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FX自動売買ツール提供事業者が知っておくべき法律上の注意点

課金サービスに必要な法律

FX取引などの自動売買ツール(EA=エキスパートアドバイザー等)を日本国内で販売・提供する事業者は、関連する法律を十分に理解し、コンプライアンスに努める必要があります。特に個人投資家向けにサービスを展開する場合、金融関連法規だけでなく消費者保護法規や知的財産法まで幅広い法律の適用可能性があります。

本記事では、FX自動売買ツールを提供・販売する際の主要な法律上の注意点を網羅的に解説します。提供形態(EAプログラム配布、API利用型、クラウド型サービス)や販売モデル(買い切り型、サブスクリプション型、アフィリエイト展開)ごとの違いにも触れながら、それぞれの法的リスクと遵守ポイントを整理します。

目次

金融商品取引法による規制(投資助言・代理業の該当性)

まず最も重要なのが金融商品取引法(金商法)上の規制です。FX取引や株式取引などの金融商品取引に関わる自動売買ツールを提供する場合、その販売形態によっては投資助言・代理業等の登録が必要となる可能性があります。

無登録で該当業務を行うと違法行為となり、刑事罰のリスクもあります(無登録で金融商品取引業を行った者には5年以下の懲役または500万円以下の罰金等の罰則)。

投資助言・代理業登録が不要なケース

金商法上、「不特定多数の者に対し、誰でも自由に購入できる投資分析用ソフトウェアの販売」は、一般的なソフト販売として扱われ、投資助言業に該当しないとされています。

具体的には、会員登録不要でスタンドアローン型(単体で動作する)の売買ツールを一度きりの買い切り販売する場合は、基本的に登録不要と解されています。

たとえば一般書店で誰でも買える投資関連書籍や、インターネット上で誰でもダウンロード購入できるソフトはこの範疇です。

投資助言・代理業に該当するケース

販売形態が会員制であったり、継続課金(サブスクリプション)型の場合は注意が必要です。会員限定で提供するような場合、それ自体が「個別・相対的な投資情報提供」にあたるとして登録が必要になる可能性があります。

実際、会員制で自動売買ソフトを販売・レンタルする行為は投資助言・代理業に該当するとの注意喚起を、北海道財務局が公表しています。

また月額課金で提供するサブスク型のツールは、対価を得て継続的に投資情報やサービスを提供する形態となるため投資助言業に該当する可能性が高いと考えられます。

要するに、「誰でも随時購入可能」な単発売切りか、それとも「会員しか利用できない継続サービス」かで法的扱いが変わるということです。

逆に「売り切りだが分割払い」に過ぎないような場合は直ちに助言業該当と断定はできないものの、慎重な検討が必要です。

サポート内容による違い

ツール販売後のサポート提供にも注意が必要です。インストール方法の説明やバグ修正配布などの技術サポートは問題ありませんが、相場見通しに関するアドバイス、ロジック改良版の提供、データ配信など投資判断に影響するアップデートを行うと、それは実質的に投資助言行為と見做されて登録が必要になります

アップデートと称して利用者に「次はこの銘柄を狙え」などと情報提供すればアウトです。したがって、サポート範囲は純粋なテクニカルサポートに限定し、投資判断に踏み込まないよう明確に線引きしましょう。

投資運用業に該当するリスク

自動売買ツール提供者がさらに踏み込んで利用者の資産運用を代行していると評価される場合、無登録で投資運用業を営んだとして違反になる恐れもあります。

例えばクラウド型サービスで利用者が取引の開始・停止すら自分で決められないような場合や、ツール側が利用者の資金を預かり集めて運用するような場合は、助言の域を超えて投資一任(運用)にあたる可能性があります

その場合、たとえ投資助言業の登録を持っていても投資運用業の無登録として処分対象となり得ます。システムの設計上、最終的な売買実行の権限は常に利用者側に残す(自動売買のオンオフや設定変更がいつでもできる等)ことが重要です。

海外ブローカー紹介(IB行為)への規制

自動売買ツールを販売する際に、特定のFX業者やバイナリーオプション業者への口座開設を勧誘・斡旋する行為は金融商品取引法上の媒介行為に該当し、第一種金融商品取引業の登録が必要となります。
無登録でユーザーを海外の無登録FX業者に紹介すれば違法行為の幇助にもなりかねません

