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代金を支払ってもらう!時効を止める!債務承認弁済契約

IT企業のための法律

ベンチャー企業にとっての債務承認弁済契約

ベンチャー企業にとって、自社が商品やサービスを提供したにもかかわらず、取引先の都合によって代金がスムーズに入金されない事態は、その金額や資金繰りのタイミングによっては会社の存続にも関わる重大な問題になりかねません。

そのため、日頃より与信管理についてはしっかりと行うべきではありますが、いざ支払期限に入金がない場合には、早急に弁済の確保のために取引先との間で支払に関する約束を取り付けるべきであり、場合によっては担保の提供によって債権の保全を図る必要もあります。

今回は、支払の合意ができた場合に作成される債務承認弁済契約書について、債権の保全のために新たに連帯保証人を付けた場合のポイントについてお話します。

債務承認弁済契約(連帯保証あり)における実務ポイント

債務承認弁済契約書においては、まず、自社のどのような売掛金についての債権(取引先から見れば債務)を承認させるかについて明確にし、特定することが重要です。

当該契約書は、既存の債務を認めて弁済を約束するものでありますので、債務の特定をしっかりしておかないと、債務の存在について後から争われることになり(そのような債務を認めた覚えはないなど)、せっかくの時効の更新の効力(時効進行がゼロになる)が否定される可能性もあります。

そのため、いつのどのような債務についてのものなのかを特定した上で、その債務を承認させることが重要です。

なお、このような債務承認は、取引先から、「まだ契約内容の履行がなされていない。」との主張を防ぐというメリットや金額に争いがある場合にそれを確定するというメリットもあります。

条項例

第○条(債務承認)
乙は、甲に対し、下記の売買契約に基づく売買代金債務について、本日現在、残債務として、金○円の支払義務を負担していることを承認する。
契約日  2020年○月○日 (同日付発注書にかかる契約)
対象物  ○○システム及び関連部品一式
売買代金 ○○○万円
支払期日 2020年○月○日

弁済方法の明記

上記で確認した内容について、弁済方法を一括にするのか分割にするのか、また、支払期限をいつにするのかを明記します。そして、振込口座や振込手数料の負担についても定めておくべきでしょう。

条項例

第○条(弁済合意)
乙は、甲に対して、前条で承認した金○○○万円の支払債務について、次のとおり、分割し、甲の指定する口座に振込んで支払う。
ただし、振込手数料は乙の負担とする。
ア 2020年○月から同年○月まで毎月末日限り ○○万円ずつ
イ 2020年2月末日限り ○○万円

期限の利益喪失条項

債務承認弁済契約書において分割での弁済を認める場合に非常に重要な条項が、期限の利益喪失条項です。

各種ひな型には入っているものですが、特に一から契約書を作る場合には条項自体が抜けている場合もよく見受けられます。仮にこの条項がないとすれば、取引先が支払を怠ったとしても、全額の請求を行う場合には最終の支払期限まで期限の利益が与えられることになります。

これに対しては、催告のうえで、当該契約書自体の解除を行うことで期限の利益を失わせるという方法もありますが、上記のように履行の事実や金額を確定させるメリットや、時効の更新のメリットが失われる可能性もありますので、期限の利益喪失条項は必ず入れておくべき条項といえます。

条項例

第○条(期限の利益の喪失)
乙は、次の各号の一に該当した場合、何らの通知・催告がなくと| も当然に期限の利益を喪失し、甲に対し、直ちに一括にて債務の弁済を行う。
1 第○条の分割弁済を一度でも怠ったとき
2 破産、民事再生手続、会社更生手続、特別清算の申立て及び準備が開始(弁護士からの受任通知の発送を含む。)されたとき
並びに実質的倒産手続(同左)があったとき
3 差押、仮差押、仮処分、強制執行、公租公課の滞納処分があったとき

連帯保証条項

一度支払を怠っており、取引先のみでは信用に不安がある場合には、債権の保全のため、連帯保証人を準備して欲しいと要求する場合も多いです。

また、会社間の取引において代表者の連帯保証をとっていない場合には新たに代表者に個人保証を行ってもらう場合も多いです(会社のみの破産で責任を回避されるのを防ぐため)。

そのような場合には、連帯保証の条項を設けることになりますが、民法改正によって保証を行う際の要件が加重された点については注意が必要です。

まず、事業のために負担する債務について保証人になることを他人に依頼する場合には、主債務者は、保証人に対して保証人になるかどうかの判断する情報として、以下を提供しなければいけないものとされました。

  1. 主債務者の財産や収支の状況
  2. 主債務以外の債務の金額や履行状況等に関する情報
  3. 他に担保提供としようとするものがあればその旨及び内容

主債務者がこれらの情報を提供していないことを知り得た場合には、保証を取り消されるおそれがありますので、主債務者がこれらの情報を保証人に提供していることを確認しておくことが重要です。

その他、契約書には記載する必要はないものの、保証契約締結後に、保証人の請求があれば、債権者は①元本、利息、違約金、損害賠償の不履行の有無、②残額、③弁済期の到来の有無の情報提供が必要とされました。

また、主債務者が期限の利益を喪失した場合には、それを知ってから2か月以内に保証人に通知することも定められましたので注意が必要です。

条項例

第○条(連帯保証)
1 丙は、乙の甲に対する本契約上の債務について連帯保証する。
2 乙は、丙に連帯保証を委託するに際して、乙に関する以下の条項を提供したことを確認する。

①財産お酔い収支の状況
②本契約に基づく債務以外の負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
③本契約に基づく債務の担保として、他に提供し、又は、提供しようとするものがあるときは、その旨及び内容
3 乙は、前項により丙に提供した情報がいずれも真実であることを保証する。
4 丙は、本契約にて連帯保証を行うに先立ち、乙より第2項記載の情報の提供を受け、十分に理解したことを確認する。