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企業における著作権の注意点を完全解説【著作権侵害になる場合、引用、著作権譲渡契約】

著作権に関する法律

著作権の基本

著作権とは、著作物に対する権利を保護する法律です。著作物とは、思想や感情を創作的に表現したもので、文学、学術、美術、音楽などの範囲に属するものを指します。

ブログの文章や写真、漫画、アニメ、プログラムなども著作物に該当します。

著作権は、著作物が創作された瞬間に自動的に発生し、登録は必要ありません。この点で特許権とは異なり、創作の時点で保護が開始されるのが特徴です。

著作権侵害とは?

著作権侵害とは、著作権者の許可を得ずに著作物を無断で利用することを指します。

例えば、他人のブログ記事をコピーして自分のブログに掲載することは著作権侵害となります。著作権侵害が発覚すると、以下のような法律的な対応が求められます。

民事上の請求

  1. 差止請求: 侵害行為の停止を求めること。
  2. 損害賠償請求: 著作権侵害による損害の賠償を求めること。
  3. 不当利得返還請求: 侵害者が得た利益の返還を求めること。
  4. 名誉回復措置の請求: 名誉回復を求めること。

刑事罰

  • 著作権、出版権、著作隣接権の侵害: 10年以下の懲役または1000万円以下の罰金。
  • 著作者人格権、実演家人格権の侵害: 5年以下の懲役または500万円以下の罰金。
  • 法人が侵害した場合: 3億円以下の罰金。

著作権侵害となる場合は

著作権が発生するためには、何らかのオリジナリティが必要です。

単なる事実やアイデアは著作権で保護されません。例えば、ビジネスモデルやアイデア自体は著作権の対象ではなく、具体的な表現として形になった場合にのみ保護されます。

著作権侵害が成立するためには、いくつかの要件が必要です。主に「依拠性」と「類似性」の2つの要素が著作権侵害を判断する際の重要なポイントとなります。

依拠性(いきょせい)

依拠性とは、新しい著作物が既存の著作物を基にして作られていることを指します。

つまり、新たに作成されたコンテンツが、他人の著作物を参考にしているかどうかが問われます。著作権侵害が成立するには、まず既存の著作物に依拠していることが必要です。

例えば、ある写真を基にして新しいイラストを描いた場合、そのイラストが写真に依拠していると見なされる可能性があります。

依拠性の判断は、一般的に「既存の著作物にアクセスできたかどうか」と「実際にその著作物を参考にして創作したかどうか」という2つの観点から行われます。

類似性

類似性とは、新しい著作物が既存の著作物とどれほど似ているかを判断する基準です。具体的には、以下の2つの観点から類似性が評価されます。

表現形式上の本質的特徴部分

既存の著作物の中で重要な部分、いわば「作品のエッセンス」が新しい著作物にも含まれているかどうかを確認することを意味します。

例えば、あるキャラクターのデザインや音楽のメロディーラインなどがその作品の本質的な特徴部分にあたることがあります。これらの特徴が新しい著作物にも取り込まれている場合、著作権侵害と見なされる可能性が高くなります。

直接感得できる程度の類似

新しい著作物が既存の著作物にどれだけ似ているかを判断する際には、「直接感得できる程度に類似しているか」が重要です。

つまり、新しい作品を見たり聞いたりした際に、一般の人々が「似ている」と感じる程度に類似しているかどうかが基準となります。

これは、単なる偶然の一致ではなく、意図的な模倣が疑われる場合に問題となります。

著作権侵害の具体例

依拠性と類似性の両方が認められるケース: 例えば、ある人気漫画のキャラクターをほぼそのままのデザインで別の漫画に登場させた場合、この新しい漫画が元の漫画に依拠しており、さらにキャラクターのデザインが非常に類似しているため、著作権侵害と判断される可能性が高いです。

依拠性はあるが、類似性が認められないケース: 例えば、ある小説のアイデアを基にして新しいストーリーを創作した場合でも、その新しい小説が元の小説とは全く異なる表現で書かれている場合、依拠性は認められても、類似性がないため、著作権侵害には該当しません。

著作権侵害の判断はケースバイケースで行われるため、専門的な法律の助言を求めることが重要です。著作権を尊重し、他人の作品を無断で使用しないことが、法的なトラブルを避けるための最善の方法です。

著作権侵害の例外「引用」の要件

引用」に関する要件について詳しく説明します。著作権法では、著作物を他者の許可なく使用できる例外的なケースとして「引用」があります。しかし、この引用が成立するためには、いくつかの厳格な要件を満たさなければなりません。

明瞭区分性

明瞭区分性とは、引用部分と自分のコンテンツを明確に区別する必要があるという要件です。

具体的には、引用した他人の著作物と自分の創作部分を視覚的または形式的に明確に分けることが求められます。

例えば、引用文をカギ括弧で囲む、引用部分を特定のフォントで表示する、引用した内容に脚注や出典を明記するなどの方法があります。

この要件は、引用があくまで他人の著作物であることを明確にし、引用する側の著作権侵害を防ぐためのものです。引用部分が自分のコンテンツと混同されることなく区別されていれば、引用として認められやすくなります。