実際に「EA購入者にはこの海外ブローカーがおすすめ」と紹介して報酬を得ていた業者が、無登録営業で摘発されたケースもあります。
このあたりは十分な注意が必要で、問題スキームを法律の専門家に相談すべきでしょう。

以上のように、提供形態や販売モデルによって金融商品取引法上の扱いが大きく異なります。無登録で投資助言業に該当するビジネスを行えば行政処分や刑事罰のリスクがあります。

金融庁や財務局は無登録業者に対し警告を出し、悪質な場合は警察が金商法違反や詐欺罪などで立件することもあります。

資金決済法など(暗号資産関連の留意点等)

続いて資金決済に関する法律(資金決済法)その他、金融インフラに関する法律です。FX自動売買ツールそのものには直接関わらない場合もありますが、サービス内容によっては注意が必要です。

暗号資産(仮想通貨)への対応

近年、ビットコインなど暗号資産の自動売買ツールも普及しつつあります。暗号資産の現物取引は金融商品取引法の規制対象ではありませんが、暗号資産の証拠金取引・デリバティブ取引(いわゆる仮想通貨FX)は金融商品取引法上のデリバティブ取引として規制対象となります。

したがって、ビットコイン等の価格差益を狙うレバレッジ取引をサポートする自動売買ツールは、上記金商法上の投資助言規制の対象になります。一方、現物の暗号資産を売買するボットについては金商法ではなく資金決済法上の規制を検討する必要があります。

暗号資産交換業との関係

ツール提供者がユーザーのために暗号資産の売買の媒介を行うような場合、資金決済法上の暗号資産交換業(またはその媒介)に該当する可能性があります。

例えばクラウド型サービスでユーザーの取引所APIキーを預かり、ユーザーに代わって取引所に売買注文を出す形態は、「暗号資産の売買の代理・媒介」にあたるおそれがあります。暗号資産交換業は登録が必要であり、無登録でこれら行為を行えば違法です。特に海外の無登録暗号資産取引所にユーザーを誘導したり、そこでの売買を代行するようなことは犯罪的行為の幇助とみなされかねず厳禁です。

暗号資産以外の電子決済手段

自動売買サービスの利用料支払いにおいて、プリペイドカードや電子マネー、ポイント等を発行・利用させる場合も資金決済法上の規制を確認しましょう。前払式支払手段(いわゆるプリペイドカードや電子ポイント)を発行する事業者は、発行残高に応じて届出や財産的保証措置が必要となる場合があります。

例えばユーザーがあらかじめポイントを購入し、そのポイントで月額料金を充当するような仕組みは、一定の条件で資金決済法の対象となり得ます。もっとも少額・少人数規模であれば適用除外もありますが、事業拡大時には留意しましょう。

資金移動業等

ツール利用料の決済手段として、銀行振込やクレジットカード決済以外に仮想通貨払いを受け付けたり、ユーザー間で資金をプールして配分するような仕組みがある場合も注意が必要です。
ユーザーから預かった資金をサービス内ウォレットに保管し、後に出金させるようなモデルは、資金移動業(送金サービス)の許可がないと違法となる可能性があります。基本的にはユーザー資金を預かる行為は極力避け、決済は信頼できる決済代行や金融機関経由で行うようにしましょう。

まとめると、FX自動売買ツールに暗号資産取引を絡めたり、独自の決済スキームを導入する場合には、資金決済法や関連する金融規制を必ず確認してください。金融商品取引法と資金決済法はカバーする領域が異なるため、自社サービスがどちらの管轄に入るかを明確にしておくことが重要です。不明な場合は専門家と相談し、必要なら所管官庁(金融庁・財務局や経産省等)への事前照会を行うことも検討しましょう。

景品表示法(誇大広告・景品提供の規制)

自動売買ツールのマーケティングにも法律の目があります。景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、商品・サービスの広告表示や販促キャンペーンについて不当な表現を禁止する法律です。
事業者は、自社の宣伝内容がこの法律に抵触しないよう注意する必要があります。

