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出会い系サイト・マッチングアプリ運営の法律上の注意点と実務対応

課金サービスに必要な法律

日本では近年、出会い系サイトやマッチングアプリによる恋活・婚活サービスが急成長しています。2021年の国内オンライン恋活・婚活マッチングサービス市場は約768億円に達し、2026年には1,657億円に拡大すると予測されています​。

マッチングアプリは、手軽に理想の相手を探せる一方で、未成年者が犯罪被害に巻き込まれるリスクも増大しました​。そのため、事業者は法規制を正しく理解し遵守することが極めて重要です。法律違反は罰則に加え社会的信用の失墜につながりかねません。本記事では、日本法に基づき出会い系サイト・マッチングアプリ事業を運営する際に押さえるべき法律上の注意点を重要度順に整理し、実務上の対応策とあわせて解説します。

目次

風営法(出会い系サイト規制法)

一般に「出会い系サイト規制法」と呼ばれる法律によって、インターネット上で異性の出会いを仲介する事業(インターネット異性紹介事業)が厳しく規制されています​。正式名称は「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」で、未成年者(児童)を性被害から守る目的で2003年に施行されました​。

この法律では、面識のない異性同士の出会いを目的とするサービスは事業開始前に所轄公安委員会へ届出し、18歳以上であることの年齢確認を行うことなどが義務付けられています​。具体的な事業者の義務としては以下のような点が挙げられます​。

①公安委員会への届出義務:「インターネット異性紹介事業届出」を事前に行うこと
②年齢確認の義務化:利用者が児童(18歳未満)でないことを、公的書類等により厳格に確認すること​
③児童利用禁止の明示:サイトやアプリ上に「18歳未満利用禁止」の表記を明確に示すこと​
④名義貸しの禁止:他人名義で事業を営むこと(名義を貸すこと)の禁止​
⑤禁止誘引行為の閲覧防止:児童を誘うような書き込み等の禁止誘引行為があれば、ただちにその情報を閲覧できないよう削除・非表示措置をとること​

なお常時の全投稿監視までは義務ではありませんが、ユーザーからの通報を受けたら速やかに削除することが望ましいとされています​。

この法律に違反すると厳しい罰則があります。届出を怠った場合には6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が科され​、児童に対する誘引行為自体も同程度の刑罰が規定されています​

公安委員会から是正指示や事業停止命令を受けたのに従わない場合も、別途6か月以下または1年以下の懲役等の罰則が定められています​。悪質な業者は実際に逮捕・処罰されたケースもあり、法律遵守は絶対条件です。

同性間のマッチングサービス

本規制は男女の異性交際を対象としています。同性愛者向けのマッチングサービスは現行法では「インターネット異性紹介事業」に該当しません​。ただ、だからといって未成年者保護の責務が免れるわけではありません。また、表向き異性交際以外のSNS機能を装いながら実態は出会い目的となっている「非出会い系アプリ」も摘発例があります​。

サービス内容が上記要件を満たす限り、名称や形態に関わらずこの法律の対象となるので注意しましょう。

インターネット異性紹介事業の届出

上記「出会い系サイト規制法」に基づき、該当する事業を開始する際は事前に都道府県公安委員会への届出が必要です。事業所(オフィス)の所在地を管轄する警察署長経由で、開始日の前日までに「インターネット異性紹介事業開始届出書」を提出します​。

万一サービスを終了したり届出内容(サイトURLや法人役員など)に変更が生じた場合も、14日以内に届出を行わねばなりません​。 届出の際には所定の書類を揃える必要があります。個人で届け出る場合は住民票の写しや身分証明書(本籍地の市区町村が発行する証明書)等が必要で、法人なら定款や登記事項証明書も添付します​。あわせて、申請者が法律上の欠格事由に該当しないことの誓約書も提出します​

欠格事由とは、例えば「未成年者」「破産して復権を得ない者」「禁錮以上の刑や児童買春・ポルノ関連の罪で罰金刑を受け5年以内の者」「暴力団員やその脱退5年以内の者」などで、これらに該当する人物は事業を営むこと自体ができません​。
届出書類に虚偽があると30万円以下の罰金という罰則もあります​。

提出先や様式の詳細は各都道府県警の案内ページで確認できます。 届出が受理されると、公安委員会から受理番号が付与されます。多くのマッチングサービスではサイトやアプリ内の会社概要ページ等に「インターネット異性紹介事業 届出済み ○○公安委員会 第○○号」といった文言を掲示しています。

電気通信事業の届出 

ユーザー間でメッセージの送受信を仲介するサービス(DMやダイレクトチャットなどの機能)は、たとえ自社で通信回線を保有していなくても「他人の通信の媒介」を業として行うものとして通信事業者の届出が必要となります。

