オンライングームの開発においては、全て自社で開発するというよりも、背景などの画像を外注することも多いと思います。
その際、イラストのイメージを外注先に伝えるため、文章による説明のほか、CDのジャケット写真、ファッション誌に掲載されている写真やイラスト、及びインターネット上で掲載されている画像等、服装、ポーズ、背景や作風などの参考になる写真、イラスト及び画像等を発注先のために、コピーしたいと考えた場合、何か問題があるのでしょうか?
まず、服装、ポーズ、背景、作風等自体は、著作権法では保護されません。
著作権法が保護する著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであるため、服装、ポーズ、背景及び作風等には、一般にオリジナリティはないと考えられているからです。
したがって、イラスト作成にあたって、これらを模倣して特徴を取り入れても、著作権法上の問題は生じません。
しかし、服装、ポーズ、背景及び作風等の伝達に使用しようとしている写真、イラスト及び画像等は著作物として著作権で保護されているから、イメージを伝えるためとはいえ、これらを著作権者の許諾なく複製すると、著作権の侵害になります。
もっとも、本設問では、文章による説明を行ったうえで画像を掲載するので、著作権法上の「引用」として、許されるのではないかということが問題になります。
引用(著作32条I項)の要件は、以下のようになっています。
上記2、3の判断にあたっては、従来の裁判例では「引用される部分が引用する部分と明瞭に区別されているか(明瞭区別性」「引用される部分が引用する部分に対し従たる関係にあるといえるか(主従関係)」が考慮されています。
写真、イラストなどの画像等が、いずれも一般に出回っているものであり、公表されているものでも問題になるのでしょうか?
外注先にイメージを伝えるといった目的で、当該写真、イラスト及び画像等自体により発注するイラストのイメージを伝えようとする場合、どうしても主たる部分は、その写真、イラストなどのコンテンツになると思います。
よって、具体的な利用態様によるものの、このような利用は、著作権法上の引用として許容される可能性は低いです。
よって、著作権者から許諾を得ることなく、外注先にイメージを伝えるために、既存のコンテンツをコピーすることは、著作権の侵害となる可能性が高いといえます。
イメージの伝達に使用しようとしている画像等が、インターネット上で公開されているからといって、それを当然にコピーしていいということにはならないのです。
外注先にイメージを伝達する方法としては、これらが掲載されているウェブサイトのリンクを貼り付ける方法によれば、コンテンツのコピーは行われず、著作権侵害の問題は生じません。可能であれば、このような方法で代替するのがよいでしょう。
このような方法による場合には、発注書をHTMLメールで作成し、当該メール中のIMGリンクで画像が直接表示されるようにしたとしても、外注先に画像等を複製するわけでも、画像等を送信するわけでもないので、著作権侵害となる可能性は低いと考えられます。
ただし、このようなIMGリンクの方法による場合には、もとの画像等に付されていた著作者表示が欠落したりすることにより、著作者人格権侵害の問題が生じる可能性があるので、注意が必要です。