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チケットをNFT化をするときの法律的規制を弁護士が解説

チケットをNFT化することが増えている

近年、特に欧米を中心に、プロスポーツチームやイベント主催者がイベントのチケットをNFTとして販売する取り組みが進んでいます。これにより、購入者はNFTチケットを使って入場・観戦するだけでなく、プラットフォーム上で簡単に転売できるシステムが整備されつつあります。

例えば、アメリカのNFLでは2021-22年シーズンから、特定の試合を観戦したファンに対して、その試合のNFTチケットを記念品として無料で配布するサービスを開始しました。MLBでも同様のサービスが2022年から導入されています。

チケットのデジタル化は進んでいますが、さらにNFTとして販売することで次のような利点が考えられます。

①転売の追跡が可能:興行主は転売の状況を把握し、市場のデータを収集できます。
➁収益シェア:転売時に利益の一部を興行主が受け取る仕組みが作れます。
➂偽造防止:NFT化により偽造チケットや詐欺を防止できます。
④保有者の特定:チケット保有者が容易に把握できるため、セキュリティ対策の向上にもつながります。
⑤ファンサービスとの連携:記念品など他のサービスとも組み合わせが可能です。

一方で、ガス代(取引手数料)の問題や、大規模な取引処理がブロックチェーンの処理速度を超えてしまう可能性があります。また、暗号資産を決済手段とする場合、一般のファンにとって利用が難しいという課題もあります。

日本におけるNFTチケットの課題と可能性

日本では、チケットの転売に対して否定的な見方が一般的です。これまで転売を制限するための対策が数多く取られてきましたが、NFTチケットの普及により、興行主が転売から収益を得られる仕組みを作ることでこの問題を解決できる可能性があります。また、取引記録が残るため、大量にチケットを購入して転売する悪質なブローカーを特定しやすくなるでしょう。さらに、反社会的勢力による転売も容易に追跡でき、違法転売の防止に役立つ可能性もあります。

日本でも一部のスポーツリーグやチームが、ファンの不便を解消するためにチケットの再販を一定範囲で許容するプラットフォームを設け始めています。NFTチケットが普及することで、こうしたプラットフォームを通じてチケットの適正な再販市場の発展が期待されます。

NFTチケットに関わる法律的問題

日本において、チケットをNFT化して販売する場合の法律的な議論はまだ十分に行われていません。NFTチケットは、興行主が観客に対して提供する観戦契約上の権利を表すものと考えられ、転売が行われる際には、プラットフォームの利用規約でその権利譲渡を明確にする必要があります。

アメリカでは、2000年代以降、StubHubのような転売プラットフォームが急成長し、興行主もこれらのプラットフォームと協力して収益化に成功しています。結果として、転売は広く許容され、活発な取引が行われています。

一方、日本では、2019年に施行された「チケット不正転売禁止法」により、興行主の同意がない転売や、高額転売が禁止されています。この法律では、特定条件を満たすチケットを「特定興行入場券」と定義し、これに該当するチケットの転売が規制されています。NFTチケットも、これらの条件を満たす場合は「特定興行入場券」とみなされる可能性がありますが、興行主が転売時に利益を得る仕組みを導入できるため、特定のプラットフォームでの転売は許容されることが一般的になる可能性があります。

また、各都道府県の迷惑防止条例により、公共の場所でのダフ屋行為が規制されていますが、オンラインでの転売は基本的に対象外です。

さらに、古物営業法では、チケットの転売事業は古物営業に該当し、都道府県公安委員会の許可が必要になる可能性がありますが、NFT化されたチケットは有体物ではないため、古物営業には該当しないと考えられます。