誇大・誤認表示の禁止

自動売買ツールの広告でありがちな「必ず儲かる!」「絶対に負けない!」といったフレーズは厳禁です。
実際に「誰でも勝てる」「100%利益保証」などと謳ってツールを販売していた業者が、虚偽誇大表示として行政処分や刑事立件された例もあります。

景品表示法では、実際より著しく優良であると誤認させる表示(優良誤認)や、事実と異なる有利な条件を示す表示(有利誤認)を禁止しています。ツールの勝率や利益率のデータを謳う場合は客観的な根拠が必要であり、それを提示できない誇張表現は違法表示となります。広告文やランディングページの内容は、専門家のチェックを受けるなどして誤解を招かない表現に留めましょう。

表示すべき情報の明確化

景品表示法のみならず金融庁や自主規制機関のガイドラインでも、金融商品の勧誘・広告には注意書きを付すべきとされています。自動売買ツールの広告でも、「投資にはリスクがあり元本損失の可能性があること」「過去の実績は将来の成果を保証しないこと」「○○の結果はバックテストによるシミュレーションであること(実運用ではない)」等の重要な注意事項を分かりやすく表示することが望ましいです。

これらは景品表示法上直接の義務ではありませんが、誠実な広告姿勢として信頼性を高める効果もあります。 あ

消費者契約法(契約の取消権・不当条項の無効)

消費者と事業者との契約全般には消費者契約法が適用されます。自動売買ツールの販売契約・利用規約においても、この法律に反する不当な勧誘行為や契約条項は無効となったり、契約取消しの対象となったりします。

誤認させる勧誘への取消権

事業者がユーザー(消費者)に対して行うセールストークが事実と異なる場合や、将来の利益を断定的に示す場合、ユーザーは後から契約を取り消すことができます。

例えば「このEAを使えば今後1年間で必ず資金が2倍になります!」といった将来の不確実な事項についての断定的判断の提供は、消費者契約法第4条で禁止されており、ユーザーは契約取消、販売代金を返還をすることができます。

実際、「何もしなくても日利2万円稼げる」などと断定的に勧誘されたケースで契約が取り消された判例もあります。したがって、販売ページや営業トークで確実な利益を保証するような発言は厳禁です。仮に契約書に「将来の利益を保証していません」と書いてあっても、口頭や広告で断定的に儲かると告知していれば取消し得られてしまいます。

不当な契約条項の無効

消費者契約法は、消費者の利益を一方的に害する契約条項を無効としています。自動売買ツールの利用規約にも以下のような条項はないかチェックしましょう。

事業者の損害賠償責任を免除・制限する条項

事業者に故意または重過失がある場合の責任まで一切免除する条項は無条件に無効です。
「当社はいかなる損害も賠償しません」は通用しません。また、軽過失による損害についても賠償額を不当に低く定める条項は無効となり得ます(例えば「弊社の賠償責任は利用料1ヶ月分を上限とする。ただし法律に反しない限り」というような曖昧な書き方は無効になり得ます。改正消費者契約法では、免責の範囲を明確に限定しない条項は無効と明示されました

適切な条項例としては「事業者に軽過失がある場合は○○円を上限とする」など、少なくとも重過失の場合は無制限責任を負うことを明示する必要があります

解除・返金に関する不当に不利な条項

例えば「一度購入したらいかなる理由でも返金しない」といった条項も、場合によっては無効です。初期不良や重大なバグがあった場合に一切対応しないというのは信義則にも反しますし、消費者契約法第8条・第10条で不当と判断される恐れがあります。実際には利用規約にある免責規定が全部無効になるケースもあります。

トラブル時の対応は別途検討するとしても、最低限法律上無効とされる条項を入れないことが重要です。

その他の取消事由

消費者契約法は他にも、不利益事実の不告知(デメリットをわざと知らせない)や不退去・監禁状態での契約締結などに取消権を認めています。例えばデメリット(「大きく損失が出る可能性がある」「追加証拠金の必要がある」等)を説明せずにメリットだけ強調した場合や、セミナー会場で帰れない雰囲気を作って契約させた場合などです。
昨今のオンライン勧誘でも、Zoom等で長時間拘束して判断力を鈍らせ契約させる行為は問題視されています。

