下に一般的な流れを示します。

契約内容と経緯の整理

最初に、契約書や合意内容を改めて確認しましょう。契約の種類(請負か委任か)、業務範囲、料金、期間、解約条項、成果保証の有無などをチェックします。同時に、これまでのやり取りの記録(メール、チャット、報告書など)も整理します。何が約束され、何が履行されなかったのか事実関係を明確にするためです。例えば「週○回報告する」と契約書にあるのに報告が一度も無い、などのポイントです。

証拠の確保

上記で整理したメールやメッセージ、契約書、報告書類などはすべて証拠になります。特に、「○○しなければ料金はいただきません」といった相手の発言が記録に残っていれば重要です

電話での口頭説明しかない場合でも、後から内容証明郵便で「○月○日の打ち合わせで御社担当者はこう説明しましたが…」と確認する手もあります。また、代行業者には依頼者から要求されたら業務内容を詳細に報告する義務があります。

疑わしい場合は「どんな作業をしたのか詳細を報告してください」と文書で求めてみましょう。報告がなければ、報告義務違反になり、それをもとに損害賠償請求をすることができます。

催告(履行の催促)

いきなり解除や返金を一方的に通告する前に、まずは相手に履行を促す通知をします。法律上、契約解除にはまず「相当の期間を定めて履行を催告する」手続きが必要な場合があります(民法541条)

具体的には内容証明郵便で、「契約第○条に基づき提供されるはずの○○の履行が確認できません。つきましては〇年〇月〇日までに○○を実施し、報告してください。これがなされない場合、契約を解除し、しかるべき措置をとります」といった文面を送ります。

この催告書を出した事実自体が後々証拠になりますし、相手にプレッシャーを与える効果もあります。

契約の解除

相手が催告に応じず問題が是正されない場合、契約解除の通知を行います。これも内容証明郵便で行い、「○年○月○日付内容証明で催告した件につき、期限までに履行がなされなかったため、本契約を解除します」と明確に意思表示します

契約を解除すると、法律上お互いに契約前の元の状態(原状)に戻す義務が生じます。既にサービス提供が全く行われていないのであれば支払った代金の全額返金を、一部しか履行されていないのであれば未履行部分に相当する代金の返金を求めることになります(原状回復といいます)。

返金請求(内容証明による請求書)

解除通知と同時か、解除後に改めて、返金を請求する書面を送りましょう。ここでは具体的な金額と支払い期限を明記し、「〇年〇月〇日までに指定口座に〇〇円を振り込むよう求めます」と伝えます。ここまで来ると相手も事態の深刻さを理解し、話し合いに応じてくる可能性があります。もし相手が一部返金など妥協案を示してきたら、金額面で妥当か検討します。早期解決を図るなら分割払いの提案や一部返金で和解することも選択肢です。

法的手段の検討

内容証明で請求しても無視されたり、話し合いが決裂した場合は、裁判所の力を借りることを検討します。具体的な法的手段として、少額なら少額訴訟制度、金額が大きければ通常の民事訴訟や支払督促などがあります。

以上が大まかな流れです。重要なのは、証拠を押さえつつ段階を踏むことです。特に内容証明郵便を活用することで、「催告した事実」「解除を通知した事実」「返金請求した事実」が公的な記録として残ります。これは裁判になった際に「こちらは適切に手続きを踏んできた」という有力な証拠になります。

運用代行業者側がトラブルを避けるために気をつける契約・運用設計のポイント

ここまで主に依頼する経営者側の視点で書いてきましたが、実は運用代行サービスを提供する業者側にとっても、トラブルを避け円滑にサービス提供するために契約内容の工夫や運用上の配慮が重要です。お互いが気持ちよくビジネスをするためにも、以下のポイントは業者側が注意すべき点として覚えておいて損はありません(経営者の方も、信頼できる業者選びのチェックポイントとして参考にしてください)。

契約形態・成果物の範囲を明確にする

契約書で「請負なのか委任なのか」「具体的に何をどこまでやるのか」を明示しましょう。

例えば広告運用代行なら「初期設定・入稿・日々の入札調整・レポート作成まで行う」と具体的に記載し、逆にやらない業務(例: LP制作や写真撮影など)は除外事項として明記します。

SNS運用代行でも投稿頻度や内容承認フローを決めておくべきです。これにより後から「聞いてない」「やると思っていた」という誤解を防げます。

成果目標や免責事項の取り決め

クライアントの期待値と実際のサービス内容にギャップがあると揉めます。「フォロワー何人増やします」「必ず○件採用します」といった約束は極力避け、成果を保証しない旨を契約書にしっかり記載しましょう。

例えば「本サービスは成果を保証するものではなく、当社は善良な管理者の注意義務をもって業務を遂行します」といった文言です。それでも目標値を設定する場合は、それが達成できなかった場合の取り扱い(例: 延長対応するが返金はしない 等)も明記します。

料金体系の透明化

特に広告運用では手数料と広告費の区別を明確にし、双方で混同しないようにします。

クライアントから預かった広告費はあくまで広告プラットフォームに支払うお金であって、業者の取り分ではありません。毎月、「運用手数料◯万円+広告費実費◯万円」という形で請求・報告するようにし、仮に広告費が未消化なら翌月に繰り越すか返金する旨を契約条項に入れておきます。

料金に関する不透明さは金銭トラブルの元になりますので、特に慎重に取り決めましょう。

途中解約条件と違約金の設定

最低契約期間や途中解約時の条件を契約書に定めておくことは双方にとって重要です。ただし、あまりにも長期の縛りや高額の違約金はクライアントの不信感を招きます。現実的かつ明確な条件を設定しましょう(例: 「契約後○ヶ月以降はいつでも解約可能(違約金なし)」や「○ヶ月未満で解約する場合は残期間の○割を解約金として支払う」等)。不明確なままだと、「成果が出ないのに解約できない」「高額な違約金を請求された」といった揉め事に発展します

損害賠償責任の上限設定

万が一業者のミスでクライアントに損害が出た場合、際限なく賠償責任を負うのはリスクです。契約書に「当社の賠償責任は○○の範囲に限る」といった上限や、「間接損害や機会損失については責任負わない」等の免責事項を入れておくと安心です。

ただし故意・重過失の場合は適用除外とするなど、あまりに全面的に免責しようとすると契約自体の信頼性を損ねるのでバランスが必要です。

定期的な報告・コミュニケーション

書面の契約だけでなく、日々の報告やコミュニケーションも密にとることがトラブル防止につながります。進捗報告を怠ると「何もしていないのでは?」と不信を招きます。特に依頼者があまりITリテラシーや専門知識が無い場合、こちらから噛み砕いて説明してあげることで信頼関係を築けます。報告義務は法律上も求められるところですので、積極的に情報開示する姿勢を見せましょう。

以上が業者側のポイントです。要は「契約前に期待値と役割分担を揃える」「お金と責任の範囲をクリアにする」「日頃から誠実に報告・対応する」ことが、後々の紛争予防策として非常に有効です。経営者の皆さんも、依頼先を選ぶ際にはこのような配慮がある業者かを見極めると良いでしょう。

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