届出自体に費用はかかりませんが、無届けで通信事業を営むと6月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります​。警察への届出と併せて、所轄の総合通信局への届出手続も実施しましょう。

https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/denkitsushin_suishin/tetsuzuki/kokunaihoujin.html

特定商取引法(広告・契約・クーリングオフ)

マッチングアプリや出会い系サイトの運営形態は、法律上「通信販売」(インターネットを使った取引)に該当します​。

そのため、特定商取引に関する法律(特定商取引法)の通信販売に関するルールも遵守しなければなりません。具体的には、ウェブサイトやアプリ内に事業者の名前・所在地・連絡先、利用料金や支払い方法、返品・解約条件などを明記した「特定商取引法に基づく表示」を掲示する義務があります​。

サイト自体が広告媒体とみなされるため、ユーザーが閲覧できる場所にこれらの情報を掲載しておく必要があります​。「会社概要」ページやフッターにリンクを用意し、必要事項を漏れなく記載しましょう

また、有料サービスの利用規約や課金ページにも料金や契約期間などの重要事項を分かりやすく表示し、ユーザーの誤認を防止することが大切です(誇大な表現は景品表示法上の問題にもなり得ます)。

サービス利用料の返金や途中解約の可否については利用規約上で明確に定めておくことが重要です。例えば「○日以内であれば未使用ポイントを返金する」「購入後のポイントは返品不可」等、トラブルを避けるためルールを周知しましょう。

もちろん特定商取引法に反して不当な勧誘や表示を行えば行政処分の対象となります。特にサブスクリプション型の課金モデルでは、自動更新のタイミングや解約方法を分かりやすく案内し、ユーザーに不利益が生じないよう配慮してください。

個人情報保護法(ユーザーデータ管理)

マッチングサービスではユーザーの氏名・生年月日・連絡先・プロフィール情報など大量の個人情報を取り扱います。さらに、年齢確認のため運転免許証や健康保険証等の画像データをユーザーから提出してもらう場合もあります。これらの個人情報を適切に管理することは事業者の重大な法的責任です​。

日本の個人情報保護法では、利用目的を特定して通知・公表し、本人の同意なく目的外利用しないこと、安全管理措置を講じ漏えい防止に努めることなどが定められています。とりわけ近年はSNS企業等の情報漏えい事件を受け、2022年の法改正で罰則が強化されました。

故意・重過失による漏えいには最大1億円の罰金が科される可能性もあり、万全のセキュリティ対策が求められます。 実務対応として、まずサービス開始時にプライバシーポリシーを策定し、公表しましょう。利用者にどのような情報を収集し、何の目的で利用するか、第三者提供の有無(提携先へのデータ送信など)、保管期間や問い合わせ窓口などを明記します。例えば、年齢確認書類の画像は確認完了後〇日以内に廃棄する、と定めればユーザーも安心できます。

実際、大手マッチングアプリ「Omiai」では2021年に約171万件もの本人確認書類画像データが漏えいする事故が発生し​、運営会社は行政指導と社会的非難を受けました。こうした事態を防ぐため、アクセス制限や暗号化、ウイルス対策ソフトによる監視など技術的安全管理措置を徹底しましょう。

特に本人確認書類の画像データやクレジットカード情報などは厳重に保管し、不要になれば速やかに削除する運用が望まれます。また、万一情報漏えいが発生した場合の報告フロー(個人情報保護委員会や本人への報告義務)も社内で整備しておくべきです。 加えて、従業員にも個人情報保護の教育を行い、内部からの漏えいや不正利用を防止します。運営担当者だけがユーザーデータベースにアクセスできるよう権限管理を行い、ログを監査する仕組みも有効です。ユーザーから「自分の情報を削除してほしい」といった問い合わせがあれば、所定の手続で応じる義務があります(利用目的によっては応じなくてもよい場合もありますが、誠実な対応が求められます)。このように、個人情報保護法の遵守はユーザーの信頼確保に直結する重要事項です。

その他関連法規(刑法、青少年保護条例、消費者契約法など)

上記の主要な法律以外にも、出会い系サービス運営者が留意すべき法規がいくつかあります。

刑法・風俗関連法

サイト上で行われる行為が売春やわいせつ物頒布などの犯罪に該当すれば、関与した利用者はもちろん運営者も幇助などで責任を問われる可能性があります。特に売春防止法や児童買春・児童ポルノ禁止法に抵触する行為(援助交際の斡旋やわいせつ画像交換など)が行われないよう、利用規約で禁止し監視することが重要です。

実際、出会い系サイト規制法違反(児童誘引)や児童ポルノ法違反で逮捕・有罪となった例もあります。刑法そのものではありませんが、こうした性犯罪・薬物犯罪等への関与はサイト閉鎖に追い込まれる重大リスクと認識してください。

青少年保護育成条例(各自治体の条例)

