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貸付型クラウドファンディングを合法的に行う方法~クラウドファンディングと法律~【2024年2月】

IT企業のための法律

貸付型クラウドファンディングとは

金銭の貸付けを業として行う事業者が貸付けに充てるための資金を調達するため、ファンドを組成し、そこに資金を入れてもらうタイプのクラウドファンディングを貸付型クラウドファンディングと言います。

ファンドを組成するので、金融商品取引法の第二種金融商品取引業の登録を受ける必要があります。

また、金銭の貸付けを業として行うためには、貸金業の登録を受ける必要があります。

貸付型クラウドファンディングは、投資被害や第二種金融商品取引業者に対する行政処分が多発したことを受けて、最近では、以下のような動きが見られます。

ファンドに出資を行う投資家が貸金業の登録を受けなくてもよいようにするためには、以下があるとされてきました。

  1. 貸付先を特定することができる情報を投資家に開示せず(=匿名化)、かつ
  2. 複数の貸付先に対して貸付けを行う(=複数化)必要

もっとも、投資家保護の観点から、貸付先を特定することができる情報を投資家に開示するべきではないかという指摘もなされていました。

このような中、金融庁が2019年3月18日に公表した「金融庁における法令適用事前確認手続(回答書)」において、借り手が法人である貸付型クラウドファンディングについて、匿名化・複数化以外の一定の方策を講じることによっても、投資家が貸金業の登録を受けなくてもよいものとされました。

そして、貸付先に関する情報を投資家に開示しても、投資家が貸金業の登録を受けなくてもよい場合があることが明確化されました。

また、2017年6月19日に制定され、2018年1月1日から施行されている「事業型ファンドの私募の取扱い等に関する規則」は、事業型ファンドの募集等又は募集等の取扱いを行う場合、事業の実在性等を審査することやファンド組成後も事業の状況等をモニタリングすることを義務づけられました。

また、第二種金融商品取引業者は、投資家からの出資金が事業者の固有財産と分別して管理されている状態が確保されていなければ、ファンドの出資持分の募集等又は募集等を行うことはできません。

また、一定の場合に、投資家から金銭の預託を受けることができるところ、出資金や預託を受けた金銭の分別管理等に関する留意点についてQ&A方式で解説した「ファンドの分別管理・金銭の預託に関するQ&A【新訂】」が2018年7月23日に公表されている。

さらに、上記の匿名化・複数化の緩和を受けて、「貸付型ファンドに関するQ&A」 が2019年5月23日に制定されており、金融庁の回答において言及されている方策の具体的な内容や事業型ファンド規則に則した留意点がQ&A方式で解説されています。

具体的には、以下の方策が列挙されています。

①事業スキーム

商法 535条に規定する匿名組合契約によるものであり、資金の出し手(投資者)は、貸付け業務を執行することができず、貸付け行為に関し、権利及び義務を有していないこと。

②ファンド事業者(貸付実行者)

  • 貸付約款等において、ファンド事業者(貸付実行者)自らが、貸付金額、貸付金利、資金使途等の貸付条件を設定のうえ借り手に提示し、借り手と投資者とが貸付けに関する接触をしない旨や当該接触をさせないことを担保するための措置が明記されていること
  • ファンド事業者(貸付実行者)は、社内規則に、借り手と投資者とが貸付けに関する接触をさせないことを担保するための措置を規定していること

③ファンド販売業者

  • 匿名組合約款等において、投資者は、貸付け業務を執行することができず、貸付け行為に関し、権利及び義務を有していないこと、また、投資者と借り手とが貸付けに関する接触をしない旨や当該接触をさせないことを担保するための措置が明記されていること
  • ファンド販売業者は、投資者に対し、借り手も投資者との貸付けに関する接触が禁じられていることを説明していること