主従関係

主従関係とは、引用をする場合、自分のコンテンツが主で引用部分が従であることが求められます。

この主従関係は、質的にも量的にも引用部分が従の関係にあることが重要です。

例えば、自分の論文や記事が全体の7割以上を占め、引用部分が残りの3割以下であることが望ましいとされています。これは、引用があくまで自分の主張を補強するための手段であり、引用部分が自分のコンテンツを凌駕しないことを示すためです。

必要性

引用の必要性も重要な要件の一つです。引用は、引用する側の主張や議論を補強するために不可欠である場合にのみ認められます。

単に他人の著作物を無断で使用するための手段として引用を利用することは認められません。引用する理由が明確であり、その理由が合理的であることが求められます。

例えば、学術論文や評論で特定の文献や作品を引用する場合、その引用が自分の主張を補強するために必要不可欠であることを示さなければなりません。

公正性

公正性の要件とは、引用が公平かつ正当な目的で行われることを指します。

引用の目的が商業的な利益を得るためであったり、他人の著作物を過剰に使用することでその価値を低下させるような場合は、公正性が欠けていると判断されます。

また、引用が特定の著作物の批評や研究、ニュース報道などの正当な目的に基づいて行われる場合には、公正性の要件を満たしやすくなります。

逆に、他人の著作物を引用して、著作物の価値を毀損したり、誤った印象を与えるような引用は、公正性の要件を満たしていないと見なされる可能性があります。

引用の影響

引用が原著作物の著作権者に与える影響も考慮されます。

引用が著作権者の権利や利益を不当に侵害するものであれば、引用として認められない可能性があります。

例えば、引用が原著作物の市場価値を低下させたり、著作権者の意図に反する使われ方をされている場合は、著作権侵害と見なされることがあります。

他人の著作物を尊重することが重要

以上の要件を満たしていない引用は、著作権侵害と判断される可能性が高いです。引用を行う際には、これらの要件を十分に理解し、適切に対応することが重要です。

著作権法に基づいた正しい引用の方法を理解し、他人の著作物を尊重することが、トラブルを避けるための最善の方法です。

著作権譲渡契約のポイント

著作権譲渡契約は、著作物の著作権を他者に譲渡する際に重要な役割を果たす契約です。

この契約は、著作権者と譲受人との間で、著作権の権利や責任を明確にするために必要です。ここからは、著作権譲渡契約の主要なポイントについて詳しく説明します。

著作権の範囲と対象

著作権譲渡契約では、譲渡される著作権の範囲と対象を具体的に明示することが重要です。

著作権は複数の権利(複製権、頒布権、展示権、公衆送信権など)に分かれていますので、どの権利が譲渡の対象となるのかを契約書に明確に記載する必要があります。

著作権法第27条および第28条に基づく「翻訳権、翻案権」などの二次的著作物に関する権利も含めるかどうかも重要なポイントです。

著作者人格権の取り扱い

著作者人格権は、著作物の名誉や信頼を保護するための権利であり、譲渡や放棄ができない権利です。そのため譲渡契約には「著作者人格権を行使しない」という条項を設けることが一般的です。

この条項は、譲受人が著作物を自由に改変したり、利用したりする際に、著作者人格権の主張を受けないようにするためのものです。

例えば、企業がフリーランスに依頼して作成させたコンテンツの場合、この条項がないと、フリーランスが改変に異議を唱える可能性があり、それを企業は従う必要があります。

譲渡の条件とタイミング

著作権譲渡契約では、譲渡の条件とタイミングも明確にする必要があります。

例えば「譲渡代金が全額支払われた時点で著作権が譲渡される」や「著作物の納品完了後に譲渡が行われる」といった条件を設定します。これにより、譲渡が発生する具体的なタイミングが明確になり、双方の権利と義務が明確化されます。

譲渡の条件に関して、分割払いの場合には、その支払いの状況に応じて著作権が部分的に移転するような契約内容にすることも可能です。

従来権利の保持

契約には、譲渡される著作物に関して、譲渡者が従来から有している権利を保持する旨を明記することが重要です。

例えば、譲渡者が既に他の第三者に著作権の一部を譲渡している場合や、譲渡者自身が特定の用途で著作物を利用する権利を保持したい場合、これらの権利が新しい譲受人に譲渡されないことを契約書で明確にしておく必要があります。

これにより、譲渡者の既存の権利が保護され、新たに作成された著作物が全て相手側に移転することを防ぎます。

契約の期間と終了条件

著作権譲渡契約の期間も重要なポイントです。契約が無期限で有効であるのか、一定の期間に限定されるのかを明確にする必要があります。

契約が終了する条件も設定することが望ましいです。

例えば「特定のプロジェクトが完了した時点で契約が終了する」や「一定の期間内に追加の作品が作成されない場合は契約が終了する」といった条件を設定することで、双方の合意のもとで契約が終了するタイミングを明確にできます。

まとめ

著作権は企業の権利を保護する重要な法律であり、正しく理解することが必要です。著作物の無断使用は著作権侵害につながるため、著作権侵害にならないようにする、引用の要件を守るなどの対策が必要です。

また、著作権譲渡契約では、契約内容を確認し、適切に対応することが重要です。これらを守ることで、著作権に関するトラブルを防ぎ、クリエイティブな活動を安全に行えますので、しっかり理解しましょう。

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