都道府県ごとに青少年の健全育成を目的とした条例があり、18歳未満のいわゆる出会い系サイト利用を禁止したり、深夜徘徊や淫行を禁止したりする規定があります。例えば東京都の条例では、青少年がインターネット異性紹介事業を利用すること自体が禁止されており、違反した青少年本人も補導などの対象になります。また事業者や保護者にも児童の利用防止の責務が課せられています​。

運営者は各自治体の条例にも目を通し、サイト内で地域の定める有害情報(例えば18歳未満閲覧禁止コンテンツなど)を表示しないようにすることも必要でしょう。年齢確認を徹底していれば基本的に条例違反は防げますが、万一未成年と判明したユーザーを発見した場合は直ちにサービス利用停止にするなど、条例遵守の観点から迅速に対応します。

消費者契約法

利用者がサービス利用契約を締結する際の一般ルールを定めた法律です。事業者に一方的に有利で消費者の利益を著しく害する契約条項は無効とされます。先述のように包括的な免責規定や、解約権を不当に奪うような条項は許されません。

マッチングアプリの利用規約でも、「運営の故意・重過失による損害まで免責」といった条項は無効になります。また、サービス説明に重要な誤解を与えてユーザーを契約させた場合、消費者契約法により契約取り消しを主張されることもあります。誠実で正確な情報提供を行い、公正な契約内容を整備することが肝要です。

プロバイダ責任制限法

プロフィールや掲示板書き込みなど不特定多数が閲覧可能な情報については、この法律の対象となります。もし誹謗中傷やプライバシー侵害、著作権侵害など違法な投稿があった場合、被害者からの申出に応じてその情報を削除したり発信者情報の開示請求に対応したりするといった義務・手続があります。マッチングサービスでも、掲示板機能や日記機能があればその管理者としての責任を果たす必要があります。利用規約で禁止行為を定めるだけでなく、通報を受けた際の対応フロー(何日以内に削除・通知等)を決めておきましょう。

以上のように、関連法規は多岐にわたります。事業内容によって適用法令も変わるため、自社サービスにどの法律が関係しうるか常にチェックする姿勢が求められます。

実務上の対応策

続いて、上記の法的ポイントを踏まえて、事業者が実務で講じるべき具体的な対策を解説します。サービス開始の準備段階から日々の運用まで、法令遵守と安全性向上のために以下の対応策を実行しましょう。

事業開始時の手続き

必要な行政手続を全て完了してからサービスを公開する。前述の公安委員会への届出と総務省への通信事業届出は、サービス提供開始前に済ませておく必要があります。届出受理までに時間がかかることもありますので、事業計画段階から警察署や総合通信局に問い合わせ、書類を整えておきましょう。

届出書類作成に不安がある場合は、専門家に依頼することも検討してください。届出受理後は通知書などの控えを大切に保管し、サイト内に受理番号を表示するのを忘れずにしましょう。さらに、利用者規約やヘルプページに18歳未満利用禁止である旨を明記し、年齢確認を行うことも事前にアナウンスしておきます。

また法律上、ユーザーがメッセージ交換など出会い系機能を利用する前に年齢確認を完了させる必要があります​。そのため、実装面でも年齢確認なしでは相手のプロフィール閲覧やメッセージ送信ができないよう制限を設けてください​。一般的には、会員登録直後は年齢確認書類の提出を促し、確認が完了したユーザーにのみメッセージ機能などを開放するフローとなっています​。

年齢確認手段としては「公的身分証明書の画像アップロード」が主流ですが、近年はスマホで完結するeKYCサービス(アプリ上での撮影+AI審査)も普及しています。確認業務を自社で行う場合、提出画像のチェック体制(専門スタッフを配置し24時間以内に承認する等)を決め、迅速に対応しましょう。確認済みユーザーには内部で「年齢確認済フラグ」を付与し、以後ログイン時はそのフラグを参照して再確認は不要とするのが一般的です​

ユーザーの安全対策(通報システム、監視体制)

犯罪や重大トラブル発生時の対応万一、ユーザー間で犯罪行為(詐欺・窃盗・性的暴行など)が発生した場合、速やかに適切な措置を取ります。被害に遭ったユーザーから相談があれば、警察への同行や情報提供に協力しましょう。必要に応じ、加害側ユーザーの登録情報やログを警察からの照会に応じて提出します(通信の秘密に配慮しつつ、正式な捜査協力要請があれば提供可能です​

また、サービス内で同様の手口による被害拡大を防ぐため、他のユーザーへの注意喚起(「このようなメッセージにはご注意ください」といったアラート表示)も検討します。一方で、運営者自身が事件の当事者になるケース(個人情報漏えい、システム不正アクセスなど)もありえます。その際は被害拡大防止と再発防止策の徹底が最優先です。この場合、所管官庁や専門機関への報告・相談を速やかに行います。

課金サービスに必要な法律

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