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ゲーム・メタバースにおける利用規約の注意点

IT企業のための法律
目次

はじめに

ゲームビジネスおよびメタバースビジネスを展開する際には、著作権法・資金決済法・景表法・特商法など、多岐にわたる法律への対応が求められます。その入口となるのが利用規約の設計であり、ビジネスモデルの特性に応じた固有の条項を盛り込まなければ、後に深刻なトラブルを招くリスクがあります。

本稿では、ゲーム・メタバースビジネスに特有の利用規約上の論点を整理し、実務上の対応ポイントを解説します。

未成年者対応条項

ゲームビジネスにおいては、未成年者との契約に関する特別な条項を設けることが一般的である。法律上、未成年者が単独でできる行為は制限されており、利用規約においても未成年者との契約成立に着目した手当てが必要となる。

実務上の主な対応としては、以下が挙げられる。

利用制限の明示

年齢に応じてサービスの一部または全部の利用を制限する場合、その対象・内容を公式サイト上に別途定める形式が多く採用されます。

課金上限の設定

特にゲームビジネスでは、未成年者によるアイテム課金等に対して一定の取引金額上限を設けている例が多いです。具体的には、16歳未満は月額5,000円程度、16歳以上18歳未満は20,000〜30,000円程度とする設定が目安とされています。この上限は利用規約において明記する必要があり、取引金額の上限とは別に、サービス内容自体に制限が生じる場合にはその旨の条項も別途必要となります。

ゲーム内ポイント・ゲーム内通貨に関する条項

ゲームビジネス・メタバースビジネスでは、有料でゲーム内ポイントやゲーム内通貨を購入・使用できる仕組みを導入するケースが多いです。この仕組みについては、購入方法・使用方法・権利の帰属等について利用規約で明記しておく必要です。

規約上の整理として重要な点は以下のとおりである。

  • 有料ポイント等は、会社が定める範囲・用途でのみ使用できること
  • 利用者はポイントに関して前項に基づく権利を保有するのみであり、所有権・著作権・商標権その他の知的財産権を取得するものではないこと
  • 当社が別途定める場合を除き、購入した有料ポイント等は購入後に返金できないこと

また、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当するゲーム内ポイント・通貨については、その旨を利用規約に明記しておくことが求められます。さらに、未成年者に限らず、全ユーザーを対象とした購入金額上限を設定する場合にも、ゲーム内ポイント・ゲーム内通貨の条項内で明示しておくべきです。

リアルマネートレード(RMT)禁止条項

サービス内通貨やアイテムを現実世界の法定通貨で売買するいわゆるRMT(リアルマネートレード)は、ゲームビジネスにおける代表的なリスク事項です。

RMTは、必ずしも刑法その他の刑罰法規に直接的な規定があるわけではなく、法令に基づいて取り締まることが難しい側面もあります。他方、RMTによる利益を目的とした不正行為や、購入者を狙った詐欺行為を助長するおそれがあることから、公正なサービスを維持するために利用規約において禁止事項として定めることが一般的です。

条項例としては以下のような文言が考えられます

「当社が意図しない方法・態様で、本サービスに関連して利益を得ることを目的とする行為(アイテムやゲーム内通貨等を現実の法定通貨で売買する行為を含みます。)」

なお、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が定める「リアルマネートレード対策ガイドライン」や、一般社団法人日本オンラインゲーム協会(JOGA)が定める「オンラインゲーム安心安全宣言」においても、利用規約等でRMTを禁止する旨を規定することが求められている点に注意が必要です。

いわゆる「サ終」(サービス終了)に関する条項

ゲームビジネスでは、サービス終了(いわゆる「サ終」)が実務上頻繁に発生する。利用規約においては、サービス提供者側が裁量でサービスを廃止できる旨が規定されていることが多いが、何ら事前予告なき廃止の有効性については法律論として争いが生じ得えます。

実務上は、サービス終了までに一定の予告期間を設けることが多いです。特に、サービス内でポイントやゲーム内通貨を発行している場合には、資金決済法との関係から、その利用にも配慮した期間設計が必要です。

さらに、利用者が有償で購入したポイント等がある場合には、資金決済法上、払戻し申出期間として最低60日間が必要となることも念頭に置いた対応が求められます(資金決済法20条2項2号)。

