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ウェブサービスで値上げやポイント制度の変更するときの注意点【利用規約】
ウェブサービスで料金を値上げをしたい
ウェブサービスで利用料金を上げたい場合、どうすればよいのか…そんな質問をよく受けます。
通常の契約であれば、相手方に料金値上げの交渉を行い、再度契約書を巻き直す作業が必要になります。
しかしウェブサービスの場合にはユーザーも多くなり、一人ひとりに同意を取り、契約を巻き直すのは現実的ではありません。
ウェブサービスの場合、事業者が利用料金を上げたい場合、どこに気を付けれればよいのでしょうか?
民法改正によって同意なくても値上げ可能に
2020年4月1日に施行された民法改正よっ て新設された定型約款の変更のルールによって、 料金の値上げについても、 利用者の同意を得ることなく有効に行うことができることが明確になりました。
そして民法の立案担当者は、 値上げについて、 極めて厳格な要件の下で審査されるとした上で、 値上げが将来的なものであり、かつ、 その開始時期までに一定の猶予期間が設けられ、かつ、 顧客にはその猶予期間内に特段の不利益なく取引を解消する権利が認められるといった配慮がされ ることは必須であること、 値上げの必要性や値上げ幅の相当性が厳しく吟味されると説明しています。
民法では、利用規約を一方的に変更する場合には以下のことが必要とされています。
変更の必要性、変更後の内容の相当性、 この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係 る事情に照らして合理的なものである
値上げによって直ちに契約の目 に反することにはならないと考えられるため、 値上げが合理的であるか否かが問題となります。その場合には、以下のような事情が考慮されます。
契約の期間
まず、契約期間が決められていて途中解約もできない場合は、契約の月々の支払額を期間 (月) の途中で上げることについては、かなり厳しいと思われます。 顧客は期間の途中で契約から自由に離脱することができないとされており、 顧客としては、期間中の支払総額をあらかじめ吟味した上で取引をしているからです。
そうであるにもかかわらず、 事後的に支払総額を一方的に増額させることは、顧客の信頼に反するものであり、不利益の程度が大きいといわざるを得ません。なので利用者の同意なく一方的に料金を上げることは難しいと思います。
ただ、このような契約においても、 期間を更新するタイミングで値上げをする場合には、比較的に認められやすいと思います。
一方で期間の定めがなく途中解約できる場合には、料金の値上げは比較的認められやすいと思います。値上げに同意することができない顧客は負担なく、契約から離脱することができるのが通常であるためです。
一部の顧客についての値上げはできるのか
特定の料金プランのみを値上げする場合のように、顧客のうちの一部のみを値上げする場合には、変更の必要性との関係で、なぜその一部の顧客が値上げが必要なのか、変更内容の相当性として問題になります。
一部の顧客の取引について生じたコストを吸収するために、 その一部の顧客のみ値上げをすることには相当性があるといえます。
事業者の財務状況を改善する目的で値上げをする場合には、それによって事業の継続が可能になるという点で顧客全体が利益を受ける もかかわらず、 一部の顧客のみが経済的負担を強いられる理由を合理的に説明する必要があります。
ポイント制度の改定
多くの事業者が、 顧客のロイヤリティを高める方策として、 独自のポイント制度を創設し、 顧客に対して利益還元を実施しています。
しかし、コスト削減や財務状況の改善を目的として、 事後的にポイント制度を改定することもしばしば見られます。 これも利用規約の変更を必要とするものであり、 定型約款の変更として有効でなければなりません。
例えば、 クレジットカードの利用金額に応じて付与されるポイントを航空会社の付与するポイントであるマイルに移行するサービスを受けるために必要な手数料を一方的に値上げした変更の効力が争われた裁判では、ポイントサービスがクレジットカード契約の付帯サービスとしての性質を有するものであるとして、クレジットカード契約に影響を及ぼさない限り、事業者の広範な裁量をもって変更を行うことができる旨判示されました。
航空会社の付与するポイントであるマイルに移行するサービスはメインのサービスではなく、付帯するサービスであったため、変更も事業者の裁量の部分が大きいという判断です。
これに対して、 ポイントサービスの中には、 実質的に事業者が継続的に提供するサービスの対価の値引き機能を有しているものも少なくありません。
このようなポイントサービス制度の付与率を切り下げる改定をすることは、顧客にとっては実質的には値上げに近い意味を有するこ とになる。 そのため、 特に継続的な取引におけるポイントサービス制度については、変更が認められないケースも出てきています。
まとめ
料金値上げやポイント制度の改定を行う際には、法律上の合理性を満たすだけでなく、顧客との信頼関係を損なわないよう、事前通知や猶予期間の設定が重要です。