特定商取引法(取引形態ごとのルールと広告規制)

特定商取引法(特商法)は、訪問販売や通信販売など特定の取引形態におけるルールを定めた法律です。自動売買ツールの販売手法によって、この法律で求められる対応が変わります。違反すると行政処分(業務停止命令等)を受けるおそれがあるため注意しましょう。

通信販売における表示義務

自動売買ツールを自社ウェブサイトやECサイトで販売する場合、「通信販売」に該当します。通信販売業者は特商法第11条に基づき、事業者の氏名(名称)・住所・電話番号、代表者名、商品代金、支払い方法、引渡時期、返品特約などを利用者が見やすいよう明示しなければなりません。

一般にサイトのフッター等に「特定商取引法に基づく表示」として掲載しますが、これを怠ると違反です。また、通信販売にはクーリングオフ(無条件解約)制度はありません。その旨も周知することが望ましいです(「※通信販売にはクーリングオフは適用されません」といった注意書きを表示)。

訪問販売・電話勧誘販売

対面での勧誘やセミナー販売、電話営業などでツールを販売する場合は、特商法上の訪問販売または電話勧誘販売に該当します。これらの場合、事業者は事前に勧誘目的を明らかにし、契約締結時には書面交付が義務付けられます。
また契約後でも一定期間(訪問販売は8日間、電話勧誘は8日間)のクーリングオフを認めなければなりません。セミナーや喫茶店で契約を結ぶような形態は訪問販売扱いとなる可能性が高いため、適切な書面(契約書面・クーリングオフの案内書面)を交付しないと違反になります

特商法違反で消費者から相談が多発すると、消費者庁や都道府県が立入検査し、悪質な場合は取引停止命令等の行政処分が下されます。

オフラインで営業する場合は、特商法の書面交付・クーリングオフ・禁止行為(嘘をついてはいけない、威迫・困惑させてはいけない等)の規定を熟知し遵守することが不可欠です。

知的財産法(著作権・商標権など)への配慮

自動売買ツール自体やそのマーケティングには知的財産権の問題も関わってきます。自社が他人の権利を侵害しないことはもちろん、自社ツールの知的財産を守る施策も重要です。

ツールのプログラムと著作権

開発した自動売買ソフトウェアのコードや画面デザイン、マニュアル類には著作権が発生します。他者のソースコードを流用した場合はライセンス遵守が必要であり、無断流用すれば著作権侵害となります。また他社の分析ツールを改変してEA化して販売するような場合、その元となる手法やコードの権利関係にも注意が必要です。

一方で、アルゴリズムや売買ロジック自体(アイデアそのもの)は著作権では保護されない点にも注意しましょう。例えば公開されているトレード手法を真似て自分でコード化すること自体は著作権侵害ではありません。ただし、他人が著作権を持つ具体的なプログラムコードや文章をコピーして使えば違法です。

自社開発ツールの場合、開発者との契約(社員の職務著作か外部委託か)を確認し、著作権が事業者に帰属するよう適切な契約措置を講じておくことも大切です。

まとめ

FX自動売買ツールの提供ビジネスは、技術的な魅力がある一方で法律的な落とし穴も多岐にわたります。金融商品取引法の登録要否から広告・契約上の注意事項、販売手法ごとの規制、知的財産の管理、そして通信インフラとしての責務に至るまで、本記事で解説したように幅広い法分野に目を配る必要があります。

経営者として重要なのは、これら法規制を単に「守らねばならないルール」と捉えるだけでなく、コンプライアンスを競争力の一部と考えることです。適法に事業を営むことでユーザーや取引先からの信用を得て、結果的にビジネスの安定と成長につながります。逆に違法すれすれの手法で短期的な利益を追うと、行政処分や訴訟リスクで事業継続が危ぶまれます。

 最後に、具体的な状況によって適用法令や対応策は変わり得ますので、本記事の内容は一般的なガイドラインと位置付け、実際の事業展開時には専門家(弁護士や行政書士等)に相談することを強く推奨します。法令遵守とユーザー保護を両立させ、健全で信頼されるサービス運営を目指しましょう。

課金サービスに必要な法律

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