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ビッグデータ…最近のキーワードになっています。物がインターネットにつながるIoTの発展などにより、現実のあらゆる事象からデータを取得し蓄積したビッグデータの活用が可能となっていきます。
ビッグデータを分析することにより、新製品の開発などに結び付く可能性もあり、ビッグデータは大きな価値を持つようになっています。
また、ビッグデータについて、人工知能(AI)技術により、AIが自動的に情報を収集、分析することも行われています。このように色々な情報が収集され、分析された結果、様々な形のデータベースが出来上がります。
このデータベースについては、知的財産権で保護されるのでしょうか?
現在の制度では、「データベース」については、著作権法による保護が考えられています。
昭和 61 年の著作権法改正により、以下の様な場合も著作権法上の保護対象となりました。
当時は、コンピュータが自動的に情報を収集・分析するようにできたわけではなく、人間が蓄積された情報を選択・分類し、体系付けを行うことが前提でした。
そのため、情報の選択や構成の体系化に、人間の創作性に着目して、データベースを著作物として保護する制度が構築されました。
また、データベースについては、不正競争防止法や民法(不法行為責任)によって保護される可能性があります。
例えば、企業の情報が、不正競争防止法上の「営業秘密」として認められるためには、「秘密管理性」「有用性」 「非公知性」の三要件を満たす必要があります。
参考記事:営業秘密が漏えいしたら、どうなるの?IT法務弁護士とインターネット企業経営者との会話から
データベースについても、「営業秘密」に認定されれば、不正競争防止法の保護が適用される可能性があります。
また、既存のデータベースについて、そのままパクるなどのデットコピーを作成する行為については、不法行為に該当し、損害賠償を請求できる可能性があるのです。
AIなどにより、自動集積されるデータベースに対し、現行の著作権法の保護が適用されるのでしょうか?
作成されたデータベースの構成について、創作性が認められるのであれば、著作権法で保護される可能性があります。
一方、様々な分析に用いることなどを目的として普遍的な構造・形式等を採用している場合などには、創作性が認められず、著作権法による保護の対象とならないと考えられます。
また、そもそも、AIが自動生成した創作物について、著作権法の保護があるのかという議論があり、現行法上は、著作権法の範囲外とされています。
参考記事:AI(人工知能)が芸術家に?!でもAIの著作物は著作権法上の保護はどうなるの?
このような著作権法、保護されないデータベースであっても、企業内の限られたスタッフやライセンスを受けた者に限定してアクセスを認めるなどの秘密管理性を満たし、かつ、事業者の事業活動にとって有用性があり、 非公開のデータベースであれば、営業秘密に該当するものとして、不正競争防止法による保護の対象になります。
これからのビッグデータ時代において、データベースは価値があるものになります。
このような価値あるものに、どのような法的保護を与えていくのか…議論をする必要があります。