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取適法(下請法改正)で強気交渉!支払いサイトと単価交渉、SES事業者が知らないと損する新ルール

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SES業界あるある:遅い支払い・一方的な単価決定にモヤモヤ…

「エンジニアを常駐させたのに、代金の入金は3カ月後」──SES業界ではこんな経験ありませんか?実際、SES契約では作業完了後に検収・請求を行ってから入金まで60〜90日かかるケースも珍しくありません。

経済産業省の調査でもIT関連企業の約4割が支払いサイト60日以上の取引を経験したと報告されています。その間にもエンジニアへの給与や外注費は先払いする必要があり、中小のSES企業にとってこれは大きな資金負担です。

また、単価の決定権が発注側に一方的に握られていることも「SES業界あるある」です。契約前に「今回は予算が厳しいから…」と低い報酬を提示されたり、コスト増加で値上げ交渉を申し入れても「今後の取引に響くかも…」と泣き寝入りしてしまうケースも多いでしょう。こうした不利な取引慣行にモヤモヤしつつも、「弱い立場だから仕方ない」と諦めていませんでしたか?

しかし、2026年施行の改正下請法によって、こうした状況に変化が訪れます。中小のSES事業者でも遠慮せず強気交渉できるようになる新ルールが始まるのです。それが「中小受託事業者取引適正化法(通称:取適法(とりてきほう)」です。以下では、この新ルールのポイントと、SES企業にとってどんなメリットがあるのかを分かりやすく紹介していきます。

取適法って何?SES発注者に課される新たな義務とは

2026年1月1日から施行される取適法」は、正式名称を「中小受託事業者取引適正化法」といい、これまでの下請代金支払遅延等防止法(下請法)を大幅にアップデートした法律です。目的はシンプルで、弱い立場の中小事業者(=受託側)が発注側から不当な扱いを受けないよう取引の公正化を図ること。

従来の下請法では資本金規模によって適用範囲が限定され、フリーランスなど保護漏れのケースも多かったのですが、新法では発注者の規模に関係なく広く適用され、フリーランスを含む幅広い中小事業者が守られるようになります。

取引関係も「親・子」ではなく対等なパートナーとして位置づける理念が打ち出されており、名称から「下請」の言葉が消えたのも象徴的です。

では具体的に何が変わるのでしょうか?取適法では発注側(委託事業者)に対し、以下のような新たな義務が課されます。

契約書面の交付・保存義務

発注内容や報酬額、納期、支払期日など重要事項を記載した書面(または電子記録)を直ちに交付し、取引記録を作成して2年間保存すること。口頭の「お願いベース」発注や内容あいまいな指示はNGになります。

支払期日の明記義務

成果物の受領日(SESでは契約上の検収日)から起算して60日以内のできる限り短い日を支払期日に定めなければいけません。例えば「月末締め翌々月末払い」のように受領後60日を超える支払いサイトは違法になる恐れがあります。

遅延利息の支払義務

万が一支払期日までに支払わなかった場合、受領日の60日後から実際に支払う日までの日数分、年14.6%(日割計算)の遅延利息を中小事業者に支払う必要があります。契約で別の利率(例:年10%)を決めていても14.6%が優先適用されます。

SES発注側の禁止行為

さらに、取適法では発注側の不公正な行為を禁止する項目も拡充されています。その中でもSES事業者に関係が深いポイントを挙げると:

価格交渉に応じない一方的な代金決定の禁止

エネルギーコストや人件費が上がったので報酬単価を見直してほしい――もし受託側からそんな値上げ交渉の申し入れがあった場合、発注側は正当な理由なく協議を拒否できません。明確に「話し合いはしません」と突っぱねるのはもちろん、交渉の求めを無視したり先延ばしにしたりする行為も違反になります。

法律で話し合いのテーブルに着くこと自体を義務付けることで、「そもそも価格交渉の機会すら与えられない」という事態を防ぐ狙いです。

振込手数料の押し付け禁止

請求代金を振り込む際に、振込手数料を受託側負担にしていませんか?この慣行もアウトです。改正法では発注側が受注者側に振込手数料を負担させることを禁止しました。

その他の禁止行為

このほか、不当な代金の減額(発注後に理由なく「やっぱり報酬カット」)、不当なやり直し要請(受託側に非がないのに追加作業を無償要求)、報復措置の禁止(違反を公取委に相談したことで取引停止する報復)など、全部で11項目の禁止行為が定められています。要は「力関係を背景に無理難題を押し付けるな」という話です。

SES事業者にはどう影響する?

