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企業経営者が知っておくべき不正競争防止法を弁護士が解説

IT企業のための法律

不正競争防止法は、企業経営者にとって非常に重要な法律です。この法律は企業が他社に不正な競争を仕掛けられた場合や、逆に自社が意図せず違法行為を行ってしまった場合に、その責任を問われることになるからです。

不正競争防止法の概要、具体的な違反行為、2024年改正のポイントについて解説し、企業経営者が法的リスクを避けるためにどのような対策を講じるべきかを紹介します。

目次

不正競争防止法とは

不正競争防止法は、企業間の公正な競争を保護し、不正な手段によって競争優位に立とうとする行為を防ぐために制定された法律です。

この法律が対象とするのは、例えば他社のブランドを模倣したり、営業秘密を不正に取得したりする行為です。

不正競争行為の具体例

周知表示混同惹起行為

これは広く認識されている、他人の商品等と同一または類似の表示を使い、その他人の商品等との混同を生じさせる行為です。この「広く認識されている」とは、全国的に知られている必要なく、ある地方でのみ、ある業界でのみ知られている場合も含まれます。

著名表示冒用行為

他人の著名なブランドやロゴを自身の商品に使用する行為です。周知表示混同惹起行為との違いは、たとえ消費者に混同が生じなくても違法です。

例えば有名な事件として、任天堂の「マリカー事件」があります。ある会社がマリオカートの衣装を使い、カートで公道を走るというサービスを展開したことに対して、任天堂が不正競争防止法違反で訴えたという事件です。

判決では、任天堂が公式に展開するサービスであるとの混同を一般に生じさせるものではないとしながら、著名表示冒用行為にあたると認定しました。

形態模倣商品の提供行為

他人の商品の形態(デザインや構造)を模倣して商品を提供する行為も違反です。

意匠権を取得していない場合でも、この法律によって保護される可能性があります。例えば、他社が開発した製品をそのままコピーして市場に出す行為がこれに該当します​。

営業秘密の不正使用

営業秘密の不正取得や使用も不正競争行為に含まれます。営業秘密には、顧客リストや製品の設計図、製造ノウハウなどが含まれますが、これらは「秘密管理性」「有用性」「非公知性」が認められた場合に保護されます。

営業秘密の定義

営業秘密は、企業が競争優位を保つために非常に重要な情報であり、以下の3つの要件を満たすものとして定義されています。

①秘密管理性:その情報が秘密であることが客観的に認識できる状態にあること。具体的には、情報が「マル秘」といったラベルで表示され、アクセス制限やセキュリティ措置が施されていることが必要です。例えば、電子データであればパスワード保護、紙媒体であれば施錠された場所に保管されている必要があります。

②有用性:その情報が技術的または営業的に有用であること。この要件は、企業がその情報を業務上有益に活用しているかどうかがポイントです。

➂非公知性:その情報が一般に知られておらず、正当な手段では容易に入手できない状態にあること。つまり、その情報が一般に公開されていないものであり、特定の範囲内でしか知られていないことが要件です。

営業秘密侵害に対する法的措置

不正競争防止法は、営業秘密の侵害に対して強力な保護を提供しています。具体的な法的措置としては以下のものがあります。

  1. 差止請求:営業秘密を侵害している行為を差し止めるための法的措置です。裁判所に対して、侵害行為の中止を求めることができます。
  2. 損害賠償請求:営業秘密の侵害によって被った損害に対して、損害賠償を請求することができます。侵害者が不正に得た利益や、企業が被った損害額を基に賠償額が決定されます。
  3. 刑事罰:営業秘密の侵害は、刑事罰の対象となります。営業秘密の不正取得や使用は、10年以下の懲役または2000万円以下の罰金という厳しい刑罰が課されることがあります。また、法人が関与した場合には、5億円以下の罰金が科される可能性もあります。

企業が取るべき対策

  1. 秘密保持契約(NDA)の徹底:従業員や外部業者との間で秘密保持契約を締結することは、営業秘密を保護するための基本的な手段です。契約には、違反があった場合の罰則や、秘密保持期間の規定を明記する必要があります。
  2. 内部監査とセキュリティ強化:定期的な内部監査を行い、情報セキュリティ体制を見直すことも重要です。特に、電子データの管理に関しては、アクセス権限の厳格な管理、ログイン履歴の監視、データの暗号化などを行うことが求められます。
  3. 従業員教育:営業秘密の重要性を従業員に理解させるため、定期的な研修を実施することも効果的です。従業員が無意識のうちに秘密情報を漏洩してしまうリスクを防ぐため、企業全体での情報管理意識を高めることが必要です。

ドメイン名の不正取得等の行為について

ドメイン名の不正取得は、インターネット上の商標権侵害に関連した不正競争防止法違反の一つです。

ドメイン名は、インターネット上で企業やブランドを識別するための重要な要素であり、その不正取得が行われた場合、企業のビジネスに大きな影響を与えることがあります。

ドメイン名の不正取得とは、他人の商品やサービスを示す名称と同一、または類似するドメイン名を不正な目的で取得し、使用する行為を指します。有名な事件としては、「j-phone.co.jp」事件があります。

