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【徹底解説】企業が押さえるべき「消費者契約法」の注意点と対応策
消費者契約法は、消費者契約のトラブル防止不当な契約からの救済や保護を目的とするものです。
監督官庁は消費者庁で、事業者・消費者間の取引が対象でいわゆるBtoC取引が対象です。法人対法人のBtoB取引は対象外になります。
「不当な勧誘」をされたことによる取消権
契約は一度締結すると相手方に契約違反なことがない限り、取り消すことはできません。
しかし、消費者契約法では、消費者は事業者による不当な勧誘や情報提供に基づいて締結した契約を取り消すことができます。
消費者契約法で規定されている「不当な勧誘」について解説していきます。以下は、取り消しが認められる主なケースです。
不実告知
商品やサービスの性能や効果についてなどの重要事項について事実と異なる説明を行う行為をいいます。ここでいう重要な事項とは商品・サービスの質、用途その他の内容または対価その他の取引条件に関する事項のことです。
商品・サービスの特徴について、事実と異なることをいうと「不実告知」になるというイメージでよいと思います。
不実告知の具体例
- 商品の性能を誇張:この製品は永久に効果が持続します」といった虚偽の説明
- 価格の誤解を招く表示:今だけ特別価格」と説明しながら、実際は常にその価格で販売している
たとえ事業者が意図的でなく、自身の誤解や勘違いで虚偽の情報を伝えた場合でも、不実告知に該当する可能性があります。事業者側の過失が問われるため、正確な情報提供が求められます。
断定的判断の提供
断定的判断の提供とは、不確実な事柄について「必ず」や「絶対」といった断定的な表現を用いて説明する行為です。このような説明により、消費者が誤解し契約を結んだ場合、その契約は取消の対象となります。
断定的判断の具体例
- 投資商品に対する説明:この投資信託は必ず利益が出ます
- 値上がりを保証する発言:この不動産は絶対に価格が上がります
一方で、以下のような説明は断定的判断には該当しません。
- 過去の実績を述べる:これまでの取引では〇〇%の値上がり実績があります
- 主観的意見を述べる:私は良い商品だと思います
不利益事実の不告知
不利益事実の不告知とは、消費者にとって不利となる情報を、故意または重大な過失により告げなかった場合を指します。
不利益事実の不告知の具体例
- 製品の欠陥を隠す:「この製品は問題ありません」と説明しながら、実際にはリコール対象となっている
- 契約条件の一部を告げない:「途中解約は可能です」と説明しながら、実際には解約手数料が発生することを伝えない
事業者は、消費者に不利益となる事実を積極的に告知し、消費者が十分に情報を得た上で意思決定を行える環境を整える責任があります。
過量契約
過量契約とは、消費者にとって必要以上の数量やサービスを契約させる行為を指します。このような契約は、特に高齢者や判断能力が低下している消費者に対して問題となります。
過量契約の具体例
- 過剰な商品の販売:一人暮らしの高齢者に、大量の食料品や日用品を販売する
- 必要以上のサービス契約:すでに保有している保証サービスに追加で同様のサービスを契約させる
過量契約が行われた場合、消費者は契約を取り消すことができます。
威迫や不当な心理的圧力
2023年の法改正では、消費者を心理的に追い詰めるような威迫行為も不当な勧誘として明確に規定されました。具体的には、以下のような行為が該当します。
- 相談の妨害:学生に対して「親に相談する必要はない、大人だから自分で決めるべきだ」と発言して契約を迫る
- 圧迫的な態度:強い口調で契約を急かし、冷静な判断を妨げる
契約が無効になるケース:NGな契約条項
消費者契約法では、消費者に不利な契約条項が存在する場合、その条項は無効とされます。無効となった条項は、法的に「なかったもの」とみなされるため、事業者はその条項に基づく主張を行うことができません。
ここからは具体的にどのような契約条項が無効とされるかを詳しく解説します。
事業者が責任を負わないとする条項
事業者が一切の責任を免除されるような条項は、消費者契約法の下で無効とされます。例えば、以下のような条項が該当します。
- いかなる理由があっても、損害賠償責任を負わない
- 事業者に故意や重大な過失があっても責任を負わない
損害賠償の制限条項
消費者に「発生した損害を賠償する責任」を限定する条項も無効となる場合があります。特に以下のようなケースが問題視されます。
- 過大な損害賠償の請求:消費者が契約を解除した場合に、実際の損害を大きく超える金額を請求する条項
