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専門家相談サービスの運営についての注意点を弁護士が解説
専門家相談サービスとは
専門家相談サービスは、医師、薬剤師、カウンセラー等の専門家に対して、月額料金制で相談できるサービスです。
具体的には、匿名により専門家に相談したいことを投稿し、それに対して専門家が回答するといったサービスや専門家がこれまでにした回答が閲覧できるなどのサービスが考えられます。
専門家による相談サービスは、インターネットの普及により真偽不明の情報が散在する中で、真実性の高い情報を取得したいというニーズを満たすものであり、今後拡大することが想定されます。
また、これまで場所的な制約により専門家に相談することが困難だった人にも、月額の安価な料金で利用可能となることから、専門家がより身近な存在となることが期待できます。
専門家相談サービスの法律的問題点について
提供できるサービスの範囲
専門家相談サービスを行う上で留意しなければならないのは、当該相談としてどこまで行うことができるかという点があります。
例えば、医師による相談の場合、遠隔健康医療相談(医師一相談者間において、コンピュータ機器を活用して得られた情報のやり取りを行い、患者個人の心身の状態に応じた必要な医学的助言を行う行為。
相談者の個別的な状態を踏まえた診断など具体的判断は伴わないもの。)は、チャット等テキストのみによりすることが可能ですが、オンライン診療や、オンライン受診勧奨はチャット等のテキストのみによっては行うことができないとされています(厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」平成30年3月(令和元年7月一部改訂))。
このように、専門家の業務によってはテキストベースの回答ができないおそれがあるため、どのような内容であれば回答可能かを慎重に判断し、また、当該回答のみを行うことを利用規約やガイドライン等で明記することが求められます。
回答者として適切かどうかの確認
さらに、相談に対する回答によっては専門的判断が必要なことから特定の資格を持った者しか当該判断を伴う回答ができない場合があります。
例えば、「医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為」(平17・7・26医政発0726005)に該当する行為は「医行為」(医師17)に当たるとして、医師でなければできないとされています。
このように、特定の資格を持った者しかできないような回答を提供する場合、事前に回答者に資格の確認をして上で会員登録をしてもらう等の手段により、有資格者のみが直接回答する仕組みを作る必要があります。
投稿内容の著作権と第三者権利侵害
利用者との関係においては、利用者が投稿した投稿内容の権利が問題となります。投稿内容に著作権が認められるためには、「思想又は感情を創作的に表現したもの」である必要があります。
そのため、質問等の短い文章は創作性がないとして著作物と認められない可能性が高いですが、一つ一つの投稿に著作権があるか判断することは事業者にとって時間がかかるため、利用規約に「利用者は、本サービスに投稿した投稿に関する一切の著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含みます。)を当社へ譲渡します。
利用者は当該投稿に関して著作者人格権を行使しないものとします。」といった条項を含め、利用者から投稿内容に関する権利を譲渡してもらうことが考えられます。
また、利用者が行った投稿が第三者の権利を侵害したもの(例えば、第三者の写真を無断で投稿することや、第三者の実名等プライバシーに関わることを投稿するなど)であった場合に備えて、利用規約において、禁止事項として「第三者の所有権、著作権を含む一切の知的財産権、肖像権、パブリシティー権等の正当な権利を侵害する行為」を含めることが考えられます。
責任の所在の明確化
以上に加えて、投稿に関して、利用者が誤った事実又は虚偽の事実に基づいて質問をし、その事実を基に専門家が回答し、利用者がその回答に従ったことによって損害を受けた場合に備えて、利用規約に、「質問が誤った事実又は虚偽の事実に基づいたものである場合、回答に対して回答者及び当社は責任を負わない」等の条項を入れることも考えられます。