弊社では、SES事業者からのご相談をよく受けます。主にはSES事業をグレーな運用から、しっかりと適法なものにしていきたいというものです。
その中で、具体的な運用の相談をされることも多くあり、多くの事業者から共通の質問をされることも多いです。そこで今回はSES事業者からよくある質問と法律的な回答を紹介します。
この記事の目次
クライアントが、開発業務の作業工程に関して、仕事の順序の指示を行ったり、派遣されているエンジニアの配置の決定を行ったりしてもいいのでしょうか?
また、クライアントが直接派遣されたエンジニアに指示は行わないのですが、クライアントが作成した作業指示書をSES事業者に渡してそのとおりに作業を行わせてもいいですか?
クライアントが、仕事の順序・方法等の指示、SESによって、派遣されたエンジニアの配置、派遣されたエンジニア1人ひとりへの仕事の割付等を決定したりすることは、法律違反と判断されます。
上記は口頭に限らず、文書の場合にも違法と判断されます。
SES事業の場合、派遣契約とは異なり、作業指示や労務管理などクライアントが行っていけません。SES事業者は、作業指示や労務管理などをクライアントからは独立して、自ら行う必要があります。
それは、口頭だけにとどまらず、書面によるものも含まれます。
特に、作業指示書、発注書や仕様書、指示書などに詳細な手順などがある場合には注意が必要です。ここで難しいのが、作業指示書の内容です。
作業の依頼内容が「○○システムの開発」などですと、あまりに広がるので、現場での指示が疑われます。
かといって、素人でも作業できてしまうような詳細過ぎる依頼内容の場合でも、単なる労働力の提供として偽装請負の一部とみなされてしまう可能性があるのです。
明確な基準はありませんが、作業者がその仕様書や指示書を見て、自分の考える工程で作業ができるのかが一つポイントとなります。例えば、WBSなどの工程表レベルのが、一つのイメージです。
SES事業の派遣エンジニアに対して、クライアントは指揮命令を行ってはならないと聞きましたが、技術指導等を行うと、法律違反となりますか?
作業指示と技術指導との違いは、明確なものはありませんが、以下のような基準があります。
例えば、次の例に該当するものについては、違法と判断されないとされています。
ただし、上記については、SES事業者の監督の下で行なう必要があります。
さらに、業務内容が頻繁に変わるので、その度に、技術指導が必要になってくる場合、これは技術指導ではなく、作業指示に該当するので、クライアントから直接の指示はできません。
あくまで、SES事業者とクライアント企業の会社間また両社の責任者間のやり取りが必要です。SES事業者にとって、作業指示、指揮命令関係は、非常に重要なポイントです。
ここがSES事業が適法か違法になるかの中心的なポイントといっても、過言ではありません。
SES事業者としては、是非、ここのポイントをしっかりと押さえるようにしましょう!
クライアントとの打ち合わせ・会議や、クライアントの朝礼に、SES事業者の管理責任者だけでなく派遣されているエンジニアも出席した場合、SESでなく労働者派遣事業となりますか?
SES事業者の管理責任者自身の判断により、派遣されたエンジニアが、同席すること自体はOKです。
つまり、クライアントから直接指示が出ていなければ、派遣されたエンジニアが、打ち合わせ同席することもOKです。
しかし、打ち合わせ等の際、クライアントからの作業の順序や割振りなどの指示がある場合には、指揮命令があったとされてしまう可能性が高いです。
直接の指示は当然ですが、間接的な指示が発生しないようにも注意が必要です。
SES業務を行うに当たり、情報漏洩防止のため、クライアントが、派遣エンジニアからSES事業者あての誓約書を提出させ、その写しをクライアントに提出するよう求めることは可能ですか?
また、SES事業者の業務遂行能力の確認のため、派遣エンジニアの職務経歴書を求めたり事前面談を行ったりすることは可能ですか?
クライアントによる派遣エンジニアの選定につながるものでなければ、情報漏洩防止のため、派遣エンジニアのSES事業者あての誓約書の写しを求めてもOKです。
しかし、クライアントがSES事業者に対し、派遣エンジニアの職務経歴書を求めたり事前面談を行うことは、原則NGです。
また、職務経歴書の提出や事前面談の結果、クライアントが特定エンジニアの指名や拒否をした場合、クライアントが派遣されたエンジニアの配置等の決定及び変更に関与していると判断され、違法となります。
SES事業者は、クライアントが、派遣されたエンジニアの選定することはできません。SES事業の場合は、発注者の依頼は、SES事業者とそのエンジニアの企画又は専門的な技術若しくは経験で業務を処理するであり「業務の委託」だからです。
面接という言葉は使わないものの、事前面談などの名目で行うSES事業者は多くいます。しかし、実際に労働局は、名目は問わず、その違法性を判断します。
事実上面接と同じと判断されれば、当然指摘の対象となります。
派遣エンジニアの職務経歴書を提出を求めることは、エンジニアの選定に関わっているとされてしまう可能性が高いです。
クライアントの社内セキュリティの関係で、クライアントの施設内に入場する派遣エンジニアの氏名をあらかじめSES事業者から提出させ、クライアントが確認することは問題がありますか?
クライアントによる請負労働者の選定につながるものでなければ、OKです。
企業における秘密保持の必要性があれば、派遣労働者の氏名をあらかじめクライアントに提出することは大丈夫です。
ただし、SES事業者からクライアントへ派遣エンジニアの氏名等の個人情報を提供する際には、個人情報保護法等に基づく適正な取扱(例えば、派遣エンジニアの了解を得る等)が必要です。
SES事業の管理責任者が作業者を兼任する場合、管理責任者が不在になる場合も発生しますが、法律上、問題がありますか?
作業者が、責任者を兼務していること自体は、原則OKです。
しかし、作業者が1人しかいない1人現場で、その方が管理責任者を兼任している場合には、偽装請負と判断されることがあります。
管理責任者不在時には、代理の者を選任しておけば、OKです。
しかし、業務の都合上、実際の管理業務ができていない場合には、法律違反と判断されることもあります。
通常、指揮命令は会社間でやり取りを行う必要があります。しかし、業務の簡略化のため、現場責任者間で行う場合も多いです。
そして、SES事業者の管理責任者は、会社に代わり、作業場での指示、労働者の管理、クライアントとの注文に関する交渉をすることができます。
作業者であり責任者である(兼任する)こと自体はOKです。
しかし、作業者が1人の場合や、管理業務がおろそかになっている場合には、クライアントから直接の指揮命令があると判断される可能性がありますので、注意しましょう!
SES契約において、客先常駐する技術者が1人、責任者を非常駐の営業を1人としたいと考えています。
業務指示等は、必要に応じて現場を巡回する予定です。
このようなやり方は、偽装請負となるなど、法的な問題はありますでしょうか?
常駐じゃなくてもOK、掛け持ちもOK。現場責任者や管理者は、客先に常駐するものでなくても問題はありません。
また、営業職などが複数の現場の責任者となることも、それ自体に問題ありません。
上記のとおり、責任者は常駐でなくても問題はありません。
しかし、責任者がいない間にクライアントからの指揮命令や労務管理が発生してしまえば、責任者がいないのと一緒であり、偽装請負と判断されることなりかねません。
従って、責任者がいないような状態でも、次のような対応を取っておくことが重要と言えます。
まだまだSES事業者によくある質問と法律的回答があり、それを質問と回答集という形でまとめました!LINE登録をして頂けると、SESのよくある質問と回答集をダウンロードできますので、是非LINE登録してみてください。