メタバースビジネスに固有の条項

メタバースビジネスは現時点において解釈が明確でない点も多く、当事者間の合意に基づいて整理できる場面も多いため、当事者間の合意として処理できるよう利用規約で解釈を定めておくことが望ましいです。

(1)UGC(ユーザー生成コンテンツ)の権利処理

メタバースビジネスの中で利用者が関与し生成したコンテンツ(UGC)が存在する場合、その権利処理および利用規約上の手当てが重要となります。

UGCに関する知的財産権の帰属は法律上一義的に定まるものではないが、利用者が生成したコンテンツである以上、当該利用者に権利帰属するという考え方もあり得えます。そのため、会社としては保守的に、UGCに係る権利の譲渡を受けておくことや、ライセンスを受けること(会社側で別のコンテンツに改変することも可能とするなど)が選択肢です。

また、特に2以上のプラットフォームが関与するケースでは、プラットフォーマー間での権利関係、異なるプラットフォームを利用する利用者間での権利関係など、権利関係がより複雑になることも想定されます。

(2)オープンメタバースへの対応

将来的には、特定のプラットフォームで作成・購入したアバターやデジタルグッズが他のプラットフォームでも利用可能となるオープンメタバース化が想定される。この場合、以下の点を利用規約に反映することが必要です。

  • 各プラットフォーム内の契約関係(アバターやデジタルグッズの利用者に対する利用許諾)を他のプラットフォームにどう接続するか
  • プラットフォームごとに利用許諾の条件が異なる事態を避けるための契約条件の統一
  • 他のプラットフォームでのデジタルグッズの利用・転売の許容範囲

(3)新しい類型の迷惑行為への対応

メタバースでは、既存のSNSやメッセージアプリと比べて利用者に臨場感・没入感が生じるため、アバターを介した暴力行為や痴漢行為など、新しい類型の迷惑行為が発生することが考えられます。これらの行為は既存の刑罰法規に必ずしも該当しないケースも含まれるため、サービス事業者が自ら設定するルールとして、利用規約上の禁止事項として適切に手当てを行うことが望まれます

具体的には、以下のような行為を禁止事項として列挙することが考えられます。

  • 他の利用者のアバターを物理的に追い詰める行為
  • 他の利用者のアバターの通常の動きを妨げる行為
  • 他の利用者のアバターのパーソナルスペースに侵入する行為
  • 性的なやり方で他の利用者のアバターに触れる、または性的な動作を行う行為

また、カメラ機能等を実装する場合には、利用者のアバターの外見や行動が他の利用者から撮影されたりSNS上で配信されたりすることも想定されるため、サービス設計に起因するトラブルを防止するための条項を別途設けることも重要です。

特商法に基づく最終確認画面表示

2022年6月1日に改正特商法が施行されたことにより、ゲームビジネスにおいても「申込みに係る手続が表示される映像面」において所定の事項を表示する義務が生じる場面があります。

具体的には、以下の2つの場面での対応が必要です。

  1. 現金でゲーム内アイテムもしくはサブスクリプション等を購入し、またはガチャを回す場合
  2. 資金決済法3条1項に規定する「前払式支払手段」(ゲーム内通貨)を使用してゲーム内アイテム等を購入し、またはガチャを回す場合

「申込みに係る手続が表示される映像面」とは、利用者が画面内に設けられている申込みボタン等をクリックすることにより契約の申込みが完了することとなる画面が原則として該当します(通信販売の申込表示ガイドライン2頁)。ゲームアプリにおいては、アイテムを購入する・ガチャを回すといったサービスの申込みを決定する画面がこれに該当すると考えられます。

おわりに

ゲーム・メタバースビジネスにおける利用規約は、単なるサービス利用条件の整理にとどまらず、資金決済法・特商法・著作権法など複数の法規制への対応を包括的に実装する重要な法的ツールです。特にメタバース領域では解釈が未確定な論点も多く、当事者間の合意による柔軟な設計と、法令・ガイドラインの動向を踏まえた継続的なアップデートが求められます。

利用規約の設計段階から法律専門家が関与し、ビジネスモデルの特性を踏まえた実践的な条項設計を行うことが、リスク管理の観点から不可欠といえるでしょう。

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