- 損害賠償の上限設定:「事業者の損害賠償責任は〇〇円を限度とする」といった条項
これらの条項は、消費者の正当な権利を著しく制限するものであり、公平性を欠くため無効とされます。
キャンセルや返品を一切認めない条項
消費者にキャンセルや返品、交換を一切認めない条項も無効です。具体例として、以下のような条項が挙げられます。
- 販売した商品については、いかなる理由があってもキャンセル・返品・交換は認めない
- サービス提供後の返金は一切行わない
消費者にとって契約内容が不明確な場合や、購入後に問題が発覚した場合でも適切な対応が取れないような条項は、公平な取引の妨げとなるため許されません。
不当なキャンセル料を設定する条項
消費者が契約を解除した場合に支払うキャンセル料が、事業者が受けた平均的な損害額を大きく超える場合、その条項は無効とされます。
無効になる具体例
- 商品購入時のキャンセル料が商品の価格を大幅に上回る設定
- サービス契約の途中解約時に、高額な違約金を請求する条項
キャンセル料の設定は、事業者が実際に被る損害額を基準とする必要があります。それを超える金額を消費者に負担させることは不当とみなされます。
消費者に一方的に不利な条項
法律で定められた基準よりも消費者に不利となる条項は、消費者契約法の下で無効とされます。以下のような条項が該当します。
- 消費者の損害賠償請求権を放棄させる条項
- 事業者の過失が認められる場合でも、消費者に損害が発生したとして責任を負わない
これらの条項は、消費者の権利を一方的に制限し、公平性を欠くため無効となります。
消費者に義務を過大に負わせる条項
消費者に対して過剰な義務を課す条項も無効とされます。例えば以下のような場合には無効となります。
- 消費者が契約解除を希望する際に、過剰な手続きや費用を要求する条項
- 商品購入後のアフターサービスを事業者が一切行わないと明記する条項
2023年の消費者契約法改正
2023年の消費者契約法改正は、消費者保護をさらに強化する重要な内容を含んでいます。
この改正は、事業者が行う不当な取引行為に対して、消費者がより適切に対応できるようにするための仕組みを整備し、また、適格消費者団体の役割を拡充しました。ここからは改正の具体的な内容とその影響を詳しく解説します。
取消可能な行為の範囲の拡大
2023年の改正では、従来の取消可能行為に加えて、新たに3つの類型が追加されました。これにより、消費者が不当に結ばされた契約を取り消す権利が広がりました。
(1)勧誘目的を隠して退去困難な場所に誘導する行為
事業者が消費者に対して勧誘の目的を告げずに、交通の便が悪い山や海などの退去困難な場所に誘導し、そこで契約を迫る行為が取り消しの対象となりました。
具体例:旅行やイベントと偽って消費者を遠隔地に連れ出し、セミナーや商談を通じて商品を購入させる行為。
(2)相談を妨害する威迫的な勧誘
事業者が威迫的な言動を交え、消費者が親や友人、専門家に相談することを妨げる行為も取消の対象となります。
具体例:学生に対し、「大人だから親に相談する必要はない」と言って意思決定を急かし、冷静な判断を妨げる行為。
(3)契約前に原状回復が困難な変更を加える行為
事業者が契約前に商品の仕様や形状を勝手に変更し、元に戻すことが難しい状態にして契約を迫る行為が新たに規制されました。
具体例:リフォーム業者が事前の合意なしに家屋を解体し、その費用を請求するようなケース。
適格消費者団体の権限拡大
消費者契約法の改正では、適格消費者団体や特定適格消費者団体の役割が拡充され、事業者に対する監視や訴訟の権限が強化されました。
適格消費者団体は、違法な契約条項の無効や契約に基づく不当な請求の停止を求める訴訟を提起できます。このような訴訟は、消費者が個別に行動する必要がないため、多くの消費者にとって利便性が高いです。
特定適格消費者団体が行う「消費者裁判手続特例法」に基づく集団訴訟では、以下のような手順が取られます。
- 共通義務確認訴訟:事業者が消費者に対して法的責任を負うか否かを確認する
- 簡易確定手続:事業者が誰にいくらを支払うべきかを確定する
また従来の制度では、主に財産的損害に限られていた請求対象が、改正後は精神的損害に基づく慰謝料請求も可能となりました。さらに、事業者だけでなく、個人も対象に含まれるようになりました。
まとめ
消費者契約法は、消費者を保護するだけでなく、事業者に対して適切な責任を求める法律です。違反すれば、契約の取消や無効といった重大なリスクが生じます。2023年の改正ではさらに規制が強化され、事業者の責任範囲が拡大しました。
適切な法令遵守と内部対応の整備を行うことで、企業の信頼性を高めるとともに法的リスクを最小化しましょう。