この事件では、他社が「j-phone.co.jp」というドメインを不正に取得していたため、正当な所有者が差止め請求を行い、結果としてドメインの使用差し止めと損害賠償が認められました。

企業が取るべき対策

  1. ドメイン名の早期取得:自社ブランドやサービス名に関連するドメイン名は、できるだけ早く取得しておくことが最も効果的な防衛手段です。企業が成長する前に、あらかじめ関連ドメイン名を押さえておくことで、不正取得を防ぐことができます。
  2. 商標登録との連携:ドメイン名の不正取得に対しては、商標権を持っていることが有利な証拠となります。商標と一致するドメイン名を不正に取得された場合、商標権侵害を理由に法的措置を取ることができます。
  3. 定期的なドメイン名監視:競合他社や第三者が自社のブランド名やサービス名に関連するドメイン名を不正に取得していないか、定期的に監視することが重要です。万が一、不正取得が発見された場合は、速やかに法的措置を講じることが求められます。

不正競争防止法が適用されないケースについて

不正競争防止法は、公正な競争を守り、不正な行為を防ぐために制定されていますが、すべての行為がこの法律の規制対象になるわけではありません。

特定の条件を満たさない場合や、例外的に保護が認められないケースも存在します。ここからは、不正競争防止法が適用されない主要なケースについて詳しく解説します。

普通名称・慣用表示の使用

ある商品やサービスが普通名称または慣用表示と認められる場合、その名称を使用しても不正競争防止法の対象とはなりません。具体的には、次のような状況が該当します。

普通名称の使用: 商品やサービスの種類そのものを示す一般的な名称(例:「スマホ」、「観光ホテル」、「正宗(清酒)」)を他の事業者が使用する場合、これは公正な競争の範囲内とされ、法的に問題ありません。こうした名称は業界全体で広く使われており、特定の企業のみが独占的に使用できるわけではないためです。

先使用権による保護:ある企業が他社に先立って特定の名称やデザインを使用していた場合、その企業には先使用権が認められることがあります。先使用権とは、商標や意匠が後から登録された場合でも、その使用を続ける権利があることを意味します。

時間経過による適用外:不正競争防止法では、一定期間が経過した商品やサービスについては、その違反行為が認められない場合があります。

具体的には、日本国内で最初に販売された日から3年が経過した商品については、不正競争防止法違反とはみなされません。このルールは、商品の流通や市場状況の変化に応じて、法律が適用される範囲を制限するために設けられています。

善意取得者の保護:不正競争防止法では、営業秘密が不正に流出した場合、営業秘密侵害を知らなくて取得した者については、違法とされないケースがあります。具体的には、次のような状況が該当します。

不正競争防止法違反の場合について

不正競争防止法違反が認められると、民事および刑事の両面で重大な法的制裁を受ける可能性があります。

民事上の制裁

不正競争防止法違反が認められた場合、被害者側は民事訴訟を通じて、次のような措置を取ることが可能です。

  1. 差止請求:不正競争行為が続行されている場合、裁判所に対してその行為を直ちに停止させるための差止請求を行うことができます。これは、不正競争行為によって企業が受ける被害を防止するための非常に強力な手段です。例えば、営業秘密が流出した場合、その情報の使用や開示を差し止めるためにこの措置が取られます。
  2. 損害賠償請求:不正競争行為によって被った損害に対して、被害企業は損害賠償を請求することができます。損害賠償額は、企業が実際に被った経済的損失や、不正行為によって得られた利益に基づいて決定されます。例えば、営業秘密の流出によって競合他社が利益を上げた場合、その利益分も含めて賠償請求が可能です。
  3. 信用回復措置請求:企業の信用が不正競争行為によって損なわれた場合、信用回復措置を裁判所に求めることができます。これには、謝罪広告の掲載や、誤った情報の訂正が含まれることがあります。これは、特に信用毀損行為(虚偽の事実を告知・流布する行為)によって企業の評判が傷つけられた場合に有効です。

刑事上の制裁

不正競争防止法には、特に悪質な不正競争行為に対して刑事罰が科される場合もあります。刑事制裁は、企業や個人に対する罰金や懲役刑を含む厳しい措置が取られる可能性があります。

  1. 営業秘密侵害に対する罰則
    営業秘密の侵害は特に重い罰則が科されます。具体的には、10年以下の懲役または2000万円以下の罰金が課されることがあります。また、法人が関与した場合には、5億円以下の罰金が科される可能性もあります。営業秘密の流出や不正使用は、企業の競争力を著しく損なうため、厳格な対応が求められています。
  2. その他の不正競争行為に対する罰則
    営業秘密の侵害以外にも、不正な商標使用や著名表示の冒用などに対しても罰則が適用されます。これらの行為には、5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科されることがあります。法人が関与した場合には、3億円以下の罰金が科される可能性もあります。

まとめ

不正競争防止法違反が認められた場合、企業や個人には厳しい民事および刑事制裁が科されることがあります。

営業秘密の侵害や商標の不正使用、著名表示の冒用といった行為は、企業の競争力を損なうだけでなく、法的にも大きなリスクを伴います。

企業は、法的リスクを回避するために、営業秘密の適切な管理や知的財産の保護対策を強化し、従業員への教育を徹底することが重要です。

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