取適法のポイントを見ただけでも、「おや?」と感じたSES事業者の方は多いのではないでしょうか。この新ルールはSES事業者にも影響があります。、具体的に影響があるのか、整理してみましょう。

キャッシュフロー、資金繰り

最大のメリットは、やはり支払いサイト(入金までの期間)の短縮です。新法では60日以内が基本になります。発注元がこれに違反すると罰則や14.6%の遅延利息が科されます。例えば、それまで検収後90日先だった入金日を60日に縮められれば、1か月分の売上が早く現金化できます。

価格・条件交渉の義務化

「話し合いすらしてもらえない」従来の状況に対し、新ルールでは交渉のテーブルに着くこと自体を義務付けています。これにより、例えばエンジニアの単価アップをお願いしたくても無視されていたケースで、一歩前進が期待できます。

2つ目のメリットは、この価格交渉のチャンスが保障される点です。もちろん法律が「値上げを受け入れよ」と強制するわけではありません。しかし「話し合えば何かしら妥協点が見つかるかも…」という可能性すら閉ざされていたこれまでに比べれば、大きな進展です。

発注側にとっても、正当な理由なく交渉拒否すれば違反リスクがありますから、今後は真摯に話を聞く姿勢が求められます。実際に交渉がまとまれば、材料費や人件費の高騰分を適正に価格転嫁してもらえるようになるでしょう。

「言った・言わない」のトラブル減少


契約書の交付義務もうれしいポイントです。曖昧な口約束だった発注内容が書面やメールできちんと形に残るため、後から「聞いてない仕様追加だ…」「約束の報酬と違う!」といったトラブルを防ぎやすくなります。
発注側も自社ルールに沿って正式な書面を発行するようになるので、契約書をもらえず不安という事態も減るでしょう。万一トラブルになっても記録があれば有利ですし、交渉の履歴を残しておくことで「ここでこう提案したのに返事がなかった」という証拠にもなります。

不当な減額やリスク転嫁への歯止め

改正法には前述のとおり、報酬の一方的な減額や無理なやり直しの禁止など、細かな保護規定も整っています。SES事業者に多いケースではありませんが、例えば「紹介料」と称して発注先からキックバックを要求されたり(※これも不当な利益提供要請の禁止に該当)、逆にこちらから違反申告したことで取引停止される報復を受けたり、といった理不尽も明確にNGとなりました。

取適法チェックリスト:SES事業者が今すぐ取り組めること

改正下請法の施行に向けて、SES企業が今から準備しておくべきポイントをチェックリストにまとめました。自社の取引を振り返りながら、できているか確認してみましょう。

取引先・契約の洗い出し

まず、自社が関わる業務委託契約をすべて棚卸ししましょう。どの取引で自社が「発注者(委託側)」になり、どれが「受託者(下請側)」に当たるか整理します。特に今まで下請法の対象外だった小規模な発注先フリーランスとの契約がないか確認が重要です。

契約書テンプレートの見直し

契約書や発注書のひな形をアップデートしましょう。新法に沿って、少なくとも以下の項目が漏れなく記載されているか要チェックです(書面or電子データで交付)。
発注者・受注者の名称、発注日、業務内容の具体的範囲、成果物の納期、受け渡し場所、報酬額と算定方法、支払期日、検収方法など。不備があれば早めに修正し、場合によっては専門家にリーガルチェックを依頼すると安心です。

現在の支払サイト・手段の点検

取引ごとの支払条件を洗い出し、60日超の支払いサイトがないか確認します。もし支払サイトが長すぎる取引先があれば、新ルールに合わせ条件変更の相談を持ちかける計画を立てましょう。「法律でこう決まるので…」と言えば相手も応じざるを得ないはずです。また、振込手数料を負担させられているケースがあれば、そちらも是正交渉の候補です。

記録を残す習慣づくり

発注書・請求書や契約書類のやり取りは必ず書面・メールで行い、口頭のみで済ませないよう徹底します。受発注に関する書類やデータは少なくとも2年間は保存する仕組みを整えましょう。また、価格交渉のやりとりもメールなど記録が残る手段で行うと安心です。後から証拠を求められても対応できるよう、社内のファイル管理ルールを見直しておきます。

社内周知と対応訓練

現場担当者や営業スタッフにも新ルールを共有し、基本的な違反行為や交渉時の注意点を教育します。例えば「値上げ要請が来たら無視しない」「契約書に書いていない追加作業はさせない」等、発注側になる場合も受注側の場合も双方の立場を想定してルールを理解させましょう。自社が発注者になる取引(フリーランスへの委託など)がある場合は特に要注意です。法律違反で社名公表などのペナルティを受けないよう、今から社内体制を整備しておくことが肝心です。

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