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ITスタートアップ必見!契約と資本政策で失敗しないための弁護士アドバイス

IT企業のための法律

ITスタートアップを起業し、運営していく中で、多くのスタートアップが陥る罠があります。そこで今回は、ITスタートアップを経営していく上で、注意すべき契約と、それに付随する資本政策について解説をしていきます。

株主間契約とは

ITスタートアップ企業が資金調達を行う際には、投資家と株主間契約を結ぶことが一般的です。

株主間契約は、投資後の企業運営や投資家の権利、情報開示の義務など、会社と株主(投資家)の間で合意した事項を定めたものです。

この契約によって、投資家は企業の経営に関与する権利を得ることができますが、同時に会社の成長や経営方針について一定のルールが設けられます。

株主間契約は、スタートアップ企業が投資家からの出資を受け入れる際に、双方の権利や義務を明確にするための重要な契約です。

優先株主等の定義

株主間契約では、普通株式と優先株式のように異なる種類の株式が定義されることが一般的です。

この定義によって、各株主が持つ権利や義務が明確になり、経営判断や会社の重要な意思決定の際に、どの株主がどの程度の影響力を持つかが決まります。

例えば、優先株主は、普通株主に先立って配当や清算時の残余財産の分配を受ける権利が与えられることが多く、これが投資家にとっての大きなメリットとなります。

また、一定数の優先株主によって形成される「多数優先株主」というグループも定義されることがあり、このグループが特定の承認事項に対して決定権を持つことがあります。

役員指名権・オブザーバー指名権

投資家が企業の役員を指名する権利や、取締役会に参加するオブザーバーを指名する権利を持つことがあります。

これらの権利は、株主間契約に明記されることで、投資家が企業の経営に直接的な影響を与える手段として機能します。

リードVC(ベンチャーキャピタル)のような主要な投資家には、取締役の指名権が与えられ、他の投資家にはオブザーバーの指名権が付与されることが一般的です。

これにより、投資家は企業の重要な経営判断に対する監視役としての役割を果たすことができ、企業の成長をサポートします。

売却請求権(ドラッグ・アロング・ライト)

売却請求権は、一定の条件下で主要株主が他の株主に対して、第三者への株式売却に応じるよう要求できる権利です。

この権利は、ベンチャーキャピタルがイグジットを行う際に重要な役割を果たします

例えば、企業が買収される際、少数株主が反対することで取引が成立しないリスクを回避するために、この条項が活用されます。

ドラッグ・アロング・ライトは、投資家が希望するタイミングでのイグジットを確保し、投資回収を容易にするための手段として非常に有用です。

売主追加請求権(タグ・アロング・ライト)

売主追加請求権は、株主の一部が第三者に株式を売却する際、他の株主も同じ条件で株式を売却できる権利です。

この権利により、少数株主は主要株主がイグジットする際に、その利益機会を共有することができます。

タグ・アロング・ライトは、少数株主が利益機会を逃さないようにするための保護条項であり、投資家間の公平性を確保する上で重要な役割を果たします。

株主間契約におけるこれらの条項は、スタートアップ企業と投資家の双方が利益を最大化し、リスクを最小化するための重要な要素です。適切に設計された契約は、企業の成長と安定した経営を支える基盤となります。

スタートアップにおける投資契約書に規定する株式買取請求権(プット・オプション)

株式買取請求権、一般的に「プット・オプション」と呼ばれるこの条項は、スタートアップ企業と投資家の間で取り交わされる契約において、非常に重要な要素となります。

プット・オプションは、投資家が保有する株式を特定の条件下で売却する権利を持つことを指し、その対象は会社や創業者、または第三者に対して行使されます。

この条項は、スタートアップ企業にとって資金調達の手段として有効である一方で、適用される状況や条件については慎重に考慮する必要があります。

プット・オプションの概要と導入の背景

プット・オプションは、主に投資家が投資先企業からのリターンを確保するためのリスク管理手段として導入されます。

このオプションは、投資先企業の義務違反や、契約上の重大な違反が発生した場合に、投資家が自身の持つ株式を一定の条件で売却できる権利を持つことを保証するものです。

例えば、企業が株式引受契約に基づく表明保証条項に違反したり、投資契約上の義務を履行できない場合などがこれに該当します。

日本ではプット・オプションがすでに普及しており、多くの投資契約において標準的な条項とされています。

しかし、これを導入する際には、スタートアップの経営陣がそれをどのように捉え、対応するかが重要です。なぜなら、プット・オプションを拒絶する経営者は、投資家からの信頼を失う可能性があり、それが企業の成長に悪影響を及ぼすことがあるためです。

