検索連動型広告とは、ユーザーが検索エンジン(Yahoo!やGoogleなど)で、あるキーワードで検索した際に、そのワードに連動して表示される広告のことです。
企業が、検索連動型広告を行う場合には、検索エンジンの運営業者から、検索キーワードを購入する必要があり、検索に利用される可能性が高いキーワードほど、人気があるとされています。
そこで、人気のある競合他社の商品やサービスを検索するユーザを自社サイトに誘因する手段として、検索キーワードとして競合他社の商標を購入し、当該検索キーワードの検索結果ページの広告スぺースに、自社の広告を表示させることが行われる場合があります。
このような行為は、競合他社の商標権の侵害又は不正競争防止法上の「不正競争」にならないのでしょうか?
この問題については、大阪地裁で判決が出ました(平成19年9月13日)。
事案としては、ある企業Yが、Yahoo!JAPANの検索エンジンに、企業Xが出している商品名で、X商標でもある「カリカセラピ」のキーワードを入力した際に、表示される検索結果ページの広告スぺースに、X商品と同じパパイア発酵食品を販売している旨の広告と自社ホームページを表示させていたというものです。
X社がY社を商標権侵害で訴えたのですが、大阪地裁は、以下の理由からX社の訴えを排斥しています。
原告商標をキーワードとして検索した検索結果ページに被告が広告を掲載することがなぜ原告商標の使用に該当するのか、原告は明らかにしないし、その被告の行為は、商標法2条3項各号に記載された標章の「使用」のいずれの場合にも該当するとは認め難いから、本件における商標法に基づく原告の主張は失当である。
上記の裁判例からすると、検索キーワードとして競合他社の商標を購入し、当該検索キーワードの検索結果ページの広告スぺースに、自社の広告を表示させることは、問題ないようにも思われます。
しかし、上記裁判例は、商標権侵害の主張は認めてはいませんが、場合によっては、民法上の不法行為による損害賠償請求ができる可能性はあります。
つまり、検索キーワードが競合他社の商標であることを認識しながら、人気のある競合他社の商品やサービスを検索するユーザを自社サイトに誘因する手段として、当該検索キーワードを購入することは、いわば「ただ乗り」行為であるともいえます。
我が国の判決ではないですが、欧州司法裁判所2010年3月23日判決では、広告主である競業他社については、取引上の商品またはサービスに関する使用であって、商標の機能を害するおそれがあるとして、商標権侵害の成立の可能性があるとしました。
もちろん、これは、日本の裁判例ではないので、日本において、先例にはなりませんが、商標権侵害になるという主張も、法律的には十分可能で、今後、日本の裁判で認められる可能性があるのです。