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日本におけるミームコイン発行:法律および税務のポイント

仮想通貨(ビットコイン、イーサリアム、リップル等)やICOの法律について仮想通貨に詳しい弁護士が解説
目次

ミームコインとは

ミームコインとは、インターネット上のミーム(流行のネタやジョーク)をもとに作成された暗号資産の一種です。技術的な革新性よりもコミュニティの熱狂やSNSでの話題性によって価値が大きく変動しやすい点が特徴で、Dogecoin(ドージコイン)をはじめ多くの例が存在します​

2013年にDogecoinが登場して以降、ミームコイン市場はブームと低迷を繰り返してきましたが、近年ではイーロン・マスク氏がDogecoinに言及するたびに価格が上下する現象や、米国前大統領ドナルド・トランプ氏自らがミームコイン「TRUMP Token」を発行したことも話題となり、海外では再び大きな盛り上がりを見せています​

一方、日本におけるミームコイン市場は海外ほど活発ではないと考えられています。その背景には、日本の暗号資産規制が世界的にも厳格であることが挙げられます。もっとも、国内でもコミュニティ主導のトークン(いわゆるファントークンなど)の事例は存在し、企業経営者からもミームコイン活用の可能性について関心が寄せられています。

関連する法律と規制

日本でミームコイン(暗号資産トークン)を発行・販売する場合、以下の主要な法律・規制が関係してきます。

資金決済法(暗号資産の規制)

資金決済に関する法律は、ビットコイン等の暗号資産(旧称「仮想通貨」)の定義と規制を定めています。法律上、「暗号資産」とみなされるものは、不特定の者同士で代価の弁済手段として利用でき、売買・交換が可能な電子的な価値です。

ミームコインがこの暗号資産に該当すると、暗号資産交換業の規制が適用されます。具体的には、暗号資産の販売や交換を業として行うには内閣総理大臣への登録(=金融庁・財務局への登録)が必要であり​ます。

例えば、暗号資産取引所に上場している、又は上場する可能性があるといって、ミームコインを販売するのは、暗号資産交換業の登録が必要であり、登録なく販売することは、資金決済法違反になります。

この暗号資産規制を逃れるためには、以下の方法があります。

「暗号資産」に該当させない方法

金融庁のガイドラインによれば、トークンが「不特定の者同士で代価の弁済手段として利用」できない形であれば、暗号資産には該当しないとされています。具体的には以下の通りです。

①支払手段としての利用を明確に禁止すること
②発行枚数を100万枚以下にする
➂1トークンの値段を1000円以上の単価とする

このようにミームコインを設計するように検討する必要です。

既存の取引所に、上場してもらう(IEO)

ミームコインが暗号資産に該当する場合には、既存の暗号資産交換業者(取引所)に上場してもらい、そこで取引することが考えられます。ただし、この場合でも、既存の暗号資産交換業者が金融庁と上場させて良いかの事前協議は必要になります。

金融商品取引法(証券的トークンの規制)

発行するトークンの性質によっては、金融商品取引法(いわゆる金商法)の規制対象となる場合があります。例えば、ミームコインの保有者に対し、その収益を原資とした利益分配(配当)が行われるような場合、そのトークンは金商法上の集団投資スキーム持分」に該当し、販売業者は、金融商品取引法の登録が必要になります。

その他の法律規制

金融関連以外にも、ミームコイン発行ビジネスには様々な法律が関係し得ます。たとえば一般消費者向けにトークンを販売する場合は特定商取引法(通信販売の表示義務やクーリングオフ等)や消費者契約法に基づく規制を念頭に置く必要があります。

また、トークン販売の勧誘内容が誇大広告になれば景品表示法違反(不当な有利性の誤認表示)に問われる可能性があります。詐欺的スキームとみなされれば刑法上の詐欺罪に抵触し得ますし、無登録で金融商品を募集すれば出資法違反などの問題も生じ得ます。

このようにミームコインを販売する際には、金融関連の法律はもちろん、様々な法律が絡んできますので、法律面には十分注意をしてください。

税務上のポイント

ミームコイン発行や取引に伴って発生する税務上の論点について、法人・個人それぞれの観点から整理します。

法人税(企業がトークン発行・保有する場合)

自社で発行したミームコインを販売して資金調達した場合、その販売による収入は基本的に課税所得(益金)となり法人税の対象になります。
また、企業が保有する暗号資産(ミームコイン含む)の評価益も課税対象となり、期末に時価評価して含み益に対して法人税が課されるのが原則です​

この期末時価評価課税については、2023年・2024年の税制改正により一部緩和が行われました​具体的には、自社が発行した暗号資産で一定の譲渡制限をかけ信託財産として管理するなど要件を満たすものは「特定自己発行暗号資産」として評価損益課税の対象外となりました​。

さらに2024年改正では、譲渡制限を付した特定の暗号資産について、期末評価方法を時価ではなく原価法(取得時の価格で評価)にできる選択肢も追加されています​。

このため、発行企業としてはトークンに譲渡制限を設ける等の工夫により、期末の含み益に課税されるリスクを軽減することが可能です。また、仮にミームコインをNFT(非代替性トークン)的な扱い(発行枚数を限定し支払手段性を排除)にできれば、法律上暗号資産に該当しなくなるため、そもそも期末評価課税の問題は生じません​。

いずれにせよ、企業としてはトークン販売益に対する法人税の申告・納税を確実に行うこと、保有資産の評価ルールに留意することが重要です。

所得税(個人が得る利益の場合):

ミームコインの値上がり益等を個人が得た場合、それは基本的に所得税の課税対象となります​。日本の現行法では、暗号資産の売却益や使用による差益は原則として雑所得(その他の所得)に区分されます​

雑所得は総合課税となり、所得額に応じて最大45%(住民税を含めると約55%)の累進課税が適用されます​

また、雑所得扱いのため、株式の譲渡損益とは損益通算できず、損失が出ても他の年へ繰越控除することも認められていません。経営者個人がミームコインを購入・売却して利益を得た場合や、会社からトークンで報酬を受け取った場合は、その分を忘れずに確定申告する必要があります。暗号資産は取引記録がブロックチェーン上に残るため、税務当局も取引所を通じて情報を把握し得ます。申告漏れが指摘されれば重加算税などペナルティもあり得るので、日々の取引記録(取得日・取得価額・売却日・売却価額等)を正確に残し、適切に申告しましょう。

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