プット・オプションの利点と懸念点

プット・オプションには、投資家にとって複数の利点があります。

まず、企業が予期せぬ事態に陥った場合でも、投資家は自分の投資を守る手段を持つことができます。これにより、投資家は安心してスタートアップに資金を提供できる環境が整います。

企業に対して契約履行の厳格さを求めることができるため、企業の規律を保つ役割も果たします。

一方で、スタートアップ企業にとっては、プット・オプションが大きなプレッシャーとなることも事実です。

特に、企業が成長途上にある場合、契約違反が生じるリスクは高く、それが原因でプット・オプションが行使されると、企業の経営に大きな打撃を与える可能性があります。

さらに、プット・オプションが行使された場合、企業や創業者が多額の資金を用意しなければならず、それが企業の資金繰りを悪化させるリスクもあります。

実際にあったプット・オプションの問題事例

プット・オプションが実際に問題を引き起こした事例はいくつかあります。

例えば、事業計画が順調に進んでいたにもかかわらず、投資家が予期せぬ要求をしてきたケースです。

あるスタートアップは、知的財産権を譲渡するなどの不利益な取引を迫られ、それを拒否したためにプット・オプションを行使される状況に陥りました。これにより、企業は不必要な損失を被り、経営方針にも影響を受ける結果となりました。

他の事例では、定期的な事業報告の遅延などの小さな違反でさえもプット・オプションが行使され、株式を高額で買い戻すことを要求されたケースがあります。

このような条項は、スタートアップにとって非常に厳しいものであり、資金繰りに苦しむ中で過度な負担となることがあります。

プット・オプションは慎重な採用が必要

これらの事例からもわかるように、プット・オプションを採用する場合は、その条件や内容について慎重に検討することが求められます。

創業者個人が株式買取の義務者に含まれる場合、そのリスクは計り知れません。創業者個人が保証を負うと、事業の失敗が個人の生活に直接的な影響を及ぼすことになるためです。

企業が株式買取義務を負う場合でも、法律上の制約によって実際に株式を買い戻すことが困難なケースもあります。

例えば、企業が十分な分配可能額を持っていない場合、自己株式の取得が制限されるため、実際にプット・オプションを行使することができないこともあります。

以上のように、プット・オプションはスタートアップ企業にとって重要な契約条項である一方で、その取り扱いには慎重を期す必要があります。

投資家との健全な関係を保つためには、プット・オプションの条件を適切に設定し、企業と創業者の双方にとって公平なリスク分担がなされるようにすることが求められます。

スタートアップ経営者としては、投資契約を締結する際にはこの点に十分留意し、必要に応じて専門家の意見を求めるなどして、最適な判断を下すことが重要です。

スタートアップ企業で重要な資本政策

資本政策は、スタートアップ企業にとって極めて重要な戦略の一環であり、企業の長期的な成長と成功を支える基盤です。

IT企業のように変化が激しく、資金需要が高い業界では、資本政策の設計と実行が企業の命運を握るといっても過言ではありません。

資本政策は、企業がどのように資金を調達し、資本構成を管理していくかを計画するものです。そのためには、経営者が企業の成長段階に応じた資金調達の方法やタイミングを戦略的に考慮する必要があります。

資本政策の重要性

資本政策とは、企業がどのようにして必要な資金を調達し、どのようにその資本を管理するかという戦略的な計画のことです。

これは単に資金を集める手段ではなく、企業の成長を支えるために、どのようにして資本構成を最適化し、リスクを管理するかを含んでいます。

スタートアップ企業においては、資本政策は特に重要です。なぜなら、企業の初期段階では多くの場合、売上だけでは必要な資金を賄うことができないため、外部からの資金調達が不可欠だからです。

