IT法務・AI・暗号資産ブロックチェーンNFT・web3の法律に詳しい弁護士|中野秀俊
グローウィル国際法律事務所
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マッチング系のサービスで「法律的な規制」を受ける場合と受けない場合

IT企業のための法律

出会い系サイトの適用対象

「デーティング」や「出会い系」のサービスというと、実際の法規制がどうなっているのかよく知らないまま、何となく法律で規制されたり、禁止されたりしていると思っている方も多いと思います。

しかし、「デーティング」や「出会い系」のサービスの中には「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」(以下「出会い系サイト規制法」といいます)が規制対象とする「インターネット異性紹介事業」に該当せず、自由に営むことができるものも多くあります。

また、「インターネット異性「紹介事業」に該当するサービスであっても、出会い系サイト規制法の規制を守って運営している限り、完全に適法なサービスです。

出会い系サイト規制法が規制する「インターネット異性紹介事業」とは、以下の4つの要件をすべて満たすサービスをいいます。

規制対象となる事業はかなり限定されているので、アプリ提供者としては、以下の要件のいずれかを満たさないようサービス設計して規制を回避しつつ、世間で「デーティング」や「出会い系」に分類されるようなサービスを運営することも可能です。

a 面識のない異性との交際を希望する者(異性交際希望者)の求めに応じて、その者の異性交際に関する情報をインターネット上に掲載するサービスを提供していること

「異性との交際」とは、男女の性に着目した交際、すなわち相手方が男であることまたは女であることへの関心が重要な要素となっている感情に基づく交際を意味します。

そこで、男女の性以外の要素に着目した交際であれば、「異性との交際」に当たりません。

例えば、結婚を目的とした交際であれば「異性との交際」に該当しますが、社交ダンスやテニスといった趣味のパートナーとなることが目的であれば「異性との交際」には当たりません

「面識のない」とは、インターネット異性紹介事業をきっかけとして知り合うまで顔見知りでなかった、見ず知らずの関係であることをいいます。顔見知りである者のみを対象としてサービスを提供している場合は「面識のない」という要件を満たしません。

「(異性交際希望者の)求めに応じ」とは、アプリ提供者が、その「運営方針」として、異性交際希望者を対象としてサービスを提供するという意味です。

そこで、アプリ利用者の中に異性交際を希望する意図をもってサービスを利用している者がいたとしても、アプリ提供者の「運営方針」が、異性交際希望者を対象としない場合は、この要件を満たしません。アプリ提供者の「運営方針」は、以下のような事項から客観的に判断されます。

  1. 事業を行う者が示している規約やサイト名その他利用案内、告知等のサービス上の記載等
  2. サービスのシステム(例えば、書き込みをした者の性別を表示する機能の有無等)
  3. 利用者の規約等違反行為に対する事業を行う者の措置等

なお、異性交際目的での利用を禁ずる規約等に反して利用者が異性交際目的で利用している実態がある場合でも、アプリ提供者が異性交際を求める書き込みの削除や書き込んだ者の利用停止措置を行っていれば、当該サービスは、基本的には「インターネット異性紹介事業」に該当しません。

しかし、そのような書き込みを知りながら放置するなど、アプリ提供者がその実態を許容していると認められるときは「インターネット異性紹介事業」に該当する場合があるとされています。

b 異性交際希望者の異性交際に関する情報を公衆が閲覧できるサービスであること

異性交際に関する情報をウェブサーバ等に記録し、アプリ利用者がインターネットを通じて、いつでもその情報を閲覧できる状態にしているサービスはこの要件を満たします。

c インターネット上に掲載された情報を閲覧した異性交際希望者が、その情報を掲載した異性交際希望者と電子メール等を利用して相互に連絡することができるようにするサービスであること

「相互に連絡することができるようにする役務」とは、他人が書き込んだ異性交際に関する情報を閲覧した異性交際希望者(「閲覧者」)が当該情報を書き込んだ異性交際希望者(書込者」)に返信することをきっかけとして閲覧者と書込者が相互に連絡することができるようになる機能を利用することにより、異性交際に関する情報を載せた異性交際希望者とこれを見た者との間で相互に1対1の連絡ができるようにすることをいいます。

例えば、1対1のチャット形式のメッセージを送受信できる機能を提供すれば、この要件を満たします

また、閲覧者側の端末機器に書込者のメールアドレスを通知するとともにメールソフトを立ち上げてメールを送信できる状態にさせるといった場合でもこの要件を満たすとされています。

他方、公開された場でのチャットや、いわゆるレス方式(ウェブサイト上で、書き込まれた情報に対する返答意見が順次記載されていく方式)については、当事者間の1対1の通信ではないことから、この要件を満たしません。

なお、公開された場での書き込みの中に書込者が勝手にメールアドレスを記載しても、当該事業を行う者が相互に連絡することができるようにする役務」を提供しているとはいえません。

しかし、アプリ提供者が、書込者がメールアドレスや電話番号を入力しないと当該書き込みを公衆が閲覧することができないようにしていることにより、書込者の電子メールアドレスや電話番号を閲覧者が知ることができ、1対1で連絡することが可能であるものについては、「相互に連絡することができるようにする役務」の要件を満たすとされています。

d 有償、無償を問わず、a~cのサービスを反復継続して提供していること

アプリ提供者がアプリ利用者から対価を得ていなくても、反復継続してサービスを提供していれば「事業」性があると解釈されています。

規制内容について

届出

サービスが「インターネット異性紹介事業」に該当する場合、このサービスを行おうとする者は、サービスを開始しようとする日の前日までに、サービスの本拠となる事務所の所在地を管轄する都道府県公安委員会に、所轄警察署長を経由して、届出をしなければなりません(出会い系サイト規制法7条1項)。

なお、この届出はインターネット異性紹介事業を行おうとする者ごとに行います。つまり、インターネット異性紹介事業に該当するサービスを複数運営している場合であっても、サービス提供主体が同一である限り、まとめて1つの事業として届出をすることとなります。

児童でないことの確認

インターネット異性紹介事業者は、ユーザーが書き込みや閲覧をしたり、ユーザー同士がメール等で連絡を取り合ったりする際に、原則として、利用の都度、次の①または②の方法をとるか、あるいは①または②の確認を受けた者にID、パスワードを付与し、利用の際には当該識別符号の送信を受けることにより、児童(18歳未満の者)でないことを確認することが義務付けられています。

  1. 運転免許証、国民健康保険被保険者証その他の年齢または生年月日を証する書面のうち、年齢または生年月日、書面の名称、書面の発行発給者の名称に係る部分について提示、写しの送付または画像の送信を受けること
  2. クレジットカードでの支払いなど児童が通常利用できない方法によって料金を支払う旨の同意を得ること

児童による利用禁止の伝達

インターネット異性紹介事業者は、ユーザーが、児童でないことの確認を受ける際、児童がそのインターネット異性紹介事業を利用してはならない旨をウェブサイト上に表示するなどして、ユーザーに伝達することが義務付けられています。

児童による利用禁止の明示

インターネット異性紹介事業者が広告・宣伝を行う場合、「18禁」と表示するなど、文字、図形や記号などで児童が利用してはならない旨をわかりやすく表示しなければなりません。