資本政策を効果的に策定するためには、まず自社の事業計画を明確にする必要があります。

事業計画は、企業が何を、いつ、どのように実現するかを示すものであり、それに基づいて資金の必要性が決定されます。

資金が必要となる時期とその額を予測し、それに応じた資本政策を立てることが、持続可能な成長を実現するための鍵となります。

資金調達のステージと戦略

スタートアップ企業の資金調達は、一般的にいくつかのステージに分けられます。これらのステージごとに必要な資金の額や調達手段が異なり、各段階での資本政策が求められます。

シードステージ

シードステージは、企業が設立された直後の段階であり、事業アイデアを実現するための初期資金を調達する時期です。

この段階での資金調達は、主にエンジェル投資家やインキュベーター、アクセラレーター、または個人的なつながりを通じて行われます。

調達額は比較的小さく、企業の価値もまだ低いため、出資者との間で将来のビジョンや成長性をしっかりと共有し、信頼関係を築くことが重要です。

シリーズA

シリーズAは、企業がプロダクトやサービスを市場に投入し、事業を拡大するための資金を調達するステージです。

この段階では、プロダクトの開発や市場開拓、チームの拡充などに多額の資金が必要とされます。

調達先は主にベンチャーキャピタル(VC)であり、企業は一定の実績を示すことで、より大きな資金を引き出すことが可能となります。

シリーズAの資金調達では、企業価値の向上とともに、投資家へのリターンをどう確保するかが重要なポイントとなります。

シリーズB、シリーズC

シリーズBシリーズCは、企業がさらに成長し、事業を拡大するための資金を調達するステージです。

この段階では、既存のビジネスモデルを拡大し、新しい市場への進出や、製品ラインの多様化などを目指します。資金調達額も大きくなり、数億円から数十億円規模に達することがあります。

調達先は引き続きベンチャーキャピタルが中心ですが、戦略的なパートナーシップを結ぶ企業からの出資も増えてきます。

この段階では、より高いリターンを期待する投資家に対し、企業の持続的成長をどう実現するかが問われます。

持株割合と資本構成の管理

資本政策において、もう一つの重要な要素が「持株割合」と「資本構成」の管理です。

スタートアップ企業では、資金調達のたびに新たな株式を発行しなければならないため、創業者や初期の株主の持株割合が希薄化するリスクがあります。この希薄化をどのように管理するかが、資本政策の中核となります。

持株割合が大きく変動することは、経営権の喪失につながる可能性があるため、創業者や経営陣にとって非常に重要です。

初期段階での過剰な株式の発行は、後の資金調達でさらなる希薄化を引き起こし、最終的には創業者の持株割合が過半数を割り込むこともあります。

このような事態を避けるためには、最初から慎重な資本政策を策定し、各資金調達ラウンドでの株式発行の影響を予測し、必要な調整を行うことが求められます。

資本政策の実行と調整

資本政策を策定するだけでなく、それを実行し、必要に応じて調整することも重要です。

市場環境の変化や事業の進捗状況に応じて、資本政策は柔軟に対応する必要があります。

例えば、予想以上の成長が見込まれる場合には、追加の資金調達を行い、事業拡大のスピードを加速することが求められます。

一方で、予期せぬ経済状況の悪化や競争環境の変化により、資金調達が困難になることもあるため、その際には既存の資源を最大限に活用し、資本効率を高める方策を講じることが必要です。

資本政策を実行する際には、投資家との関係も重要です。

投資家は企業の成長を支えるパートナーであり、彼らの期待に応えることで、継続的な支援を得ることが可能になります。そのため、投資家とのコミュニケーションを密にし、企業の成長戦略や資本政策の意図を共有することが求められます。

長期的な視点での資本政策の策定が必要!

最後に、資本政策は短期的な資金調達の手段ではなく、長期的な企業の成長を見据えた戦略であるべきです。

スタートアップ企業は、常に変化し続ける市場環境の中で生き残り、成長するために、持続可能な資本政策を策定することが求められます。

そのためには、事業計画を基盤に、各ステージでの資金調達の必要性を明確にし、それに基づいて資本政策を練り上げることが重要です。

資本政策は事業の成長とともに見直されるべきものであり、常に最新の情報と状況に基づいて更新されるべきです。

これにより、企業は成長の各ステージで最適な資本構成を維持し、持続的な成長と投資家との健全な関係を築くことが可能になります。

資本政策はスタートアップ企業の成長と成功を支えるための重要な要素です。

スタートアップの経営者としては、この資本政策をしっかりと理解し、適切に実行することが求められます!